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四度目の挑戦にして登る幌尻岳
ヌカビラ岳のフラワーロードを経て念願の幌尻岳の頂へ
(2008・6・19〜20)


 1日目 6月19日


カムイコザクラ

 幌尻岳の頂に至る長い道のり 
  日高山脈の最高峰である「幌尻岳」へは、これまで3度登頂を試みたが、いずれのときも風雨により断念している。
 第1回目は、2004年7月、伏美岳から七ッ沼まで行ったが、天候悪化によりその先に進まず引き返した。 第2回目は、2006年6月、伏美岳まで行ったが、大雨の中、伏美岳でテントを張って1泊し、雷雨注意報もあり引き返した。 第3回目は、2007年6月、ヌカビラ岳から七ッ沼、1765mを越えたところまで行ったが天候が急変し、体力も尽きかけていたので引き返した。

 恒例行事となった幌尻岳を、今年も計画した。これまで3回も登って頂上に着くことができなかったが、それでも登山道を埋める素晴らしい高山植物の数々、日高の山の展望を見ることができる雄大な景色を堪能するだけでも価値あるコースである。今年も昨年同様ヌカビラ岳から北戸蔦別岳に出て、七ッ沼を経て幌尻岳に至るコースを歩くことにした。

 ただ、ほしいままに休暇が得られるわけではないので、日程は限られている。実質1泊2日で往復し、2日目には彩の国の自宅に帰えらなければならない。前日に千呂露川・二岐沢コースの二岐沢出合ゲートまで進み、1日目の夜明けとともに出発して幌尻岳まで進み、頂上近くでテントを張り、2日目の午後の明るいうちに下山し、新千歳空港からの最終便に間に合わせることとした。

 今年のヌカビラ岳から幌尻岳の様子については、「一人歩きの北海道山紀行」のSakagさんが6月10〜11日に今回の自分の計画と同じコースを歩かれていて詳しい。カムイコザクラは「ちょうど見頃で、蕾は3割程度か・・・?」と、クエッション付ではあるが、満開を迎えているとのこと。焦燥感を感じたが如何ともしがたい。まあ、待っていてくれるだろう!

 前日
 仕事を早く手仕舞いし、羽田空港へと向かう。大都会のまだ陽も高いうちのJRにもモノレールの中にも、ザックを背負った遊び姿の人は見かけない。ザックの重さは予備の水を1.5リットル入れて22kgある。これにあと数キロの水が足される。夕方までに新千歳空港に着いて空港内のJALSKYでガスカートリッジを買う。空港内のMMCレンタカーの営業所でレンタカー借用の手続をする。高速を夕張で下りて樹海ロードを日高まで進み、あらかじめ申し込んでいた林道ゲートの鍵を受領するため、日高北部森林管理署に向かう。すでに執務時間は過ぎているので、入山ポストに入れられている鍵を取る。今日以降何組かが入山する予定となっている。次いでセイコーマートで最終の食料を仕入れ、道の駅「樹海ロード日高」近くの食堂で夕食を摂る。

 国道274号線を帯広方向に進み、千栄で右折レーンに入って千呂露川に沿って山に入る。農家が点在する舗装道路を過ぎると山道となってエゾシカやキタキツネの姿を見ながら先に進むとゲートに突き当たる。ここが営林署から借りた鍵を使うゲートである。もう森林内は真っ暗で、ヘッドランプを着用してゲートを開ける。二岐沢出合の駐車スペースに着くと、札幌ナンバーとなにわナンバーの車が停まっているが、人の姿は見えない。実質的な登山道が始まる北海道電力の取水施設までへはこの駐車スペースのすぐ先のゲートを越えて林道を歩くこととなるが、所要時間は1時間30分ほどである。今回は極めて限られた日程で往復し是が非でも幌尻岳に登ってみたいので、取水ダムまで前進し翌朝の早い出発に備える。

