[HOME][3日目]

エサオマントッタベツ岳〜カムイエクウチカウシ山縦走
(2010/ 7/30〜8/ 4)

[ガケノ沢出合〜札内JP]



2010/7/31 06:30のガケノ沢渡渉地点の様子(マウスオンで前日の画面)

 7月31日 (2日目) 

 午前4時。テントは濡れているが、もう雨は上がっている。川は大幅に減水したようだ。目印にしておいた石が水没から免れている。タオルで雨の雫を拭き取る。登山靴を濡らさないようパッキングする。朝食を摂って身支度を整えていると、みるみるうちに時間が経っていく。天気予報は、明日(1日)が悪く、それ以降は雨は降らないようだ。明日の予想降雨量は分からないが、また停滞すればいい。さあ決断のときだ。


最初の渡渉点を渡り切って振り返る

 林道跡の日差しのないところの細い木を借用し、手を上げた長さ(2m強)の棒を作り枝を払う。減水したとはいえ、今も轟々と流れる川の中心部を突破するには、急な流れのところでは棒を川に刺し、足腰を安定させてすくわれることを防がなければならない。さあ、足腰を濡らそう、と川に入る。

 まず、いったん斜めに上流に向かい、次に激しい流れの中心部をめざし、棒を川下にしっかりと刺しながら斜めに数メートル下り、次の頭が露出している大きな岩の陰に向かい、そこから洲となっているところに上がると、あとの数メートルはもうだいじょうぶだ。反対側の赤テープが下がった場所に着いてまず、安堵!


魚も見えた可愛い滝壷もドドドッと (マウスオンで2008年の同じ場所)

 いつもは可愛い滝壺も、きょうはそんな悠長なことを言っている場合ではない。ここは藪を分け入って高みに出て、適当な地点でまた川に出る。顕著な渡渉はガケノ沢の渡渉点を除き4〜5回ある。ザックの重心が背中の上にあるから、川の中の石に足を取られバランスを崩すとそのまま振られて倒れる。川べりでのことだから笑い話だが、3〜4回、半身を水没させる。

 823mを経て、休む間を惜しむようにして歩きどうにかこうにか997mへたどり着く。ガケノ沢を出発してから約5時間近くもかかっている。慎重な渡渉・河畔歩き・渡渉突破不可能な場所の踏み跡のない藪漕ぎは時間の消費とともに、体力も大きく消費する。こんなときの秘密のエネルギー源は、十勝養蜂園が幌加内のソバ畑で採取したソバのハチミツと生のレモンを絞って同量をブレンドした自家製の「はちみつレモン」。これによって、行動食を多食しなくていいようになった。(6日間用として400ccを持参。なお、効果には個人差があると思われます。行動食はしっかり持参しましょう。)

さあ、どう渉る。このようなところを4〜5回渡渉する必要がある

 999mの沢の出合いをいつもは流れのない左岸(右側)のごろた石の沢を、長大な滑滝を目指して登る。どんどん斜度の増す沢を遡ると、雪渓の先に滑滝への取り付きがある。滑滝に取り付く前に、棒ラーメンやベーコン炒めの具として用いるため雪渓脇でギョウジャニンニクを適量採取する。

 滑滝も水量が多いが、難渋するほどではない。1か所だけでプチシャワークライミングがあり、衣服を濡らした。この場所は、しかしながらこの縦走のハイライトの一つである。徐々に滝を登って北東カールをのぞく手前になると、屹立する岩にミヤマダイコンソウが咲いている・・・ハズであったが、今年はもう花が終わっていた。次のハイライトはカールで食餌中の熊の存否だ。

 
999mから分かれた北東カールへの本流中域(マウスオンで2007年の999m分岐から見た様子)

 熊鈴を鳴らしたままカールの端に出る。思ったとおりだった。ヒグマはカール上部で食事中のところであり、熊鈴に気付いたようだ。ヒグマがこちらに気付いた以上、去ってもらうように仕向けなければならない。警笛を大きく吹鳴すると、ヒグマは急峻な崖をエサオマントッタベツ岳頂上方向に向かって藪の中に入る。(1頭目のヒグマ)

