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カムイエクウチカウシ山〜コイカクシュシュサツナイ岳縦走
2009/ 7/27〜7/31


八ノ沢カールの下山路詳細


 1日目(7月27日)

 また今年も日高の山に登る季節がやってきた。しかし、今年の北海道の天候は不順である。前泊した帯広八千代ユースホステルのペアレントさんによれば、沢はこのところの降雨で増水し水も濁っているとのことである。取り敢えず七ノ沢まで行き札内川の水量を見てから入渓できるか否か判断することとする。だめだったら七ノ沢で待機し減水を待つしかない。今日(27日)と明日の天気予報は悪いが、札内川を遡行することさえできれば、ペテガリ岳東尾根までの稜線歩きなので何とかなるだろうと高をくくる。


八ノ沢出合手前(09:14の地点)

 あかしやトンネル先のゲートを出発し、七ノ沢出合でユースホステルで準備してもらった朝食のお弁当を食し七ノ沢を跨ぐ。水量は多いが支障となるものではない。札内川も水量は多いが、水は澄んでいる。しばらく河原を歩き最初の渡渉となる。水かさは膝頭まであるが、ここを渡ることができればめっけもんだ。棒切れを支えに川に入る。どうにか切り抜けた。よ〜し、これなら先はなんとかなるだろう。ほとんどが巻き道歩きで、3回だけの渡渉で八ノ沢出合のテン場に着く。(07:45〜09:35)


八ノ沢から八ノ沢カールを見上げる

 右岸から土石が顕著に八ノ沢に流れ落ちている地点(二股)で、カムイエクウチカウシ山と八ノ沢カールが姿を現す。相変わらず水量は多い。今年は雪渓も多く残っている。最初の雪渓付近でギョウジャニンニクを数株採る。今回は野菜としてキュウリとスープ用のたまねぎと人参を持ってきたが、みずみずしいギョウジャニンニクでさらにスタミナアップを図ろう。次の雪渓脇にテントが見える。声を掛けると、エサオマントッタベツ岳から入って今日で10泊目という東京在住のご同輩だった。沢の増水を懸念して、水が引くのを待っているという。


スノーブリッジ 11:40

 「米さえあれば何日でも山に登っていることができるよ。タンパク質は竿を出せばいくらでも魚が手に入るし、野菜はギョウジャニンニクやウドが採れる。今回、あなたが初めて会った人だが、ヒグマには8頭も遭い、1頭には至近距離で牙を剥いて吠えられてしまった。八ノ沢カールにはいなかった。北アルプスなどの山と違って日高の山はいいね〜。人はいないし、静かに過ごすことができる。」と言って、ギョウジャニンニク、ウドやヤマベを見せてくれる。


ピンク色の卵を抱くアマゴ

 いやはや、同世代がさまざまな趣味、生き方を選んで自由に人生を謳歌するなんて、いいね、日本という国はとつくづく思う。「釣ったばかりのアマゴがあるけど、食べなさいよ。4匹ほどご飯に入れて炊くと最高のおかずになるよ。」と言ってくれるので、じゃあスープに入れる分をと、きれいな魚体のアマゴを1匹分けてもらう。


12:16 三股手前の手強い雪渓

 


13:14 
三段中央の流れ

 昨年、一昨年と2度登ったカムイエクウチカウシ山ではあるが、これほどの雪渓が残るのは目にしていない。自由人がテントを張る場所から三股までは例年にない量の雪渓で埋め尽くされている。(09:35〜12:30) これまではエサオマントッタベツ岳からの下りでしか使ったことのない登路である。沢靴から登山靴に履き替えて、さあ出陣と出発したが、これが間違いで最後まで沢靴で通すべきであった。急にきつくなる傾斜に、つるつるした岩場は登山靴を容易にスリップさせる。最初の洗礼のシャワークライムをどうにかクリアし、滑落に気を付けながら進む。細かなルートの取り違いはあったものの、進むべき沢筋をきちんとおさえ、シラネアオイが咲く最後の傾斜を無事登り切ってから右岸に取り付き、そのまま念願の八ノ沢カールに入る。


14:13

 カールには人がいない、ヒグマの姿も見えないという点においては静寂そのものであった。ナキウサギが「ピチッピチッ」っと鳴き、カムエクの急斜面から激しく流れ落ちる水、カールの雪渓から流れる水の2本の流れが轟々と音を立てている。稜線の向こうからおびただしい雲が流れてきてすべてを覆い尽くす。雨粒となって落ちてこないうちにとさっそくテントを立てる。カールから流れる水を汲み、シュラフにいつでも潜り込めるようにしたとたん、雨が激しく降ってくる。明日の停滞は決定的だと諦めてお湯を沸かし、ウィスキーを飲む。


ここで右岸に渡るとカールへの入口への登りとなる 14:15

 夜半になっても雨はおさまらず、稜線で雷鳴が轟く。その音は山肌に反響し、まるで大砲を何十発も打ち込まれているようだ。落ちるなら落ちてみよ、この腹の上に。そのまま眠り入る。



15:08 シラネアオイ


15:18 八ノ沢カール


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