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ホソバウルップソウ咲く赤岳〜小泉岳縦走
2004.6.27〜28 単独・テント泊



小泉岳のホソバウルップソウ

 北海道の山も夏山シーズンを迎え,大雪山にも花の季節がやってきた。恒例の業務終了後の出発も,日勝峠から三国トンネルに至り大雪湖から大雪山観光道路を銀泉台に向かうころには深夜になっていて,眠気をだましながらハンドルを握り,銀泉台ヒュッテ前駐車場で仮眠する。

 狭い車での仮眠はまんじりともしないが,午前4時ころから,多くの人が登山口へと向かって行く。目を石狩川流域に向けると,銀泉台の赤岳登山口はすでに標高が1,400mもあって,朝日の中に石狩岳方面の山々が雲海の中に浮かんでいる。


赤岳登山口 銀泉台ヒュッテの朝

 ヒュッテ前には山から引いた水飲み場があり,冷たい水がコンコンと流れていて,朝の洗顔で身が引き締まる思いがする。ぐずぐずしているうちに,時計は6時を回ってしまっている。前夜泊の登山者はすでになく,最後の人となって登山届を済まし,テントなどで重くなったザックを担ぎ,林道跡を経て登山道へと入る。

 


板垣新道上部

 登山口から新緑の木々の中を越えるとすぐ雪渓となり,第一花苑,第二花苑とさらに大きな雪渓が続いていて,緑は急傾斜の雪渓が融けたわずかなところにしかなく,咲いている花はショウジョウバカマとエゾコザクラだけである。

 第一花苑を抜けると腰を下すのにちょうどいい平地があり,汗をぬぐっていると,80歳の男性をリーダーとした旭川の山登りのメンバーが到着する。メンバー最年少?の52歳のレディにみかんをいただき,ひととき山談義に花を咲かせる。

 第二花苑も雪渓に覆われていて,緑の兆しはなく,やっと駒草平に登ってコマクサに出会う。駒草平は文字どおりコマクサが咲くところではあるが,花期に若干早い。


駒草平のコマクサ

 駒草平からは東岳を左手に見ながら稜線状の登山道を歩き,赤岳に至る。赤岳からいったん下りながら小泉岳に向かうと,今回の山行の目的の花の一つであるホソバノウルップソウが清楚な花を咲かせているのが見えてくる。今年は,昨年より1週間ほど開花が遅いようで,3分咲きの状態である。


小泉岳〜緑岳稜線 ホソバウルップソウ

 小泉分岐から緑岳方面に小泉岳を目指すが,どこが頂上なのか分からないほど傾斜がない。エゾオヤマノエンドウとホソバノウルップソウの紫色が地表を飾っている。

 緑岳との鞍部を板垣新道に下りるが,チョウノスケソウは蕾も見せることなく,わずかにエゾコザクラやハクサンイチゲが咲いているだけである。

 ヤンベタップ川の源流となる板垣新道の雪渓は谷全体を覆い,エゾコザクラの大群落は未だ雪渓の下で春を待っている状態である。キバナシャクナゲは板垣新道の脇や雪渓の周囲で今が盛りとばかりに咲き誇っている。小白雲岳を背景にして咲く様は見ごたえがあって,立ち去りがたい風景である。


白雲岳 板垣新道のキバナシャクナゲ 

 白雲岳避難小屋は,6月26日の今日が山開きとのことで,登山客を迎える準備で忙しい。キャンプ場には人はない。テント場は全体がぬかるんでいるが,ましな場所を選んでテントを張り,雪渓を源とする水場で顔を洗って,その水の冷たさに驚く。

 水場の流れにビールやトマトなどの野菜を置き,夕食時の楽しみとして,高根ヶ原方面に向かい花の状況を確かめる。小屋からほどなくしてすぐ雪渓となり,水もわずかに流れる程度で,昨年見たエゾコザクラやヨツバシオガマなどの姿はない。


雪渓から流れる水でぬかるんでいる白雲岳キャンプ指定地

 稜線から緑岳の下方を見下ろすと,雪渓の上でヒグマが2頭じゃれあうようにして遊んでいる。その下方の離れた雪渓上をあるく人が一人いるが,知らないということは幸せなことである。

 高根ヶ原から軽装の女性が一人歩いてくるのでルートを聞くと,三笠新道を上がって来たという。三笠新道はヒグマの出没が恒常的なところであり,ヒグマの気配を聞くと,あっけらかんとして,あちこちに糞が落ちており足跡もたくさんあってヒグマの気配は濃厚であると答えるが,たいしたものである。


白雲岳避難小屋

 キャンプ場に戻ってひととき午睡を楽しんで目を覚ますと,周囲には多くのテントが張られていた。前夜の避難小屋泊まりの人は,寒さでなかなかねら寝なかったというが,テントの中は快適至極であり,爽やかな朝を迎える。

 ときおり濃い霧がかかる中を,昨日のルートをトーレスして銀泉台に向かう。第二花苑では,高根ヶ原で会った女性が登ってくるのが見える。昨日も遅くに下っているはずなのに,今日もこんなに遅く登ってきて,白雲岳まで行くというから,またまた驚きである。


緑岳のイワウメ

 銀泉台ヒュッテでのんびりと昼食を摂った後,層雲峡に向かう。温泉に浸かってゆっくり筋肉をほぐすが,しばらく振りに心身を十分解放した満足の行く山行であった。


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