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この広い野山にたった1株 ホテイアツモリソウ
 6月30日 



ホテイアツモリソウ (2012/6/30)


前回、未踏の場で2株のアツモリソウ開花株、それに8株の未開花株の計10株を見つけたのは、
白馬岳テント泊を天候の関係から途中で中止し、大胆に転進した結果でした。
さて、アツモリソウはともかく、そろそろ毎年恒例の北岳南東斜面のお花見だ!
今回は、あの花この花をどのコースで見ようとかと思いを巡らせながら、
北岳山荘でのテント泊の準備を済ませました。



ギンリョウソウ

ところが、Weather-GPV の 5kmメッシュ詳細予報では、北岳を中心に夜間の雨が予想されています。
登山口から北岳頂上までの標高差1663mを登り、テント場まで約300m下り、
その後「雨」というのは厳し過ぎます。ということで、今回も直前に計画を変更します。


ササバギンラン

そこで急きょ選んだこの山域ですが、その存在についてのふわ〜っとした「アツモリソウ情報」は、
鹿に食べられたのか、はたまた犯罪者に盗掘され持っていかれたからでしょうか。
(その両方でしょう。盗掘人はこの種の情報をよくネットで見ているようです。)

もうアツモリソウがないのならないでいいのですが、そのことを自分の目で確かめなければ納得がいきません。
というわけで、そのふわ〜っとした情報を頼りにいざ転進!



サンカヨウ

アツモリソの植生の標高まで到達するには、当たり前ですがある程度の時間歩かなければなりません。
まず5時間歩いてそれなりの植生の場所に着きます。
そこからは、草叢の中にピンクの花はないか、あの優しい淡い色をした葉はないかと、
丹念に丹念に、それは丹念に見ながら進んでいきます。



ハクサンチドリ

もう核心部に入ったはずです。探すこと2時間、あっと思ったのはスイバだったりハクサンチドリだったりです。
肝心のアツモリソウの植生の可能性のあるところは少なく、しまいにはイネ科植物だけが広範囲に広がってしまっているのでもう望み薄です。これ以上先に進んでも成果は見込めないので踵を返します。
徒労感が全身を襲います。汗もたっぷりとかきました。小休止し風に吹かれて体を冷やします。


キヌガサソウ

ザックを下ろし5分ほどの休憩が終わりました。
あの山を越え、さらに次の山を越え、あのピーク、あのコブを登り返して・・・、
考えるだけでも辛い帰路です。でも、この次、この場所にいつ立てるか分かりません。
ここにアツモリソウはないんだと簡単に結論付けてしまうと、たぶんもう再び来ないでしょう。
後悔しないように、帰り道も丹念に草叢の葉を確認しながら歩きます。


イワカガミとマイズルソウ

行くときには見えなかった光景が帰路には目に入ります。遠目にアツモリソウが数株・・・、
はやる心を抑えて行って見ると、それはスイバとイワカガミがかたまって咲いているだけのことでした。
こんなことを繰り返すと徒労感はさらに増しますが、
「ここにアツモリソウはないんだ。」
と思い知らされる辛い確認作業は丁寧に続けて行きます。



アツモリソウが咲く草叢

もうこれ以上下りていくと、植生はすっかりアツモリソウのそれとは違ったところになります。
この場所は往路、背丈が高く遠くからでもよく目立つハクサンチドリが草叢の中に1株あったところです。
そのハクサンチドリを確認して目を反対側にやると、
「ホテイアツモリソウ」が背を向けるように佇んでいたのでした。


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