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カムイビランジを探しに!
エサオマントッタベツ岳〜カムイエクウチカウシ山縦走

2008//29〜8/1
(4日目)


 4日目 (8月1日)

→→→→→
カールから矢印に×の沢を下りると右の画像の×に出る。矢印に赤丸がある方向に戻ると、右手に草場に入る踏み跡がある(正解)。     → 左の画像の沢を下りると、矢印に×のところに出る(矢印の先に2人がいる)。ここは画像の2倍程度の高さがある。矢印に赤丸がある方向から下りてくる(正解)。

慰霊碑から続く流れに沿ってこのままこの沢(画像左)を下りると、急な滝に出て
(画像右)下りることは不可能だ。少し戻って、草場の中に続く踏み跡を探すこと。

 昨夜からの雨が断続的に降っている。雷鳴も聞こえる。天気予報は今日から3日間の悪天候を伝えている。午前3時だ。撤収するなら早いほうがいいだろう。カール上部はすっかり濃いガスに包まれている。テントの中で身支度を整え、あとはテントを畳むだけだ。外に出ると中年の男女が茫然と立っている。声も出さない。

 「お早うございます。」と言っても返事がない。続けて「どうしました。下りてきたのですか。登ってきたのですか。」と尋ねると、「道に迷って夜中に着いたので、そこの岩の下でビバークしていました。今から下りるところです。」と言う。ヘッドランプを持っていないのか、まだ明るくないのに暗い中から突然姿を現したのだった。

 雨が降っているが、まだテントを畳む作業が残っている。この2人は「ここを下りればいいんですよね。」と、雪渓が残っていれば沢水が流れる沢を下って行く。「どうでしょうか。だめだったらすぐ戻って、草場を横切る道を探してください。」と昨年の下山時の様子を思い出して、言う。自分自身も、カムエクの頂上からの下山で道迷いしたほど、1年前の記憶なんていうものはおぼろげだ。ただ、登ったことのない八ノ沢カールから初めて下山した際に、沢筋を追わないで、上方から見て沢筋をクロスする踏み跡を追って歩くと、赤テープがところどころに付けられた別な沢筋に出て、それが正しい下山路であることに安堵した覚えがある。


三股

 降雨や背丈もある草木から垂れる水と濡れた足場に悩ませられながら、難関をどうにか下りる。1225m付近では、昨年と同じ過ちを犯し、短いが急なルンゼを下りてしまい、その岩の様子から間違いにすぐ気づく。いったん下がった道が「すとん」と右手のルンゼ状の踏み跡に続いていることから、いったん下がって右手に入らずそのまま上がるように進めば、右手上方の枝に赤テープが3〜4本付けられていて、隣の、本来下りるべき沢に出られるのだった。

 こうして難関を抜けて、雨の中デジカメを出して滝を写していると、なんとビバークしていた2人が滝の上部から下りてこようとして、こちらに声をかけている。大声を出し、「駄目だぁ〜、戻れ〜。」と叫び、手でバッテンを作り、ステッキで本来の方向を示す。しかし、下りようと下ってくる。警笛(ホイッスルと呼ぶものではない。金属製でコルクが入ったもの。)を何度も強く吹いて、叫ぶ。「下りるなぁ〜。」「だめだぁ〜。」と。ようやく戻って行く姿を確認できたので、下る。


06:32の地点

 しばらく八ノ沢を下り、もう登山靴では沢を渡れないというところでザックを下ろすと、下から青年が上がってくる。聞くとカムエクからコイカクシュサツナイ岳を経由し、ペテガリ岳に至り、さらに東尾根コースから下山するという。なんと9日間の予定であるという。うらやましい限りの計画と体力に脱帽する。野菜類を一つも持っていないと言うことだったので、途中で漬物にしたナスやキュウリ、みかんなどを持って行ってもらう。長丁場なのでビタミンやミネラルの摂取は必要だ。2日間の雨は折込済みで登ると言う。声援を送って別れる。


07:37の地点 沢靴に履き替える

 午前8時15分、八ノ沢出合のテン場に着く。オレンジ色のアライのテントが張られている。先の2人のものだろう。無事の下山を願う。午前10時、ようやく7ノ沢出合に到着する。すると、河原で甲羅干しをしている男性が見える。昨晩、テントに入らないかと声を掛けた男性だ。「暗くなってしまい、自分のテントを張った場所が見つからず、ビバークしました。」という。ビバークと言っても、降雨の中、木の下で寝れたかどうかだろう。携帯電話がほとんど通じない山中においてラジオでの気象情報入手、濃霧の中でのGPSでのルート確認、光量があって照射距離が長く電池の持ちのいいヘッドランプでの登路照射、小型ラジオでの気象情報入手は不可欠であることを再確認した。


08:15 八ノ沢出合のテント場

 ここから日高山岳センターまでは約20kmの長い長い林道歩きである。前年は沢靴で歩き通して辛かったので、登山靴に履き替える。多少は歩きやすいが、無聊の世界でもある。今回の縦走は何だったのか。ハイライトはたった一輪でも、やっと出会えた春別岳のカムイビランジだった。そうか、SMAPの歌にも「世界に一つだけの花」と言うのがあるではないか、などと鼻歌を歌い、ラジオを点けるとNHKからこの歌が、女子十二楽坊の演奏によって流れてくる。愉快な気分になった。


09:42 ヒダカトリカブト

 札内川ヒュッテ手前のゲートに着くと、札幌のガイドが引率する数名のパーティが七ノ沢出合2泊で、カムエクに登る準備をしているところだった。低気圧の通過は折り込み済みで、志気は高かった。十勝の方の空には青空が見えるが、カムエク方面沢の上部はすっかりガスに覆われている。こわごわ下りてきた者、これから登る者。それぞれがそれぞれの日高の山を楽しめばいい。また来年も同じコースを歩こうと決めた。今度は最後まで晴れてくれるかもしれない。


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場所 所要時間
八ノ沢カール 04:30
05:12 三股 05:15  42分
07:15 沢靴履替え 07:30 120分
08:15 八ノ沢出合 08:20  45分
10:00 七ノ沢出合 10:30 100分
13:10 札内川ヒュッテ 13:20 160分
15:30 日高山岳センター 130分
総歩行時間 9時間17分