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テントを担いで・・・!
白馬岳〜不帰キレット〜五竜岳〜鹿島槍ヶ岳〜針ノ木岳
 

(2015/ 7/31〜8/ 5)


剱岳を見る稜線で 


 2015年 8月 4日 (5日目の1) 

5日目の行程 : 種池山荘04:43〜06:40新越山荘07:00〜07:35鳴沢岳07:38〜08:24赤沢岳08:39〜
10:15スバリ岳10:24〜11:08針ノ木岳11:23〜12:02針ノ木小屋(テント泊)


種池山荘

 早着後の飲酒でダレた体に鞭打って夜の明けやらぬ早いうちに起き出して当面のエネルギー源を食し、雨露で濡れたテントを畳む。昨日、針ノ木岳のシコタンソウの画像を見せてくれたお嬢様はまだお目覚めではないようだ。テント場の脇から登山道に入り針ノ木岳への稜線へと進む。もうヘッデンは要らない時刻となっている。


登山道の花 イブキジャコウソウ

 それほど高嶺の花を期待していたわけではないが、飽きが来ない程度にそこそこの花を楽しむことができる。特に稜線東側の道にイブキジャコウソウが元気に出迎えてくれる(西斜面はハイマツ等のブッシュ)。種池山荘から新越山荘に向かう稜線右手には剱岳がドッドーンと聳えている。なんとも贅沢な眺望が得られている。進む稜線の先に立ち止まったままの人がいる。双眼鏡で剱岳を見ているのかと思ったら・・・。


熊ちゃん

 「あの尾根に熊がいますよ。のぞいてみますか。」と双眼鏡を貸してくれた。肉眼でもはっきり見えた熊が風衝草原の斜面で草を食んでいる。見るところ100%の草原であり、ヒグマの存在より紅色の絶滅危惧種の花の植生地ではないかとの興味の方が大きかった。直観的にはここは紅色の花の有望地ではあるが、ここが高層の風衝草原(つまり遅くまで雪田が残るところであり、ゆえに熊も採餌の場所としている環境にある草原)であるということは、紅色の花を探すということは熊ちゃんとの遭遇も十分に念頭に置かなければならないということになる。


秘密の紅色の花 本邦の風衝草原にある自生地で (2012年)

 この紅色の花は今だ全国で200株ほど自生しているとも言われている。よほどのピンポイントの情報かよほどの偶然の出逢いでなければ通常はお目にかかることは99.9%不可能と言っても過言ではなかろうか。リスクを冒してこの場所を探索するのも一興かと思うが、チャレンジしてはどうだろうか。3年前の私なら行ってみたかも・・・。


新越山荘

 そのような不埒な考えを払しょくし、岩小屋沢岳からの先のピークを越えると新越山荘が見えてくる。これまで新越山荘にはいかなる興味も持たず、どのような小屋なのかチェックをしたことはなかったが、こじんまりとした綺麗な小屋であった。小屋前のベンチで栄養補給する。小屋の方からは、この先の鳴沢岳やスバリ岳のガレ場が危険なので注意して進んでくださいとのアドバイスを受ける。そんなに大変なところがあるのかと何の認識も持たず来たところであったが、不注意がもたらす重大事故の発生があってもなにもおかしくない岩場の下りであった。


赤沢岳〜スバリ岳〜針ノ木岳〜針ノ木峠

 鳴沢岳も、赤沢岳も、スバリ岳も細かい岩屑の斜面にはコマクサの植生が見られる。そして漏れなく登山者が岩屑の斜面に入り込んだ足跡があった。惜しいことにコマクサが咲く斜面はそれほどの急斜面ではないことから、コマクサを撮影するために入り込んだとしても滑落する恐れがないことであった。無思慮にコマクサの植生地に入り込む人間を自然界が咎める方法としては「滑落」しかないなどと夢想してはいけないか。


スバリ岳〜針ノ木岳〜針ノ木峠

 鳴沢岳南斜面の地下には針ノ木隧道が掘られ黒部ダムに通じている。黒部湖を挟んで立山の中腹に向かう立山ロープウェイとその中腹にある建物が見える。よくぞこのようなところに、それもはるか昔に工事を行ったものだと、日本の土木技術の素晴らしさを思わずにはいられない。世界第二位の経済大国としての地位を得たとしても、今だmade in Japanの炊飯ジャーやパンパースを爆買いせざるを得ないお隣の大国に比べ、一人一人の技術者がその道を地道にまっしぐらに進んでいったことによる礎がこのようなものを完成させたのだろう。高瀬ダムをモチーフに書かれた曽野綾子著の「湖水誕生」を読むと、口数の少ない市井の人たちがこの日本を支えているということがよく分かるのであった。間もなくリニア中央新幹線 トンネルの工事が南アルプスで開始されるが、技術者は蓄積された土木技術を再びいかんなく発揮されてるだろう。鳴沢岳から赤沢岳へと向かう。 


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