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前穂高岳〜奥穂高岳〜大キレット〜槍ヶ岳/テント泊縦走(2日目)
2013/ 9/20〜22


飛騨泣き〜北穂高岳 奥に大キレット〜槍ヶ岳 06:54


 9月21日 (2日目)  


穂高岳山荘テント場から 御来迎 05:38

 食事が3回にも分けられるほどの混雑だった穂高岳山荘の喧騒とは縁のない、テントでの睡眠は快適そのもので、夜半にいったん目覚めたものの、9時間の睡眠は体力を十分に回復してくれている。今回のテント泊での睡眠のための装備は、新調して初めて使うサーマレスト(Thermarest)のエアーマットWomen's ProLite Plusである。女性用として販売されている物で、男性用より短いが、R値が4.6あるし、厚みがあるので岩場のテント場では小石などが背中に当たることを軽減できる(はず)。R値が高いから、シュラフはイスカのエア 280Xを持った。なによりよく寝ることができたのが幸いだった。

 


穂高岳山荘テント場の朝 05:38

 御来迎を待ってテントの撤収を始めるころには、周囲のテン泊者は次々に出立し、隣の単独の女性は1時間も前に涸沢岳に向け登って行った。今日は涸沢岳〜北穂高岳〜飛騨泣き〜大キレット〜南岳を経て槍ヶ岳までの8時間を超えるコースである。おまけにテント泊。出遅れ感がないわけではないが、快晴無風の天候が快適な稜線漫歩を約束してくれている。


my テントと奥穂高岳 05:38

 穂高岳山荘から奥穂高岳への取付きはすぐの距離にある。小屋の宿泊者の多くは奥穂高岳へと向かって行く。我先に、なのか、グループだからなのかは知らないが、急斜面の岩場を数珠つなぎで登って行く。落石・落人(?)は怖くないのだろう。(9月22日に↓この場所で落石により頭部を負傷した人があったとか。)と、人のことはさておき、ヘルメットを着用し涸沢岳に向かう。


午前6時5分の奥穂高岳取付き 06:05

 意外とサクサク歩けるじゃないか、と涸沢岳の頂上まで20分。しかし、その先は2012年に槍ヶ岳から歩いてきたコースなのにまったく身に覚えのない岩場の慎重に歩かなければならないところだった。(たぶん、昨年は緊張のあまり歩くのに集中して周りの景色が見えなかったのだろう。)D沢のコルへはこんなに急降下しなければならなかったのだろうか、涸沢槍なんてあったのだろうかなどと、いちいち感心しながら南稜を目指す。


最低コル?のトウヤクリンドウ(07:13)

 最低コルで初秋の花の残滓をカメラに収めていると、登山道整備のボランティア男性2人が下りてくる。このコースも、岩場ビギナー(の私)にとっては、鎖や梯子やさらにはペンキマークがなければ通過できないのが真実である。北アルプスの岩稜稜線を歩きましたと言っても、それは歩かせてもらったということと同義語である。この男性2人も、ここまでの点検補修などでずいぶんと疲れたのだろう。少し岩場の斜面を登ってから腰を下ろした。


南峰 08:05

 トウヤクリンドウに別れを告げて、南稜に向かう。南峰に近づくと西側の厳しい斜面が目に入る。昨年、こんなところを下りたのだろうか、というほどのところである。(実際に取り付いてしまえば、3点確保をきっちり行うことで難なく通過できた。〜個人の感想)すれ違う人も、後方から続く人もなかったのでマイペースがよかった。どうにか南峰を越えて北峰へ。北穂高岳北峰には多くの人が休憩中である。


北穂高岳 08:52

 滅多なことには山での自画像は残さないが、北峰で憧れの槍ヶ岳を背にヘルメットを着用した雄姿を収めたく、パチリと一枚お願いした。北峰をほんの少し下ると誉れ高い北穂高小屋で、若者が多く休んでいる。この時間(08:55)だから、涸沢から登ってきた人たちなのだろう。休憩している人たちは動く気配がない。ということで、飛騨泣きに向かって小屋からすぐ始まる急斜面を下りる。


