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ちょっと間ノ岳へ 食後の標高3000mの稜線散歩
2011/ 7/ 1〜2


この時期の北岳の花はキタダケソウですが・・・。このハクサンイチゲは美し過ぎました。


 7月2日(土) 

 北岳山荘ではダイニングが午後8時まで開放されているので、夕食後、秩父錦のワンカップを片手に本棚の本を読んで過ごします。いわく、糠平川上流パンケチップ沢の輝緑凝灰岩の崩壊地にヒダカソウが咲くとか(本当はある山とあるちょっと離れた意外な沢の崩壊地にはまだ大規模なヒダカソウの群落地はあるというのですが。)、カラフトアツモリソウの植生が礼文島以外にもあるとか、いろいろためになることも昔の本には書かれています。特筆すべきはホテイアツモリソウでした。ホテイアツモリソウの写真があったので、長老?格の人に尋ねてみると、「今でも(○×に)あるよ。」と言うのです。それ以上のことを聞くのは周りに他の宿泊者もいるので、ホテイアツモリソウの身辺の安全確保上も憚られたことからテントに戻って、今どこかの高層草原で花を咲かせているだろうホテイアツモリソウに思いを馳せて、シュラフに潜り込むのでした。


早朝の北岳山荘テント場

  さて翌朝です。隣のテントで人が起き出し、出発の準備を始めているようなので時計を見るとまだ午前3時半でした。東の空が白々と明けてきたのでテントの外に出ると、リーダーから「早くからうるさくして申し訳ありません。」とお詫びがあったが、早立ちするそれなりの理由があったようです。小屋の食事が午前5時なので、それまではコーヒーを淹れて富士山を眺めたり、稜線に出て仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳や塩見岳をはじめとする南アルプスの山々を眺めます。


仙丈ヶ岳

 食事のために小屋の食堂に行くと、まだ人はまばらです。時間通りに食堂に集まった人は間ノ岳を往復する人たちでした。私はもう一度南東斜面でキタダケソウを楽しんでから、吊尾根分岐の花たちにも逢って、北岳山頂から草スベリを下りて樹林の縁にも目を凝らして歩こうと思っていたのですが、空は真っ青の上天気です。つられて急きょ間ノ岳の往復を決めました。


中白根山

 小屋の食事の時間にも、既に間ノ岳に向かっている人は結構いたのです。小屋泊まりの人は朝食をお弁当にしてもらっていましたし、テント泊の人も早めに出発していました。小屋の裏の稜線に出るともうそこからオヤマノエンドウ、ミヤマキンポウゲ、ハクサンイチゲ、ハクサンシャクナゲ、イワウメなどが咲き誇っています。今年の北岳はどうなっているのだろうかと言うほどの花に圧倒されます。


ハクサンイチゲ・キンバイソウ・オヤマノエンドウ

 それはそれは素晴らしい展望と花と、そしてなにより標高3000mの稜線の清々しい空気です。太陽はあっという間に高く上がって、花々を美しく照らしています。北岳山荘から間ノ岳までは1時間40分のコースタイムですが、写真をたくさん取りながら歩いてもコンディションがよく、午前7時には間ノ岳頂上に着いてしまいました。初めて北岳に来たというご夫婦は、「本当に素晴らしい眺めですね。」と興奮気味です。頂上には隣のテントの人たちもおりました。農鳥岳を経て大門沢を下りるとのことでしたが、あまり山登りになれない人もいるようで、早起き早立ちの理由がそこにあったのかと納得したのでした。


北岳とハクサンイチゲ

 さて、その眺望ですが、中央アルプスは無論のこと、槍や穂高などの北アルプスの山脈も一望のもとにあります。農鳥岳は目前にドカーンと鎮座しています。塩見岳は言わずもがな、あれが荒川岳、あれが赤石岳・・・・。そして富士山と、きりがありません。


富士にハクサンシャクナゲ

 さて、北岳が「もう帰っておいでよ。」と待っているので元来た登山道を戻ります。朝陽がさらに当たって花々が輝きを増してきました。これまでの山登りは1泊して帰ると次の日は出勤ですから、テントを担いで北岳に登っただけではなく、そこから間ノ岳を往復し、さらに草スベリで遊んで帰ろうなどと言うことは夢のまた夢のことでした。しかし、今年からは自由な時間が増えましたので、金曜日に目一杯疲れて、さらに土曜日も疲労困憊であっても次週の仕事に支障が(ほとんど)ないようになりました。


農鳥岳を目指すお隣のテントの人たち

 ・・・ということは、今日はこれから北岳山荘に戻ってテントを撤収し、予定通り南東斜面〜吊尾根分岐〜北岳頂上〜肩ノ小屋〜小太郎尾根分岐〜草スベリという花巡りのゴールデンルートを歩くことになるはずです。塩見岳や荒川岳には「もう少し待っていてね。」と声を掛け、間ノ岳頂上を辞するのでした。


2011年の夏山は「塩見岳」を絡ませます。

 


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