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3日目

ピパイロ岳〜1967峰〜戸蔦別岳〜七ツ沼縦走
2004/ 7/15〜18


戸蔦別岳

 3日目(7月17日・

  夜半から風雨が強い。3時間ほどまどろんだ午後10時過ぎ,テントには稜線を越えてきた風が吹きつけ,ときおり雨がばらばらとテントを叩きつける。何度も目を覚ますが風雨は止まず,幌尻岳頂上へ向かうことは断念せざるを得ない。それよりも,ここからまた2日間の道のりを無事にこなし,登山口へ着くことができるのかが心配である。

  テントを撤収して,幌尻岳への予定の出発時刻としていた同じ時刻である5時に出発し,戸蔦別岳へと向かう。(05:15)雨に濡れたテントや、神聖な七ッ沼には汚物は残したくないとの気持ちから携帯トイレを使った「大」を持ちかえることで荷物が重くなって肩にずっしりくる。雨は小康状態となったものの,七ッ沼カールから稜線へ出る登山道はガスで見通しがきかず,ましてやその他の風景はまったく見えない。まだテントから出てこない氏に声をかけて別れを告げザックを担ぐが,これから先の天候,登山道の状況,体力を思うとがんばって無事に今日のテント場まで行かなくてはならないとの緊張感,あるいは一種の恐怖感が体中を走る。


1967峰

  カールから稜線に登る道は急斜面の上浮石が多くて険しく,まだ目覚めていない早朝の体には辛い。ウサギギクやミヤマキンバイの黄色,ミヤマアズマギクのウスムラサキ色の花など,早朝の雨に濡れた鮮やかな高山植物を見やりながらゆっくりと稜線への道をたどる。稜線に出て,ザックを下して休憩する。脂肪を燃やしエネルギーとするには,炭水化物の摂取が欠かせないことから,食欲のない胃に朝食のパンを押し込むようにして流す。(05:50) 

 稜線から戸蔦別岳への登りにさしかかると,日高側からのガスが風に押されて流されてきて急に寒さを感じるようになる。頂上(06:40)を下るようになると寒さがまして指先や耳が痛くなるので,冬用の手袋に変えて指を保護するとともに,耳を抑えながら寒さをしのぐ。


ミヤマアズマギクとチングルマ

  幌尻山荘分岐で道を下ってしまうが,すぐ間違いに気付き本来の走路を確保して北戸蔦別岳に至る。(08:14)ここからはひたすら元来た道をたどって,予定の1967峰先のテント場を目指す。途中の登山道を覆うハイマツや潅木の枝が要所要所切り払われていて,切り口が新しい。ピパイロでテントを張っていた地元の方が切り払ってくれたものと思うが,このような無償の行為に支えられてこの登山道を安全に歩くことができている。相変わらずの濃霧と風の中前へ前へと進み,くの字のコブ(10:35)を抜け,七ッ沼カールを出発して6時間20分で1967峰に至る。(11:35)

  頂上は登山道から少し登った所にあり,その先にしっかりした踏み跡があるので,どこかで合流するだろうと思って下ると様子がおかしい。その道は国境稜線をルベシベ山へとたどる道であり,間違いに気付く。1967峰を下り,水場のコルのテント場,1793mのコブを通って初日のテント場である1911m手前でデポしていた水を回収する。本来は,1967峰のコルでの幕営予定であったが,天気予報は夜半から降雨と予想していて翌朝も雨が残ることから,体力の続く限り距離を稼ぐことに変更して先に進む。


ミヤマオダマキ

  1911mで休憩し,1967峰とピパイロ岳が抱える十ノ沢を眺める。沢には若干の雪渓が残り,沢水が轟々と音を立てて流れているのが聞こえてくる。暑い夏の新潟の清津峡,水も持たず何の準備もなしに歩き,増水した沢を渡り,ほうほうの体で着いた夜半の集落,懐中電灯もなく歩いた真っ暗なトンネル,かぶりついた西瓜が思い出される。

 1911mからピパイロの間のツクモグサの植生をあらためてじっくり確認しながら,ピパイロ岳に至る。(14:00)今夜の幕営地をピパイロ岳先の水場のコルと決め,ピパイロ岳をすぐ出立する。途中,2組のグループに会うが,幕営地の状況を知らない様子なので,先に会った2人に1967峰を,あとの2人に1911mのテン場を教える。天気予報からするとピパイロ頂上での幕営は風に吹かれるからテントを張らないほうがいいとアドバイスする。


チングルマ

 水場のコルの幕営地の様子を聞くと,2人がテントを張っているというが,テントが一つなのか二つなのかは分かっていなかった。ピパイロ岳を下ると,登山道の様相はすっかり変わり,ハイマツからダケガンバ,潅木へと変わっていき,展望も利かなくなる。水場のコルに着く(15:30)と登山道の脇の高台にテンとが一張り張られ2人が休んでいる。今夜は悪天候が予想され,登山道は雨水の通り道となることから,傍にテントを張らせてほしいと言うと,「張ることはできるが登山道が空いているじゃないか。」としゃあしゃあとつれない返事が帰ってくる。冷たい人たちだ。

 そのような態度を示しておきながら,これから自分たちが行こうとするコースの状況を知ろうと,幌尻のピストンかと幌尻岳までの状況を聞かれるが,ごめん蒙るとの感情で「そうだが。」と答え,それ以上の話しはやんわりお断りした。男2人連れながらいつまでも大声で話をしており,気になってなかなか睡眠に至らない。


七ッ沼カールのチングルマ

  登山道に少しのスペースを残し,テントを張って早々に横になったが,案の定,夜半から外は戸蔦別川側をごうごうと音を立てて風が通り抜ける。テントは潅木に囲まれて風が直接当たらないことからか,小鳥が近くに集まり夜なのにさえずっている。雨はバラバラっと何度もなんどもテントをたたく。


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