穂高山荘のお隣さんを追い越す 10:17

 北穂高小屋からの下りはそうでもなかったが、飛騨泣きはやはり濡れているときは危なくて泣くだろうと思わせるところだった。こんなところを登ったという記憶は全くないが、そこを下りて行く。行き交う人も多くなり、声を出して譲り合いながら通過する。ようやくA沢コルで休憩かとも思ったが、体調万全、気力充実なので休むことなく岩場に取り付く。ナイフリッジの稜線を前にして、穂高山荘のテン場でお隣だった女性を捉える。最低コルで大キレットを見上げ、意欲がますます湧いてくる。先行者からルートが分からないと声が掛かる。岡目八目、それに背負っているオスプレイのクレセントシリーズのザック(今回はosprey crecsent 50)は、頭がザックに干渉しないようにボールを半分に割ったような窪みがザックに設けられているから、急斜面岩とにらめっこしていても容易に上を見上げることができるので、右、左と声を掛ける。


大喰岳からの下りで 飛騨乗越 槍ヶ岳 14:15

 その後もしばらく慎重に岩稜帯を歩きポコッと展望の利くシシバナの手前に出る。青年が「いやぁ、最高の見晴ですね。」と声を掛けてくる。「今日はどうするの。」というと、「日帰りで南岳往復なんです。風景を撮りたかったので。」とのこと。稜線を南に向かって歩くのにはまだ自信がないという。すぐ先の南岳小屋で昼食とする。昼食と言ってもごく簡便な全粒粉の食パンとトマトをかじるだけ。南岳新道から青年が登ってきた。大きなザックにカメラの機材がいっぱい入っているという。「槍ヶ岳のテント場で是非泊まりたいが、この時間(12:00)では満杯だろうから、今日はここで泊まって明日早くにテント場を確保したい。」と、賢い選択。
 南岳のなだらかな山容に、この先はルンルン気分の楽ちんコースだろうと思っていたのが間違い。2986m、中岳、大喰、飛騨乗越からの登りと、100m内外の上り下りが結構体に堪える。と言うのも、一縷の望みをかけて、槍ヶ岳のテント場を確保したい一心からのことだったのだが、3連休の中日にそのような幸運が訪れるはずもない。小屋に着くと、常に先行していた青年が、「とっくに満杯になっていたそうだ。」と悲しい知らせをくれる。2人組のテントを背負った青年たちは「明日奥穂高岳まで歩くのですが、どうしようか迷っています。」と言う。「テントにこだわるのであれば殺生ヒュッテに下りる。そして明日登り返して槍ヶ岳に登るのはどうか。」とサゼッションする。というのも、槍ヶ岳にはとてつもなく大勢の人が取付いていて、大渋滞となっていたからであった。今日は、早く殺生ヒュッテに下りて体を休めてやるに限る。


殺生ヒュッテのテント場 槍ヶ岳

 稜線から見る殺生ヒュッテのテント場も多くのテントで埋まっている。そそくさと稜線からヒュッテに向かって下りて行く。上から目星を付けていたスペースを確保して素早くテントを設営し、ビールタイム、日本酒タイムを楽しむ。今日は縦走の最後の日、「いやぁ、飲みました。」2人組の青年も隣にテントを張る。ファイントラックのツェルトの同輩男性は、上は風が通ってツェルトが持たないのでと言って張り直しに来た。
 小屋に追加のビールを仕入れに行くと、岩のすき間に差し込むように小さなテントが張られている。ユニークなやり方をしている青年がいたので声を掛ける。その青年は、小屋から戻ってくるのを待っていてくれ「おつまみにチーズを食べてください。」と2個もくれた。
 夜の帳が下りる。あまりの心地よさに今夜も熟睡。ただ、明日は槍ヶ岳に登ることから午前4時起床(実際は目覚めたら行動開始)と決めていた。


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