[HOME]


山梨県山岳レインジャーのアツモリソウ自生地調査とは
(2015/ 4/ 6)


振り向いたら・・・ホテイアツモリソウ

 このホームページのタイトルが「やま旅」「はな旅」であるとおり、年間を通じてできるだけ好きな花が咲く山を登るようにしている。そしてその花にもある程度のこだわりを持っている。それは北海道日高山系ピパイロ岳を始めとしたツクモグサであり、橄欖岩の岩場に咲くカムイコザクラであり、日高の主稜線の岩稜帯に咲くカムイビランジである。ツクモグサは北海道でも数か所の山で咲き、カムイコザクラもポピュラーな花である(ただし、ヒグマとは必ず遭遇する確率は高い)。カムイビランジの植生の場は多くはなく、登りと下りで各1日は沢で稜線に上がってからは酷い藪を漕いで2日、かつ、ヒグマとは毎回必ず遭遇している稜線に咲く花なので、大ドッケのフクジュソウのように物見遊山で誰もがおいそれと行けれるところではない。水は6リットル以上+幕営装備でザックは軽く25kgを超える。


保護の結果ホテイアツモリソウの植生が回復した山

 れらの花に比べ、アツモリソウ、ホテイアツモリソウは今奥多摩を歩いている人の足許にも昔はいっぱい咲いていたいわばありふれた花であったところ、山野草ブームで乱獲されあるいは鹿に食され、今や絶滅が危惧されるというより絶滅まであと何百株しか残っていないというような特別な高山植物である。そのアツモリソウも自生のものが残っていないのかと言うとそうでもなく、保護の手が施されていない山地にひっそりと残っている。官民挙げて保護の手を尽くしているレブンアツモリソウや崕山のホテイアツモリソウのように植生が回復している事例もあるが、それ以外の場所では口では保護と言いながら何らの有効的手段を講じていないのがほとんどである。

 そんなアツモリソウにお目にかかれるとは思わず、人のいない山を歩いているときに図らずも咲いたばかりのアツモリソウが目に入ったときは、本当に地にひれ伏したような心持でアツモリソウに出逢えたことを感謝したものだった。それ以降、毎年北海道から本州の山をあちこち登り歩いていて、毎回いくばくかの成果があって自生のアツモリソウにお目にかかれる光栄に浴している。そのアツモリソウについては、ホームページにアップしているが、画像背景や記述から場所が特定されることのないよう意を用いている。一方でアツモリソウの咲く場所については、神田の山関係の古本屋での図書探しやネット情報のチェックを怠らないこととしている。

 

 さて2015年のアツモリソウ探しはどの山にしようと思案しているとき、山梨県の「山岳レインジャー」の腕章を巻いた人の画像を載せたブログ記事があった。それには
「昨年から(だと思うが)新たな山域が加わり、今回は某所の草地の中に咲く稀少植物調
査の依頼があった。過去に何度かその山に行ったことはあるのだが、花が咲いているの
は一度も目撃したことが無い。ロープが張られて保護されているその草地に踏み込むの
はマナー違反なので、双眼鏡と一眼レフカメラに望遠レンズを装着して探すのだが、全く
見つかる気配が無かった。しかし、今回は山岳レインジャー活動の一環であるので、腕章
をつけて特別にその草地への立ち入りが期間限定で許可されている。登山客がいる可能
性が高い休日を避けて、平日調査に入ることとなった。」

と書いている。
 それはそれでいいだろう。ただし、その調査の場所が誰でも特定できなければの前提であり、そこにアツモリソウがあるという画像を載せなけれなと言う話ならばだ。ところが、誰もが見たいアツモリソウの画像を複数アップし肝心のその他の「希少植物」の画像が一枚も載せていないところ見ると、山岳レインジャーの腕章という手形を利用した単なるアツモリソウ探しと見ざるを得ない。山梨県は、山梨県希少野生動植物種の保護に関する条例を施行し、ホテイアツモリソウを「希少野生植物種」に指定し、立入制限地区の区域内への立ち入りを禁止しこれに違反したと者には六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する旨定めている。一般人が自由にアツモリソウを見られない環境にありながら、そして山梨県がその保護のために条例まで制定しているということということ以上に、ネット上のアツモリソウの情報は常に盗掘をする者に監視・閲覧されていることについてのいささかの問題意識もなくその保護の業務の一端を担いながらネットの情報を漏出させるということは迂闊だと言う誹りを免れ得ない。

 そのことについて問うと・・・。

 
名前を消したあの山のアツモリソウは現地でご覧になったでしょうか?おそらくは葉を発見するのも困難だったはず。花を付けたのは私が初めて訪れた1度だけ、その後は衰弱して行く一方です。山岳連盟にも報告し、見に行ってくれたそうですが葉すら確認できなかったと聞きました。おそらくは何も人の手を加えなければ絶えて行く運命かと思います。場所を隠すことは必要ですが、それだけでは花は守れないと考えています。

 山岳レインジャー活動は花の観賞会ではありません。山梨県からの依頼で山岳連盟有志が行っているボランティア活動です。私が非難されるのは一向にかまいませんが、一生懸命に植物保護のためにに時間を割いて活動されているメンバーの皆様、中心となっている自然保護グループの方々に失礼です。私がレインジャー活動に参加しないことは、私自身の活動には何の影響もありません。しかし、あの葉っぱを見ただけでアツモリソウの葉と自信を持って言えるメンバーがどれだけいるかということです。

とのこと。


 なるほど。しかし、山梨県は自生地のアツモリソウの保護に関し、立ち入り禁止区域の設定と鹿除けネットの設置以外の特段の措置はこれまで行っていない。ところで、このアツモリソウの自生地がどこかということが容易に判断できるブログ記事は、今は削除されている。(ただし、スナップは残っていて掲出した画像等もスナップから用いた。)

 日本高山植物協会の会長で写真家である白旗史郎氏は会報第76号で示唆に富んだ言葉を残している。
   「平成元年、当時の知事であった望月幸明氏との食事会に於いて、初めて高山植物の踏み荒らし
   と乱獲に話が及び、このままでは、この貴重な高山植物は疾うから図絶滅の憂き目を見るだろうと
   の結論が出た。その
時、望月知事は即時、県条例制定担当課長をその席に呼び、緊急に「高山
   植物保護条例」を起草・制定することを命じられ、同時に「日本高山植物保護協会」の設立を決め
   られた。これは日本が世界に先き駆けての自然愛護精神の宣言であった。

   これを契機として日本各地に多くの保護団体が作られ、活撥な活動が開始された。このまま行けば、
   文字通り順風満帆、大成果が期待された。しかるに熱し易く冷めやすい日本人の性格は年毎にそ
   の熱を失って運動は下火に向かった。
あまつさえ、保護を大声にうたいながら、その美名にかくれ
   て、貴重な高山植物・稀品種植物を不当に採集する不心得者があとを絶たない
そして、いつしか
   保護を忘れて、以前の如く興味すら抱かない人たちが増えてきているのが実情である。」


[HOME]