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百花繚乱 ツクモグサ咲く秀峰 芦別岳
2004/7/12〜13


初めて逢いました 北稜に咲くツクモグサ

 山好会からY'maさんを迎えての「やま旅 はな旅」は,今回,日本でも本州では白馬岳・雪倉岳・八ヶ岳そして北海道ではピパイロ岳・ニペソツ山・ニセイカウシュッペ山とここ芦別岳にしか植生が見られないというツクモグサを目当てに,ハードな登りとして定評のある芦別岳旧道コースから頂上を目指し,日帰りで新道コースを下ることとした。


山部自然公園太陽の里キャンプ場

 6月11日午後7時、新千歳空港でY'maさんを出迎え、道央道を通って夕張から日高を経由し、午後10時宿泊地の山部の太陽の里キャンプ場に着き、綺麗な芝生にテントを張る。


ユーフレ川

 6月12日午前6時、名だたる難コースに挑む期待から、よく眠れなかったというY'maさんではあるが、足取りも軽く登山口のある林道終点に向かう。道はすぐ山道となり、ユウフレ川沿いに高巻き、あるいはへつりを繰り返しながらユウフレ小屋分岐に向かう。沢は雪解け水が勢いよくほとばしり、登山道は崖の崩壊で消えていたり、雪渓の下であったり、あるいは登山道そのもの自体が沢筋だったりで、結構なスリルがある。

 ユウフレ小屋分岐を過ぎると、高山植物が急に多くなる。エゾノリュウキンカは標高600mから同1200mの稜線尾根近くまで延々と沢を埋め尽くしている。シラネアオイは夫婦沢からキレット手前までの長い道のりの間、今が盛りと咲き誇っていて、このほかに見られた花の種類は20種近くに及ぶ。芦別岳はまさに花の山である。


北尾根稜線まで続く花回廊

 この日、旧道コースから登った人は見かけず、すれ違ったのは新道コースから来た女性一人であった。「キレット手前でツクモグサを1株見ました。」というので、いよいよ本命の花を見ることができると、勇んで北尾根を下る。

 靴紐が緩んでしまった。岩場に足をかけて紐を締めなおしていると、Y'maさんが「この花は何の花?」と何気なく聞くので、指差したところを見上げる。思わず「あったぁ〜。」と叫んでしまった。そこには憧れのツクモグサが、やさしいクリーム色の花を咲かせていたのであった。

 すれ違った女性は、ツクモグサは一株しかなかったと言うけれど、登山道の脇の岩場、ハイマツの脇、ちょっと目線を変えればあそこの岩場、こちらの岩場・・・、と至るところに無尽蔵に咲いている。本峰からキレットへと続く緊張が必要なやせ尾根を越えて来た「眼」には入らなかったのだと思う。


鮮烈な流れにエゾノリュウキンカ

 とある本で、ツクモグサを見るために白馬岳に4回登りやっと見ることができたという人の文章を読んだ。その人は「あった、あった。私は声を出した。ついに逢えた。ツクモグサは『今朝咲いたんです。美しい私を見てください。』とでもいうかのように、気品に満ちた黄色い小さな花を何輪も咲かせていた。」と書いていた。しかし、ここにはツクモグサがいっぱいあって、かつ、このルートは歩く人も少なく花の鑑賞にはもってこいだ。


ハイマツの周囲に寄り添うように咲くツクモグサ

 キレットを越えると一面笹に覆われた台地にいったん出て、その先は岩場を登ることになる。空が暗くなって強風が吹き付け、それに雨も落ちてくる。気温は急激に下がってくるし、時刻はすでに午後3時を大きく回っている。頂上に登らずこのまま下山することを考えるが、Y'maさんが是非頂上に立ちたいというので、その岩場を登り詰めると、なんとすぐそこが頂上であった。


ミヤマキンバイ

 風雨はそれほどでもなくなったので、頂上でしばし展望を楽しんだ後、新道コースを下る。新道コースは旧道コースと違ってしっかり踏みしめられ、歩きやすい登山道となっている。しかし、登山道脇は熊笹が茂っていて、花を見ることはほとんどなく、唯一ムラサキヤシオの真紅が印象に残る程度であった。


新道コースのムラサキヤシオツツジ

 ヘッドランプを点けて新道コースの登山口に下りた時にはすでに午後7時を回っていた。13時間の長い山行ではあったが、変化に富んだ登山道、登山道を埋める高山植物の豊富さ、そしてツクモグサの大群落と、贅沢な一日を過ごすことができた。


頂上


頂上から北尾根稜線


[やま旅の付録]

 
日高の牧場


途中の森で咲いていたトケンラン


ここの森には驚くほど(数え切れない)のサイハイランがあった


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