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エサオマントッタベツ岳~カムイエクウチカウシ山/テント泊縦走
2014/ 7/25~29
(3日目)


 2014/ 7/27(日) 


3日目の移動距離 (ナメワッカ分岐~春別岳)

 一晩中風雨が強かった。それはテントの崩壊が考えられるほどだった。ただ、睡眠はよくとれた。午前4時20分、帯広八千代ユースホステルのオーナーさんに「風雨強いが収まれば春別岳まで移動する。コイカクシュサツナイ岳までの)予定を変更し八ノ沢を下るが、沢の増水があれば下山後の宿泊予定日を超えて停滞する。」とメールする。ユースホステルは夏の繁忙期を迎え、予定外の対応は困難となるからである。十勝帯広空港から道の駅なかさつないまで頼んだ幕別町の個人タクシーの運転手さんは何気なく「下山はヘリコプターですか。」と悪い冗談を言っていたが、このままの天候が続けばそんな話しが現実味を帯びる。

 ※ この日、風雨の中を移動したので、画像はありません。次の画像は、2010年8月にこのルートを歩いたYasuさんから拝借し、ご了解を得て使わさせていただきました。Yasusanの記録は「Yasuの山楽日記」でご覧ください。。
 また、このページのそのほかの画像は、カムイワッカ分岐~春別岳の間の尾根の状況を説明するため、2007年に老少年が写したものを掲載しました。


ナメワッカ分岐から春別岳への尾根道 (Yasuさんの画像)

 ヤマテンはこの日の天気について、「低気圧は日中に北海道を通過し昼ごろまでは南西風が、低気圧が通過した後は北風が非常に強まって暴風雨の大荒れの天気になる。断続的に大雨となって気温も急激に下がって低体温症に注意。警戒事項:暴風雨による行動不能・転滑落、テント崩壊、沢の増水、視界不良による道間違い、低体温症」と配信している。


ナメワッカ分岐から先の春別岳への稜線

 起き出して朝食を摂り、いつでも出発できるように身支度を整える。午前6時ごろいったん風雨が収まったのでテントを撤収する。ナメワッカ分岐から1831mの登る。まあまあの出だしである。この1831mの南側の斜面の岩場には固有種のカムイビランジがあったが、まだ蕾のままであった。


同上

 ここからは、Yasuさんの画像で分かる通り、右も左も切れたった急峻な尾根で足を置くところはわずかで、かつ、岩は濡れていてスリップしやすい。このころから風雨が極めて強まり、このような悪条件の中、後続のChuanghuさんが問題なくついてきているか、たびたび後ろを振り返る。強風が日高側から間断なく吹き付け、ときに止まって耐風姿勢を取らなければならないことも多々あった。


1831mの右後ろにナメワッカ分岐

 一瞬、春別岳が姿を現す。十勝側に稜線を派生させており間違えようのないところなのに、再び風雨となって視界が失われ春別岳のピークを過ぎたのに気付かず、1791m方向に少し下りてしまった。「おかしいなぁ、この先春別岳に行くのにこんなに傾斜のきついところを歩いたかなぁ。」と疑問になってピークに登り返す。強風でピークにはいられないから、十勝側にある土砂が流れてできた窪みで強風を避ける。依然として視界がないのでGPSで現在位置を調べると、今いるところが春別岳であった。そのまま先に進んでしまうと、次のテント場がある1732mまでは、1917mを除き一切のスペースはない。なお、1917mのテント場はピークの真上にあって、今回の気象状況では使用に耐えない。


春別岳から右奥に幌尻岳 左にナメワッカ  右にナメワッカ分岐(見えず)

 ここが春別岳だったのか!ならばピークから斜面を北方向に下りるとテント場があるはずだ。ハイマツと低木を踏んで下りると、懐かしいテント場(これまで2泊した)があった。このときほど、今回の縦走中に安堵感を覚えたことはなかった。それは安全無事に到着することができたこと、もうテント崩壊の心配はないこと、なにより西風がさけられることからであった。ただし、低気圧がオホーツク海へと過ぎてからは、吹き返しの東風が翌朝まで続いたので、この点は想定外であった。(ヤマテンは、そのことの予想もしていて注意喚起をしていたが、認識が甘かった。)


春別岳 奥に1903m

 過去にHYML(北海道山メーリングリスト)というネット上の集まりに参加していた。この中で、北海道の山屋さんが「GPSの使用は邪道だ。」と強硬な論陣を張り、それに付和雷同する意見も少なからずあった。機械的な不具合としては①機器の故障②電池切れをあげていたが、主旨はどのようなときでも地図とコンパスで現在地を把握すべきということであった。無論このような頑迷な意見にはそもそも到底与しないが、地の利を生かして好天気時だけ登るとか、長期縦走は念頭に置いていないのであればそのような信仰も個人の自由の範囲内である。そのようなつまらない議論がいくつかあって馬鹿馬鹿しくなってこのリストから抜けたが、このような山ではあらゆることを想定し、できる限りの準備をして臨むことは、当然中の当然なことである。

 午前8時30分に春別岳に着き、無事テントを張り終えて潜り込んだが、相変わらず風雨は強い。シュラフに潜り込むとうとうとと夢の世界へと誘われる。たまに目を覚ますと風は十勝側から吹き付けるようになっていて強く、テント本体とフライシートが密着したときに雨が浸み込んでテントのボトムを濡らす。2003年に大雪山縦走のために買ったゴアテックスのシュラフカバーは防水効果をすっかり失って、雨が浸み込んでくる。つまり、シュラフも濡れてくるということだったが、このときの気象条件では命の安全が脅かされるものではないので、特に気にはならなかった。 午後4時30分、ヤマテンから明日28日の予報のメールが入る。警戒事項は28日朝までに解除される。天気は回復に向かうとの内容だった。食事はあまり摂らず、ウイスキーにもあまり手を付けず、引き続きシュラフの中でまどろむ。


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