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タカネビランジ 雷雨の北岳

2006/ /12〜13


 8月13日(日)

テントの外が明るくなっているので起きてみると,雨は上がっていてテント場から傘をかぶった富士山が見える。野呂川の方から湧いてきた雲海が徐々に上がってきて,夕暮れの山並みを包み込んでいく。テント場はもう余地がないほどテントが張られていて,それぞれの夕食の準備が始まっている。

夜明けにはまだまだ早いが,起きてみると周りはすっぽりと深いガスに包まれている。テントは雨に濡れ,地面の泥の跳ね返りを拾って汚れている。あれほどの雨の中を,ツェルトで過ごした若者がいる。

 八本歯のコルへのトラバース道に咲く初秋の花が楽しみな下山ルートをたどる。トウヤクリンドウ,ミヤマナデシコ,ハクサンフウロ,ミネウスユキソウ,ミヤマハタザオ,イブキトラノオ,ミヤマシオガマ,コバノコゴメグサ,ミヤママンネングサ,チシマギキョウ,タカネヤハズハハコ,シナノオトギリなど,まさに花街道である。圧巻はなんといってもキタダケトリカブトである。イブキトラノオとの競演,斜面を埋め尽くしている。

 八本歯のコルへの分岐に至るとそこはゴロゴロした岩ばかりで花の咲く余地はない。コルに向かって一気に降下する。足場も悪く脇見もままならないが,谷に落ちる岩場の白いものが視界に入る。紛れもなくタカネビランジだ。このような人が容易に近づくことのできない岩場に咲いていたのだ。誰もタカネビランジに目をくれないで下山して行くが,これは日高山脈の固有種で2泊目の稜線でやっと会えた花,カムイビランジの近種だ。

 広河原発のバスにはまだ時間があるからと,タカネビランジを見すぎていた。大樺沢を急いで下る。ちょうど芦安や甲府からのバスで来た長い列とすれ違うことになり時間をくうが,大樺沢出合にちょうど乗り合いタクシーが待っていて,最後の席を確保することができた。

 空はすっかり晴れ上がり,上空の寒気も去って雷の恐れは少ない。芦安からの始発バスだけでも12台運行されていて,これに甲府からのバスやタクシーを加えると,今日の北岳は大入り満員のようである。


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