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北アルプス・朝日岳〜雪倉岳〜白馬岳
2017/ 7/16〜19


[第2日目の行程]
2017/ 7/17(月
蓮華温泉05:00〜五輪尾根〜千代の吹き上げ〜朝日岳〜14:22朝日小屋


五輪ノの森〜千代の吹上の間の水場をさらに進んだところからの朝日岳


テントを担ぎ、さらに縦走初日にたもた歩くと朝日小屋までは10時間もかかる五輪尾根。ならば蓮華温泉のテント場を早立ちしようと思ったが、出発は午前5時になってしまった。昨晩はテントの中に水が溜まるほどの降雨があったにもかかわらず、比較的よく寝ることができた。周囲が樹林で囲まれているテント場は風をある程度避けることができるので、テントを叩く雨音以外の音が少なかったのかもしれない。。


兵馬ノ平

テント場からの登山道はすぐ下り道になってアヤメ平、兵馬ノ平という木道が敷設された湿原に入る。湿原の中の木道をそのまま進むと直進と右折の木道に出合い、分岐に朝日岳方向を示す標識がある。朝日岳方向の木道を進むと斜度のある下りになって木道がなくなり、瀬戸川に架かる鉄製の立派な橋に出る。


ショウキラン アヤメ平への下りの登山道で 

瀬戸川の橋に出る前の登山道脇は刈り払いが丁寧になされているが、ショウキランやコケイランサイハイランなどは刈られることなく残されている。瀬戸川を渡りひょうたん池を越え白高知沢までの道は長い上に細かなアップダウンが多く眺望もない。加えて湿度はきっちり100%なのでただただ忍従あるのみである。


白高知沢に掛けられた橋

そんな道を黙々歩きストンと登山道を下りると白高知沢である。以前はもう少し上流に丸太を渡した橋を渡るか、橋が掛けられる前は渡渉が必要だったが、今はあまりにも立派な鉄製の橋が掛けられている。橋を渡って初めての休憩を取る。鉄橋の架設とともに登山道も付け替えられているが、今は通行が禁止されている旧登山道に出合いつつ急登のカモシカ坂を上がっていく。
途中、山からの水の流れで喉を潤す。一番最初にこの尾根を使ったときはこの場所で空腹を覚えて棒ラーメンを作って食べた覚えがある。

花園三角点先の水場(画像左手、木道の先)

カモシカ坂をある程度登ると樹林帯を抜けて眺望が利き、道もサワランやトキソウが咲くゆるい傾斜の湿原の中を通ることになる。花園三角点で小腹を満たしてから先に進む。この先にベンチと水場があるはずなので、すれ違った単独の女性に水場の様子を聞こうと尋ねると、水場はまだまだ先という。ベンチで休んでいた3人も水場は知らなかった。このベンチのある休憩場所のすぐそばに水場はあるのだが、ここには標識がないからわからないのも仕方がない。自身、1回目の登山の際は水場があることを知らず、ベンチ脇を流れる雪渓からの水を汲んで飲んだのだった。


水場のハクサンコザクラ

蓮華温泉から朝日岳を登る大きな理由は高山植物の多さにあるが、今年は雪が多く残っていて群落と言えるような規模のものを見ることは出来なかったが、サクラソウ科の花ではハクサンコザクラ、オオサクラソウ、ユキワリコザクラが見られた。シロウマアサツキやタカネバラ、千代の吹上手前の雪渓周縁に咲くチングルマは圧巻だが、今年見られたのはほんの飾り程度で残念!


