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今年もキタダケソウが見たくて 北岳
2007/ 7/ 1〜2


 7月2日(月) 

 肩ノ小屋は、やっと調理場が目覚めただけで、登山者はまだ起きていないようだ。今日はキバナノアツモリソウを探しながら下山し、11時発のバスに乗ればいい。まだ4時にもならないので、シュラフにくるまったっままでいる。そのうちに小屋の電灯が点けられストーブに火も入ったので起きて外に出ると、視界はあまりきかず雨も落ちている。テント泊の4人組はもう下山の準備が整って出発するばかりのところであった。  


岩場の割れ目に根付くタカネビランジの芽吹き 八本歯ノコル

  薪ストーブの周りでひとり食事をした後、下山の準備をし、6時過ぎに小屋を出る。稜線は風雨が吹き付けているが、小太郎尾根の分岐まで我慢すればいい。そういえば昨年のキタダケソウの時期も同じような天候だった。右俣コースへ下りる分岐直下から雪渓に覆われていて、小屋で「ハイマツの中を通って来た。」と話していた人がいたことから、雪渓上の踏み跡を追ってハイマツ帯に入る。ハイマツには古い刈り込みの跡があって、踏み跡もしっかりしているのでそのまま下りていくと、先行する小屋で会った女性グループの賑やかな声がする。

 登山道の様子は右俣コースとは違うが、道がしっかりしているし、どこかでコースに合流するだろうと思っていたが、草スベリの道に合流してしまったので、これまで歩いたことのない道でありそのまま進む。途中クロユリの群生が見られ(N35°41′056″、E138°14′680″)、その後は草薮が多く、キバナノアツモリソウがあってもよさそうな雰囲気なので、右に左にと見回しながら、ついには白根御池に着いてしまった。


八本歯ノ頭と池山吊尾根

 白根御池小屋からはうっそうとした樹林帯になっていて、視界はなく、雨脚の強くなった急な尾根を600mも一気に下りなければならない。林床に見つけた花はイチヨウランの1株だけであって、これならば大樺沢を通ったほうがさまざまな花が見られていい。


吊尾根分岐方向から北岳頂上を仰ぐ

 雨は一向にやまず、気温も高く、樹林帯の中は風も動かないので、レインウェアー内部はサウナ状態となっていて、シャツはびしょびしょになっている。早く広河原に着いて着替えたいと一心不乱に尾根を下り、分岐を過ぎて斜面から水が流れ出るところに咲くクリンソウがある場所に着く。
 クリンソウはぬかるんだ登山道脇で数株が花を咲かせている。親株の周りには、植え付けたばかりの白菜の苗のような小さな株があるが、クリンソウの花にばかり目を奪われて、その株が踏み付けられている。登山道の石をせっせと集めて株のありかを分かるように大きく取り囲んで見る。


この日の肩ノ小屋は午前8時、気温8度、視界20m・・・との発表

 肩ノ小屋で会った花博士にこのクリンソウの話をすると、「北岳にもともとクリンソウはなかった。あそこのは誰かが持ち込んで植えたものだ。」とおっしゃるので、それはそうかもしれない。しかし、これまでのクリンソウ原生地探訪の経験からすると、沢水の流れ方、土質、土の湿り具合、そして全体の雰囲気から、ここに昔から自然にあったものではないかと確信するのである。


昨年は気が付かなくて クリンソウ

 クリンソウとの戯れも終えてアルペンプラザに着くと、雨をおして下りてきた肩ノ小屋で一緒だった人たちが多くいて、また花談義に花が咲くのであった。
 何度登っても尽きることのない本邦第2の高峰であり花の名山である北岳に、今年もできる限り時間を作って何度でも登ってみたいと再確認した素晴らしい山であった。
 


あちこちに同じような注意書きがあって、無視するものいいが、滑落には要注意!


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