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ヌカビラ岳〜北戸蔦別岳 
(2012/10/ 6〜8)


ソラチコザクラ


 10月6日(金) 

 国道237号線を千栄(ちさか)から、千露呂川に沿って林道を走る。途中、入林ポストで入林届を書き北電ゲートに着く。先着は道内のご夫婦、ほどなくして東京からの青年が着くが、いずれも北戸蔦別岳でのテント2泊を予定している。その後、単独の日帰りの人が到着して、今日の登山者がそろったようだ。頂上でのテン泊者が3組となったので早々に頂上泊をあきらめ、例のヌカビラ岳の先の素晴らしい場所にテントを張ろうと決め、ゆっくりゆっくり膝を庇って登ることとする。(注) 往路は天候が悪く、この日の画像は3日目の下山時に撮影したものを参考利用。


林道からヌカビラ岳

 北電ゲートからは、ソラチコザクラを探しながら歩く。岩盤むき出しの場所はそこらにあるが、ソラチコザクラの植生がつぶさに見られるところは少ない。概ね二岐沢の林道の対岸にあるとみていいだろう。また、その規模も小さいので、これまでこの場所のソラチコザクラは人目に付かなかったのだろう。ネットに記事はない。


無防備な二岐沢の魚クン(魚名:オショロコマ?)

 北電の取水場から先は沢沿いを歩く。この時期、渡渉と呼べるほどの行為は必要ない。しかし、2010年8月3日のツアー登山の遭難事故のように、降ったか降らないか分からない程度の降雨でも救助を求めるケースもあったことから、特に花の時期には融雪による増水の要因もあるから侮らない方がいいだろう。ともかく、今回は高巻くところもなく快適に進む。


いいね〜!

 今回非常に気になったことは、あまりにも酷すぎる赤テープだ。まったく躊躇、遠慮がなく、甚だしいときには数メートルおきにけばけばしい色のテープが付けられている。これではまがりなりにも日高と呼ぶ山域の野趣がそがれる。迷惑千万なこのような行為は自然に浸ろうと思って入山する者にとってはありがた迷惑、甚だしく情緒を削いでいる。また、2010年に大量の遭難事故騒ぎがあったからだろうか、岩に赤ペンキで延々とマーキングされている。しかし、このような景観を損なうおせっかいはやめてほしいものだ。もう一つ、ヌカビラ岳のハイマツが大量に切られ、登山道が広がっている。切ったハイマツの枝をどっさりと今生きているハイマツの上に投げ捨てている。そしてアルミ梯子に至っては何をや言わんかだ。程度問題ということが分からないのも困りものである。


 そのような怒りは少しさて置いて、先に進む。大量の赤テープに対する怒りの感情を抑えれば、いつもの素晴らしい山の静かな雰囲気に浸ることができる。たとえ小雨の中であっても。そう、空模様はだんだん悪くなって草や笹が濡れてくる。ザックカバーは付けるが、レインウェアーは着込まない。


エゾノオヤマノリンドウ

 標高1100m、滝の手前で沢から分かれ、急登になる。この先で間近に熊に出合ったことがある。それでも今回は熊鈴は鳴らさない。うるさいから。すると、1500mまでの3か所で獣臭を嗅ぐ。一番下の方が酷かった。この時期、ヒグマは下に下りているとは言うが、取り敢えず獣臭がするところは速やかに立ち去るのが無難だろう。


たまにこんなところも

 6月のころの尾根は雪がうず高く積もっていて歩きやすいが、今は夏道を忠実に辿るから疲れる。それに1380mのトッタの泉で水を補給し、水が6リットルとなったので、急に速度が落ちる。それでもヌカビラ岳で図らずもご夫婦に追い付き追い越し、その先のテン場でザックを下ろした。ハイマツに遮られないところは強い風が吹き付けているが、この場所はまったく風の影響を受けていない。すると日帰りの男性が藪の先から声を出しながらそろりと下りてくる。ヒグマと思ったのだろう。こちらから先に声を掛ける。「北戸蔦別岳の頂上は一張りしかテントが張られていないですよ。風も避けられていてテントは煽られていなかったですよ。」とのことだった。しばしこの人と雑談し、「では。」と別れを告げる。


北戸蔦別岳

 強風に煽られながら北戸蔦別岳の頂上に着く。先の男性は一段下にテントを張っているので、あまり強風の影響を受けていない。しかし、残る自分の場所はあまり風よけにならないところで、設営したテントがブルブルと始終震える。設営に手間取ったために雨や汗で濡れた衣類で体が冷える。テントに入って下着類を着替え、ダウンのインナーなどを着込み、シュラフに潜り込むが1時間ほどは震えが止まらなかった。寒さでビールはもとより、日本酒にも手を付ける気は起きなかったが、文庫本を読んで夕暮れを待つ。


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