 ヒグマは素直に動いてくれた。雪渓で埋もれた北東カールの流れで、水を8リットル補給する。明日1日停滞し、その後カムイエクウチカウシ山及びピラミッド峰の先の1602m、憧れの場所でテントを張るには、この量の水を担ぐことも(超人のSakagさんとは違って)致し方ない。

北東カール全容(1)


北東カール壁(2)


北東カールから見た札内JPへの登路(3)

 今日は、明日の大雨という天候を考慮すると、北東カールで夜を過ごすと言うわけには行かない。どうしても札内JPに上がる必要がある。急に8kgの重量が増えたザックを背負い、引き続き沢靴を履いたまま、取り付くべきルンゼ向かう。滑り落ちるような急斜面と重いザックで心拍が200近くまで上がるといったん息を整える。そのようなことを繰り返し、大汗を流してどうにか札内岳寄りの下降点に着く。

 さっそく携帯の電波状況を把握しようと電源をオンにすると、登山届けを出していた帯広警察署から入山日に電話があったことが表示される。入山日に警察署から電話連絡があるということは、登山中止についての指導や安否確認が用件であろうと思われる。警察署に電話すると、日曜日であったため担当者が不在であったので、当直の警察官に現在位置と行動予定を報告する。 この際、本縦走の行程管理人と帯広八千代ユースホステルのオーナーに、明日の停滞に伴うその後の計画の変更を知らせる。これでまずは一安心。心置きなく停滞生活を楽しもう。


エサオマントッタベツ岳とシナノキンバイソウ

 下降点から札内JPまでの稜線のハイマツは、控えめに、しかし要所がきちんと整枝されている。おかげで気持ちよく札内JPに到達する。JPにテントが張れるスペースがあるが、谷から風が吹き上げてきていて、明日の天候を考えると適地とは言えない。快適だからと言ってエサオマントッタベツ岳との鞍部にあるテント場まで行くのもかったるい。「そうだ、地面はならされてはいないが、登山道にハイマツで覆われたスペースがある。」と、JPからエサオマントッタベツ岳方向に少し下りた場所に向かい、テントを張る。そこは2007年の縦走時のテント場の記録を見ると、「札内岳JPからエサオマントッタベツ岳へ向かう途中にある。草が生えていて使用の痕跡少ない。北東カールを眺めることができる場所なので、風が強く吹かないときによさそう。 」と書いている。


札内岳JPのエサオマントッタベツ岳寄り斜面登山道で停滞

 まだ天候はいい。だが、国土交通省のリアルタイム河川情報(i-rever)【川の防災情報】携帯版で降水状況をチェックすると、道南と稚内・利尻礼文地方に大きな雨の帯がある。特に稚内地方の前線が南下してくるので、長時間天候悪化の中での停滞を強いられるもようだ。ラジオから流れる天気予報も悲観的で、そのうち、i-rever上に日高の山全体に雨が近づいてきていることが示されている。登山道の真ん中のテント場だが、ミヤマダイコンソウとヒダカゲンゲの大きな株をテントで塞がないようにテントを張った結果、結構な斜度となってしまった。(自然保護の観点から、稀少な高山植物を痛めないために停滞中の快適性を放棄しました、と取り敢えず強調しておきます。)

 テントを設営してほどなく、天候は急変し、テントから出ること自体ままならないこととなった。

(2日目の行程) 06:31ガケノ沢出合渡渉(1回目)〜07:03渡渉(2回目)〜07:38段差の滝渡渉(3回目)〜08:08渡渉(4回目)〜09:35渡渉(5回目)〜09:57渡渉(6回目)〜10:12渡渉(7回目)〜10:55渡渉(8回目)〜11:15二股997m11:31〜12:30雪渓・滑滝取付き〜13:46北東カール14:06〜15:30札内JP東〜15:50札内JP〜16:47エサオマン寄りのテン場


[HOME][3日目]