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背を向けて佇むホテイアツモリソウ
 6月30日 



ホテイアツモリソウ (2012/6/30)



こんなところはだめですか?

行きにあれほど目を凝らしたはずでしたが、人間のやることには抜けがあります。
もうないと判断したのだから、本当はとっとと歩いて帰路をたどってもよかったのです。
しかし、疲れがたまった体ではそのような気力も湧きません。
そして、もう2度とこの山に来ることはないんだと思うと、
見ることがなかったアツモリソウに対する礼儀としても、
もっとしっかりと草叢を確認しながら歩かなければなりません。


ちょうど咲いたばかり

山を下りるのに、ここから5時間は必要です。
先を思うと気分はブルーです。昨日は1時間しか眠らず、その後、9時間の山中彷徨。
昨晩は薄着でビールを飲んでいるうちに、運転席でそのまま沈殿し寒さに震えて目覚めたのでした。
そんなわけで、鉛のようになった体を引きずって歩きます。
ただ、目だけは引き続き緊張感を保って周囲を見回します。


いやはや、ため息ばかり

この場所を過ぎるといったん植生がまったく変わってしまいます。
ここになければ残る場所は可能性の低い1か所になります。
植生の雰囲気、草叢の感じはいいところなのですが、往路はハクサンチドリが最初に目に入ってしまって、
結果的にそこに神経が少し行き過ぎていたのでした。
ふと、歩いている場所から少し奥に目をやると・・・・・・・。



花弁が重たそう

驚きと言うより、あっけにとられたというのが、このホテイアツモリソウを見つけたときに正直な感想です。
アツモリソウがあった!!!
ホテイアツモリソウはすげない様子で背中を見せています。



崕山のものに似ていませんか

このような花を見つけた時の原則は、直線的に見に行かないことです。
盗掘王に足跡を見られると何をされるか分かりません。
いったん移動し、回り込んでまったく別の場所から近寄ってご対面を果たします。
このホテイアツモリソウは、無条件にひれ伏すにふさわしい花です。


少し素顔を!

この花があれば、この周辺に(花が咲いていなくても)もっとアツモリソウがあるはずです。
最初はそのような冷静な考えも持っていましたが、
素早くご対面を果たし万が一にも他人に見られないようにする必要性から、
この株のほんの周辺を見ただけで、そのことを忘れてしまいました。


すくっとのびやか

ここは普通は人が入り込むのは稀な場所です。
薄い踏み跡に、今年人が入った形跡はありません。
その証拠に踏み跡の真ん中にある草花が痛んでいません。
それでも用心に越したことはありません。
さようなら、ホテイアツモリソウ。
もう2度と来ないかもしれないが、いつまでも元気で!


この葉は直線的すぎる(アツモリソウではない)

ここの素晴らしい風景、展望をきちんとお見せすることができないのが残念です。
もっと楽に登れるなら、たとえアツモリソウがなくても何度でも来たいところです。
厳しい斜面を下りているとき、ラジオから「前畑がんばれ!」「前畑がんばれ!」のアナウンスが流れます。
ホテイアツモリソウを見つけた喜びよりも山を下りる辛い道すがら、
なんだか2日間の激闘を終えた自分が励まされているようで、じ〜んとしてしまうのでした。
(2012年の自生のアツモリソウ発見数11株・トータル24株)


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