[HOME] [1日目]

鳳凰三山 薬師岳
(2011/ 9/ 9〜10)

2日目


稜線から


 9月10日(土) 快晴/無風 

 昨夕は、午前3時に目覚ましをセットして早々に寝ることにしました。起きてテントの換気口から空を見ると星がキラキラと輝いています。南御室小屋から薬師岳までは1時間30分の行程ですから、午前4時に出発することとし、身支度を整えます。外に出しておいた温度計は10度を指しています。隣のテントや韓国の夫婦のテントには灯りが点いています。サブザックにガスコンロやコーヒーを入れて出発します。薬師岳の頂上で夜明けを迎え、コーヒーを淹れる算段です。


暗闇を歩く

 午前4時、南御室小屋はまだ目覚めていません。小屋裏からすぐ急登が始まり、真っ暗な中うっそうとした樹林帯を縫って歩きます。こんなとき、持つべきものは信頼のおける友ならぬ、大光量のヘッドランプです。2003年に北海道日高山系ペテガリ岳東尾根を深夜下山しているときに、電池が切れてヘッドランプの電池を交換した際、手元が滑って電池を草むらに落とし(他に光源がなく)見つけられなかったアクシデントを教訓に、それ以来ランプは2つ持つようにしているのです。闇を照らす一条の光は心が救われ、先への希望が湧いてきます。


黎明

 森林限界が近づくと急に空が開けます。さらに登ると黎明の富士が聳えています。思いもかけない荘厳な富士に身が引き締まる感じがします。神が宿る山、霊峰富士を拝んで先に進みます。ようやく空が明けはじめようとしていますが、山々はまだ闇に包まれています。富士山の中腹に山小屋の灯りが見えます。北岳山荘も灯りが燈っています。北岳肩ノ小屋から頂上に掛けての稜線にヘッドランプの灯りが動いています。点滅モードの光が見えました。自身の存在をこちらの稜線に知らせたのでしょうか。すぐに通常のモードに変わりました。


佇む登山者

 薬師小屋手前の岩場のてっぺんに若者2人が登っています。薬師小屋が近くなるとかまどの匂いがします。もうすぐ5時になるから食事の準備の真っ最中なんでしょう。小屋の前には多くの人が出ています。「夜叉神から登ってきたのですか。」と驚きの顔で聞かれますが、そんな脚力はありません。薬師岳は小屋からすぐです。薬師岳の頂上で御来光を待ちます。


御来光


北岳と間ノ岳

 夜が明けると北岳に白峰三山に光が当たり、徐々に帳を下ろしていきます。北岳や間ノ岳や農鳥岳がすっきりと姿を現してきました。これほどすっきりした白峰三山を見たことがありません。1時間近くも薬師岳に佇んでいました。このころになると、薬師小屋を出発した人が稜線を歩くようになりました。そろそろテント場に戻ろうと岩場を伝って下りようとすると、岩陰に咲き残りのタカネビランジが1輪ありました。たった一輪ですが千金の値のある一輪です。


いつかは歩きたい嶺朋ルート

 南薬師小屋に戻ると、小屋では布団干しや外のトイレの掃除が始まっています。トイレ掃除は女性従業員の仕事のようです。話しながら掃除をしていますが、中国語のようです。この人たちは留学生で、夏休みを利用したアルバイトをしているとのことでした。その後、トイレを使わせてもらいましたが、とてもきれいに手入れされています。(ただし、便座カバーを「便器をこすった」ブラシで濡らさないでね。)


タカネビランジ

 木陰となったテント場からたっぷりと朝の陽ざしを浴びた南御室小屋を眺めます。爽やかな空気が流れています。小屋の煙突からは煙がたなびいますが、従業員である留学生たちの朝餉が始まっているのでしょうか。ゆっくり出発しようと思います。コーヒーを淹れてまったりしていると夜叉神方向から男性が到着です。午前4時40分に出発して3時間で到着とのことです。これから地蔵岳に行くと言うので、「鳳凰小屋泊まりですか。」と聞くと、地蔵岳まで行って日帰りするとのことでした。ちょっとちょっと!片道9時間ほどのコースなんですが。ちなみにこの方は、中高年に属すると思われる方だったのです。


南御室小屋

 午前8時にもなろうというのに、標高2、420mにあるテント場の温度は早朝と同じ10度のままです。そういえば水場の水は冷え切っているし、今年は既に初霜を見ているということですから、南アルプスとはいってももう秋を迎えようとする時期ですから、ひとたび天気が崩れたときの寒さ対策もしっかりしておく必要がありそうです。今回は、お米を炊くためにバーナーを2つ、ガスカートリッジも2つ持ってきたのですが、うち一つは調子が悪くガスカートリッジからガスが出てきませんでした。これがカートリッジ一つなら困ったことになりますが、パッキングの前にきちんとした点検を怠ってはいけないという警告となりました。


 9時を過ぎてしまいました。そろそろ腰を上げないと夕方の中央高速の渋滞にはまってしまいます。苺平まではすれ違う人も少なかったのですが、焼け跡あたりからは多くの人が登ってきます。山ガールも山ボーイも多いのですが、単独の女性、年配の女性が多いのもこの山域の特徴のようです。ルート上に小屋が3つもあって、それぞれの目的、体力に応じて山小屋を選ぶことができ眺望も素晴らしいのですから、下山したときに平日にもかかわらず駐車場が車で一杯だったことが肯けます。


[HOME] [1日目]