 彩の国を出発する前の天気予報は、19日は晴れ、20日も午前中は天気がよく、両日の予報は「確率がやや高い予報」となっていたが、ラジオの天気予報は「低気圧が桧山地方の海上に移動し、明日は全道で午後から雨が降り、日高地方では午後3時以降に雨となる。」と伝えている。


1260mの滝下のエゾノリュウキンカ

 1日目 
 午前2時過ぎに起きて、コンロを使って日ごろ食している簡便なダイエット食を用意する。メタボ対策短信でも記録しているように、人間ドックで「メタボ」と宣告され、特にこの3月からはストイックに食事の内容と量をコントロールしている。それは登山中も同じで、基本メニューは変えないこととしている。登山前の体重は68.9kg、体脂肪は13%であり、今回は1日目にして幌尻岳まで進むので、メタボ対策上の効果にも顕著なものが見られるものと予想される。

 昨晩の星空はどんよりした空に変わっているが、午前3時ころになると次第に明るんできて、なんとか天気は持ちそうな感じがする。ヒグマとの遭遇さえ恐れなければ真っ暗闇でも出発したいのだが、昨年、ほんの少し進んだところで真新しいヒグマの足跡を見ており、空が明るくなってから進むことにしている。午前3時45分、すっかり明るくなった。もうそろそろいいだろう。朝露ですっかり濡れている蕗を掻き分け二岐沢の本流に出て、ノビネチドリを見ながら進む。昨年より育ちが悪いようだ。左岸を歩き、流れが大きく東にカーブすると右からの二ノ沢に出合う。河原の脇に大樹が立っていて樹皮に赤テープが貼られている。大樹の脇を登って少し高巻くと大好きな花の一つのヒダカハナシノブ(またはエゾノハナシノブ)が咲く河原の岩場に出る。そこからは二ノ沢の左岸、右岸を何度も行ったり来たりして標高約1260mの滝の手前に着く。昨年は、滝下からエゾノリュウキンカが咲く下部まで大きな雪渓があったが、今年は雪渓の残りはわずかとなっている。

 フラワーロードへ
 滝の手前の右手から斜面に取り付く。ムラサキヤシオツツジが樹林帯に咲いている。林床にはエゾオオサクラソウ、ツバメオモト、サンカヨウ、アズマイチゲ、エンレイソウ、シロバナノエンレイソウそしてシラネアオイなどが延々と咲く。エゾオオサクラソウやシラネアオイは若い株も多く、これから先も目を楽しまさせてくれそうだ。フラワーロードと呼ぶにふさわしい登山道だ。

 
 エゾオオサクラソウ

  
シラネアオイ

 
サンカヨウ

昨年は、万一トッタの泉が枯れていた場合のことを考えて滝の下で水を確保した。しかし今年のSakagさんの記録では、水場に雪がまだ残っていて水がしっかりと流れているので、泉で水を取ることにした。案の定泉の水は途切れること流れ出ている。今日一日の行動時間を勘案して約3リットルの水を補給する。明日は幌尻岳の頂上から戻るが、予備のクリタの水が1.5リットルあるのでこれで足りるだろう。何度も水を手のひらで貯めて飲む。 水場の脇にはテント1張り分を整地した場所がある。ビバーク時には、水もあり、強風も避けられる樹林にあるので便利だ。ただ、湧き水で地面が濡れているのは気にはなるかもしれない。


エンレイソウ


ミヤマエンレイソウ


エゾキスミレ

 岩場では?
 取り付き斜面から尾根に出て、低木草原状のトラバース道を進むとエゾキスミレが群れて咲いている。ハクサンイチゲもハイマツの縁のよく陽の当たるところはすでに開花している。ヒグマによる掘り起こしのあとはほとんどなく、今年はまだ下界のほうに豊富に食料があるのだろうか。太いハイマツの中を通って進み、標高1700mを過ぎると岩場に出る。果たして・・・。


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