[HOME] [1日目]


秋の花を探しに リンドウ咲く北岳

2007/ 9/19〜20


 9月20日(木・快晴)


午前5時20分の富士

 いつものテント泊のように、夕日が沈むころに熟睡体制に入った。午前3時、もう既にテントを撤収する隣の物音に目が覚めた。今日は北岳に登って、11時のバスに間に合うよう下山するから、のんびりもしていられない。テントの外に出てみると、明けの明星がひときわ明るくキラキラと輝いている。山梨の街並みの明かりが雲海の間から見えている。富士はどっしりと裾野を広げ、朝日を浴びるのを待っている。


午前5時26分 ご来光

 5時26分、朝日が昇る。荘厳な朝を迎える。胸を打たれる。


中白根山と間ノ岳を望む

 ご来光を仰いでいるうちに、予定の出発時刻がだんだん過ぎていく。ザックを担いで頂上へ続く登山道をひたすら歩く。吊尾根分岐を過ぎ左俣沢に落ちる崖に付けられた登山道脇に生花が供えられている。2006年8月6日に滑落により死亡した学生を悼むものと思われる。北岳の登山道はしっかり付けられているが、バランスを崩して落ちた場合、最悪の事故となる場所はそこかしこにある。人が多いことから緊張を欠くこともあろうが、単独で歩く場合、悪天候の場合などは自ずと緊張感は高まっているだろう場所である。頂上手前の岩場を学生風の3人が下りてくる。交差できるスペースを確保して先に通ってもらうことにするが、2人は走って脇をすり抜けていく。危ないぞ!


北岳頂上3193m

 大快晴の頂上は、富士山は当然ことながら、槍ヶ岳をはじめとする北アルプス、宝剣岳、八ヶ岳から瑞牆山・金峰山、塩見岳に続く南アルプスの山々がはっきりと見渡すことができる。感動・・・!
 H市から来たHさんが感激の声を上げている。無理もない。誰もが感激している。感激、感動のあまり、またここで時間を取り過ぎてしまった。一番のバスに間に合わせるために、頂上を後に出発せざるを得ない。


二俣コースからの北岳

 Hさんとともに肩ノ小屋、小太郎尾根分岐、右俣コースを黙々と下りる。草付きの斜面を下り切ると樹林帯に入る。ここからの北岳の眺めが、これまでにないほどよい。青空に映える北岳に嘆息しながら体を休める。花を付けたばかりのリンドウを草叢の中に見付ける。
 樹林帯の急斜面を下りて二俣へと向かう途中の開けた登山道でHさんが、この花は?と聞いてくる。「チシマギキョウですかね。でも髭がないからイワギキョウ?」と言ってよく見てみると、なんと、朝日をたっぷりと浴びて花弁を開いたリンドウであった。これまでたくさんのリンドウを見てきたが、これほど見事に開花しているのを見たことはない。あ〜、なんと幸せな瞬間なのだ。


リンドウ

 広河原から乗り合いタクシーで芦安に向かう車中、「皇太子殿下が近々南アルプスの山を登られる。どの山なのかは分からないが、青木鉱泉からだろうか。でも、旅館の改装はなされていないようでお泊りに支障があるのではないか。登山道の整備がそのためになされているところはあるとは気が付かないが・・・。」などと話している人がいる。
 奥多摩の鷹ノ巣山を石尾根から奥多摩駅に下り、三河屋旅館で入浴した。この旅館には皇太子殿下(浩宮様)が登山で訪れた際の写真が何枚も飾られている。2度お泊まりになられたそうだが、その服装やザックなどは質素なものと見受けられた。
 年に1度か2度しか登山に出かけることができないお立場だから、北岳周辺の山にお出でになられ楽しまれるといいなと思っていると、ラジオのニュースは、「25日から1泊で予定していた鳳凰三山での登山を取りやめられる。喉の痛みと若干の倦怠感などを訴えられている。」と伝えている。もう今年は登る機会はないのだろう。なんとも惜しいことだ。

 
イブキトラノオ

 8月下旬の北岳は、夏の暑さによる疲れもあって登ることができなかった。今回で7度目の北岳、花はもう終焉を迎えていたが、澄み切った青空の下,心ゆくまで満足できた最高の山行きとなった。


野呂川の吊橋からの北岳


[HOME] [1日目]