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北戸蔦別岳から幌尻岳を往復する 
(2015/ 6/14)


戸蔦別岳南斜面から 七ッ沼カールと幌尻岳


 2015年 6月14日 (2日目) 
2日目の行程 : 北戸蔦別岳〜戸蔦別岳〜幌尻岳〜北戸蔦別岳(泊)


七ッ沼カール

 目が覚めてヘッドライトでテントの中をチェックすると、テントのボトムに水滴がいっぱい付着し、銀マットの下は水で濡れ、斜面に設営したテントの低い方の隅には水がかなり溜まっている。これまで何度となく強風が吹き付ける降雨の中でテントを張って過ごしたが、これほどの水がテントの中に入ったことは一度もない。アライテント・エアライズ2のフライシートはしっかり防水処理し、テント本体の四隅にもシームコートを塗布してきた。どこに問題があったのか思いつかない。考えられるのは体からの蒸散のほか、傾斜斜面で低い方にテントを置いたことからテント本体がフライシートと干渉することとなったこと、雨の中びしょ濡れの衣類をテントの中に放置したことによる湿度の上昇などぐらいしかない。換気口は本体及びフライシートのものもしっかり口を閉じておいた。


七ッ沼カール カールバンドとガスに覆われる幌尻岳

 食事と身支度を済ませ幌尻岳に向かうことにする。気温は7℃、濃霧、西からの風が強い。雨衣上下を着用し、ゴアの防水手袋などで身を固める。視界はほとんど利かない。それでも今日一日の歩程は長くないので、雨が降らないだけでいいという気持ちで北戸蔦別岳頂上のテント場を出た。北戸蔦別岳の南斜面を下りて行くとほんの少し視界が利いて額平川へと広がる幌尻岳の裾が一瞬見ることができた。その後は再び黒い色をした霧の世界へ・・・。


肩から七ッ沼カール

 橄欖岩が露出した1881mから少し下ると幌尻山荘への分岐がある。分岐のアルミ製標識はひしゃげている。2012年の秋に来た時に石を組んで標識を固定させたが、そんなことでは吹き付ける強風に耐えられなかったようだ。帰路、もう一度石を積むことにする。鞍部へ下ってから戸蔦別岳に登る。そのころ、暗かったガスが白っぽくなってきたがまだ視界は利かない。戸蔦別岳の頂上にはミヤマキンバイがびっしりと咲いていた。しかし、それは以前の話だ。そのときも戸蔦別岳頂上のミヤマキンバイは登山靴で踏まれ土壌が後退し「禿頭」と化していた。ここで休憩する者が、ここで写真を撮る者が、ここでテントを張る者が踏み込んでしまうのだろう。その時にありったけの石を花園の周縁にサークル状に置いてきたが、今回見ると石は四散している。その原因は、ここでテントを張る者が石を使って張り綱を固定しているのだろう。非常時ならいざ知らず、そもそも、ここをテント場とする発想自体が信じられない。


幌尻岳

 テント場と言えば、北戸蔦別岳頂上付近に1張り分開削されている。この行為自体も許されるべきものではないと思う。酷いことだ。これが許されているから次のもう一つも許されると開削する愚か者が続くだろう。ヤオロマップ岳のテント場拡幅とエサオマントッタベツ岳からカムイエクウチカウシ山に進むとある1760mにもあらたにテント場が開削された。ヤオロマップ岳は札幌のツアー会社ということであるし、1760mも個人があるいは山のグループが行ったとは考えにくい。目先だけを考えた商業主義は後に禍根を残すだけだ。(一部始終は「現代版 日高山脈開拓物語」で)

 (個人的には自然保護主義者ではない。その点は曽野綾子氏の考え方に似ている。だから、日高の稜線の必要最小限のハイマツの処理には大賛成だ。今、ピパイロ岳の先1911mから1967峰に向けてレインウェアーを破らなくても済むような程度のハイマツの処理は、単独・年配の方が2004年に行ってくれていた。) 


北戸蔦別岳のミヤマキンバイ

 戸蔦別岳の頂上から斜面を下る。相変わらずガスで視界が利かない。もくもくとハイマツをかき分けてカールバンドへと向かうと、急に七ッ沼だけの展望が開けポッカリと見えてくる。それままさに夢のような出来事であった。足を止めてその神の仕業で開けた七ッ沼を飽かずに眺める。その後ガスは徐々に晴れていき、絶好の登山日和となった。素晴らしい展望がほしいままである。 


1881mで ナンブイヌナズナ

 登山道に雪はほとんど残っていない。唯一、肩から登って比較的緩やかな稜線が少し斜面になると形ばかりの雪が登山道を覆っているだけである。稜線の散歩を楽しんでいるとほどなくして誰もいない幌尻岳の頂上に着く。これで3度目の頂上である。幌尻岳からは上空の雲でカムイエクウチカウシ山は見えないが、春別岳、ナメワッカ岳、エサオマントッタベツ岳、札内岳などが見える。そろそろ幌尻岳を辞する時間となった。また来る機会があるのかもしれないし、(肉体的にも)もうこれが最後かもしれない。ほかの山にも登らないと・・・。


北戸蔦別岳頂上 十勝側斜面のテント場

 帰路、戸蔦別岳の土壌が露わとなっている周縁に石を並べ置いた。1881mのルート標識も石を組んで固定した。北戸蔦別岳頂上のテント場の崩れた石は明日テントを撤収してからやることにしよう。快晴となった日曜日の北戸蔦別岳頂上のテント場にはmy テントがポッツリとあった。今日で北海道の山登りは4日目で疲れているはずなのに、精神は興奮しているようで、なかなか寝付くことができなかった。明日の予定はピパイロ岳を往復した後下山だったが、実際には時間的に無理と判断し、1967峰までを往復することにした。携帯のアラームを午前3時に設定する。雨が降っても行く気でいる。 


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