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今年もキタダケソウから始まります 北岳
2011/ 7/ 1〜2


この時期の北岳の花はキタダケソウですが、オヤマノエンドウも鮮烈で・・・。


 7月1日(金) 

 北岳がなぜ花の山なのかを知らないまま、ただ花が多いという理由だけで毎年何度か登るようになりました。今年もキタダケソウを見なければと、ザックにテント泊の装備を詰め込みます。しかし、齢「アラ還」なので、3,192mの頂上までの標高差1、692mを制するのはちょっとしんどいなということで、今回は、食事は北岳山荘で取ることとし、その分の荷物を軽くしてみました。天気予報は午後から雨マークで雷の注意報も出ていましたが、そのようなことで山登りを中止してはキタダケソウを見ることはできません。固い決意で芦安まで車を走らせます。


大樺沢のミヤマハナシノブ

  現在、北岳の登山口である南アルプス広河原に通じる県営林道南アルプス線はマイカー規制が行われています。車は、南アルプス市芦安の無料駐車場に駐車し、路線バスまたはタクシーを利用するとになります。これまでは、タクシーが100円高かったからか、バスにもそこそこ乗客がいましたが、今日はタクシーは満車で何台も出発し、バスの乗客は1人だけです。私は山梨交通のバスがあまりにも不憫なのでバスを選んだのでした。


広河原峠を見る

 タクシーは、出発時間が早いことと機動性がありますから、バスよりずいぶんと早く広河原に着くようです。 広河原には環境省が建設した「野呂川広河原インフォメーションセンター」がありますので、ここで諸準備をします。なお、このセンターは、箱モノを維持するための箱モノと言った感じで肝心の登山者が今知りたいインフォメーションはあまりありませんので、過度な期待は無用です。

 
シダに守られたクルマムグラ(?)

 広河原吊り橋から見る大樺沢から八本歯ノコルは厚い雲で覆われています。今日は予報通りの悪天候になりそうです。大樺沢に入ると樹木がことごとくなぎ倒されて、これまではうっそうとしていた沢の視界が大きく開けています。相当な規模の雪崩が発生したものとみられます。登山道にも巨大な岩石が転がっていて大木を押しつぶしているところが1か所ありました。


大樺沢の雪渓

 大樺沢の雪渓は二俣の手前標高約2140mから始まっていました。最大斜度が40度ありますので侮ってはいけません。この斜度の直登というのは結構こたえます。しかし、雪渓から吹き降ろす風は冷たく、天然のクーラーというより冷凍庫です。指先が冷たく感じます。標高差515mを我慢すると雪渓から離れて支尾根の連続した梯子を登って八本歯ノコルに向かいます。ここは標高差200mのほとんどが梯子の連続ですが、キタダケソウに逢うためにはここが我慢のしどころです。


キタダケソウ

 八本歯ノコルにクロユリが咲くというのを忘れてしまっていて、そのままトラバース分岐へと向かいます。真紅のイワカガミガところどころに咲いていますが、雨が吹き付けるので横目で見やるだけです。岩稜の梯子登りがまだまだ続きますが息を整えながら我慢します。ようやくトラバース道に取り付きます。もうすぐそこが北岳南東斜面のお花畑です。何人もがキタダケソウとのご対面を果たしています。


踏み込みで足場のキタダケソウは? なお、この青年は登山道から撮影中でOK!

 この時期は、トラバース道の先は雪渓で通行止めとされていることが多いのですが、今年は何の掲示もされていません。4人組の青年に追い付くと、雪渓についての質問を受けます。心配なら吊尾根分岐に戻ること、ダメもとで進むもよしとアドバイスにならない答えをします。この青年たちとは翌日の下山まで前後しますが、あいさつと礼儀を知ったいい青年たちでした。ただ一つだけ問題がありました。それは私のことを「おじさん。」と呼んだことです。まあ、本当のことだから仕方ないか。


ハクサンイチゲ(南東斜面)

 南東斜面ではキタダケソウは終期を迎え、ほとんどの花弁がしおれかかっていました。それに反してハクサンイチゲはちょうどいい開花の状態で、ミヤマオダマキも蕾を膨らませ、チョウノスケソウも見ごろを迎えようとしています。キタダケソウの植生がなくなるとシナノキンバイソウのお出ましです。ハクサンイチゲも黙ってはいません。今年のシナノキンバイソウとハクサンイチゲは特異と言えそうなほど広範囲に群れて咲いています。


シナノキンバイソウ (南東斜面)

 北岳山荘に着くとテント場上部はまだ雪で覆われていました。テントは3張りありましたが、もう乾いている場所はなかったので少しぐしょぐしょとなった地面にテントを張って、すぐさまテントに潜り込んだのでした。というのも、雨が降り続いていたからで、その雨よりも今夜の雷をしのげるかということのほうが心配と言えば心配でした。なお、北岳山荘で夕食をいただいたのですが、論評は差し控えます。本邦第二の高峰でテント泊の者にも分け隔てなく食事が提供されるということのありがたさを感謝すべきでしょう。


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