水場のユキワリコザクラ

五輪ノ森を通り雪倉岳の姿が見える樹林帯でザックを降ろして再び発とうとするとするとき、前方すぐ近くの見通しの利かない道を大男がどっしっどっしと歩くような音が急に聞こえた。その音はすぐ聞こえなくなったが、いくら歩いても、展望が利くようになっても前方に人の姿はない。たぶん熊さんだったのだろう。


赤男山・雪倉岳方向

熊さん?の雰囲気を嗅いで先に進むと雪渓が次々と現れる。最初にこの尾根を歩いたときは下山してくる人から「アイゼンは持っているの?」と聞かれ、無いことを伝えるとその人が「この先は危ないから。」とアイゼンを下さったのだった。なんと言ってよいやら・・・。山では心のメーターが善意の方に有意に働く人が多いとはいえ、ありがたいことだった。ところで今回は10本歯のアイゼンを持ってきたが、そこまでのスペックが必要だったかという状況だった。ただそれは結果論であり、栂海新道を親不知から登ってきてアイゼンなしでは登ることに危険を感じた雪渓もあったという記憶が蘇る。その時は先行する若者にステップを切ってもらってようやく安心して登ることができたという苦い思いをした。


シラネアオイ

千代ノ吹が次の目的地というところに昭文社の山地図を見ると「水」場のマークがある。その水場は流れに数秒と手を置いておけないような冷たいが出ている。菜園で作ったトマトを冷やして食す。水場の先は急斜面の雪渓であり、アイゼンを付ける。その間に男女4人のパーティがノーアイゼンで通り過ぎ雪渓を登って行く。


千代ノ吹上手前から往路を振り返る  後方に五輪山

この4人とはこれまでも抜きつ抜かれつであったが、最後の長い雪渓を横切るときには後方に少し距離を置き、千代ノ吹上で休んでいるときに上がってきた。足許を見るとアイゼンを装着していた。


千代ノ吹上で

千代ノ吹上は風通しが良く、汗ばんだ体を冷やすのにちょうどよい場所であった。今年は雪が多いから初々しいウルップソウやヤマルリソウが見られるだろうと思って楽しみにしていたが、あにはからんやどれも花期はとうに過ぎ去っていていた。かろうじてミヤマアズマギクが深紅の花を咲かせていたのが慰めだった。


朝日小屋への途中で キヌガサソウ

千代ノ吹上では30分以上も休んでしまった。朝日岳頂上までは風が強くなって花々を眺めている場合ではなく、30数分で登り詰めほどなく到着した4人パーティの人や単独の男性などと話しをしているうちに20分も滞在することとなった。
この山頂で気になったことは、蓮華温泉〜白馬岳〜朝日岳〜蓮華温泉を1日で回るというトレラン男性のことである。13:30ごろだったがあとは蓮華温泉に降りるだけと言う。それほどのスピードで登山道を丁寧に拾いながら走れるのだろうか。よく下りのザレ場を直行して大きな足跡を残している輩がいるが、君もそのうちの一人ではないのか。
翌日の雪倉岳の下り斜面は無残にもコマクサが咲くザレ場に入り込んで下りてきた足跡が複数あった。ザレ場に足を入れるとその跡に降った雨が溜まり飽和状態になると一気に流れ出してコマクサの植生を傷めるという注意書きがあったのは北アルプスのどこかの山のことだった。もちろん一般登山者がコマクサ畑に足を踏み入れて写真を撮っただろう足跡も多くある。困ったものだ。

いつ来てもおぞましい朝日小屋

登山道が新潟県から富山県に入るとその整備具合が明らかに違ってくる。新潟県側は蓮華温泉からカモシカ沢の樹林帯までの間は丁寧に刈り払いが行われ、整備が行き届いている。朝日岳から朝日小屋の間は登山道は荒れ放題で手が付けられていない。それでも雪渓にはベンガラが撒かれていている。


次の機会があればキャンプ指定地を離れビバークか

朝日小屋でテント泊の受付を済ませ、テントを張る。いつもは小屋の西側、晴れていれば富山湾が見えるところで携帯を使おうとするが電波の状態が良くない。天気予報を調べたり下界との連絡に欠かせない携帯(スマホ)の電波を拾うことができるかどうかは、関心事である。朝日小屋はホームページや小屋周りにそのような情報を「見える化」していない(日記のどこかにはWi-Fi化とあり、従業員募集のサイトには「携帯電話通話可能」と書いてある。)。
小屋に到着した時には青空が見えていたが、テント設営のころにはガスがかかってきて先行きが暗いことを暗示している。五輪尾根ですれ違った山岳ガイドさんは「明日はいい天気ですね。」と言っていたが、果たしてそのようになるのだろうか。


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