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北の花・花・花 大平山 (2013)
(2015/ 6/12)


手前からエゾノハクサンイチゲ・ミヤマアズマギク・オオヒラタンポポ・ミヤマオダマキ(右奥)エゾノハクサンイチゲ


 5月31日(金) 


エゾグンナイフウロ

 大平山(おびらやま)は、標高1190.7mの山である。自然保護法に基づき大平山自然環境保全地域に指定されている。島牧村の海岸沿いの道路から工事が途中で放棄さた道道836号線島牧美利河線の河鹿トンネルを抜けると、そこで林道は行き止まりとなる。2013年に大平山に登ったときは河鹿トンネル先に巨岩が落ち、さらなる落石のおそれで通行禁止されていたものが解除されたばかりのときであった。


第一ピークから第二ピークを見る

 前夜は、蘭越から海岸に出て寿都町まで行き、道の駅「みなと〜まれ寿都」で車中泊した。うかうかしていると漁港の岸壁から落ちそうなところにある道の駅の駐車場には、旅の人の車が多く停まっている。道の駅での夜明けは眩しく素晴らしいものだった。弁慶岬に向かって走ると一条のガスの帯が浮かんでいるが、天気の基調は晴れそのものであった。


エゾグンナイフウロ・ミヤマキンバイと狩場山

 海岸沿いの快適な雷電国道を島牧村役場先から道道に別れ、登山口駐車場を目指す。この道道は道道静内中札内線と同様にまるであぶく銭だから惜しげもなく使うという無法図な北海道では特権的階級を占めている(であろう)人たちにより計画された無駄極まりないものであるが、それでもこれらの道道(廃道)がなければアプローチが極めて不便になるのでありがたく使わせてもらっている。(元東京都知事の石原新太郎氏は近著「東京革命」でこのような税金の使い道について厳しく諌めているが北の大地の人にはその声は届かないだろう。)


ミヤマオダマキ

 入山届を記入し樹林下の沢形地形を登って行く。ブナ林を突っ切って尾根を乗っ越すまでは蚊やブユなどの虫が非常に多いので強力な蚊取り線香に火を付け、ザックに括りつける。森林香はもともとは林業作業用に使われていたようだが、最近では秀岳荘でも都内のきちんとした登山用品店では売られている。(コジマ)エンレイソウ、サンカヨウ、大きな花弁の紫のスミレ、種子を持ったカタクリ、シラネアオイなどに見送られながら尾根を越えると、一気に展望が開け、ウツギやエゾセンテイカ、ミヤバキンバイ、エゾグンナイフウロなどがどっさりと咲いている。シロウマアサツキはおいしそうで、エゾグンナイフウロはとりわけきれいであった。


エゾノハクサンイチゲとミヤマオダマキ

 第一ピーク(810m)に着く。ここには唯一のスカシユリが咲いていた場所だが、もうその姿はない。チョウノスケソウやサクラソウモドキも、そして昔はアツモリソウも咲いていたようだが、盗掘者がこれらの花を盗り尽くしたのだろう。崕山や同じく北海道の○×山のように官民挙げて希少な野生植物の保護に取り組んでいないとこのようなことになってしまう。このうちもう数株も残っていないだろうと言われている○×山の珍しい花が実はどっさり生き残っている場所があって、そこでは時期になると警察官が張り込んで警戒し盗掘者の検挙に努めているが、そのようなことが行われているのは例外中の例外と見るべきであろう。


ミヤマアズマギク・エゾノハクサンイチゲ・ミヤマオダマキ

 第一ピークからいったん下って、東側斜面の花々を眺めながら鞍部から再び登ると石灰岩の斜面の岩場を歩くようになる。そこに咲く花と言えば、その光景は圧巻としか言いようがないし、これまでこのようなお花畑を見たことはない。この付近はミヤマオダマキ、エゾノハクサンイチゲ、ミヤマアズマギクなどが群生している模様はまさに天上のお花畑である。そろそろオオヒラユスユキソウが咲く時期であろうが、今回もこれまでも見かけなかった。


ミヤマオダマキとエゾノハクサンイチゲ

 ここを登り詰めるとミヤマキンバイの大群落、そしてシラネアオイ、尽きることのないエゾノハクサンイチゲ。草原となっている東側斜面に付けられているトレイルはこれらの花を踏まないように歩くのに困るほどである。石灰岩のガレが少なくて土壌が多い草原には草木が密生していていい雰囲気になるが、どれほど目を凝らしても気になる花はなかった。このような場所は多量の雨水を含むと雨烈が見られ次第に崩壊へと向かって行くのだろう。そのような場所をこの山を登るたびに見かける。


大平山とミヤマアズマギク

 801mから下るときに1回藪を漕ぐが、第二ピークの1109mから大平山へ登るときに猛烈な藪を漕ぐ。今回は藪の中にザイルが張られている。ルートのロストを防止するためのものだろう。いったん藪を抜けて雪田に出る。雪田の先の藪に突っ込む手掛かりがない。なんどか雪田をウロウロしたが分からないので、いったん来た方向に戻って見渡すと雪田とハイマツの境の奥に小さな赤テープが見つかった。ハイマツの藪を漕いでもう一度次の雪田を登るように進むとその先は、たった今咲いたばかりのカタクリやシラネアオイ、ハクサンチドリなどがオンパレードとなる。


大平山頂上近くのシラネアオイ

 大平山の頂上でお腹を満たし下山に取り掛かる。いつも思うのだが、このような素晴らしい花の山を後にするのは何とも惜しい。下る途中も花々を眺めつつ確かめるように歩く。810mのピークに向かうと、軽装の単独男性が休んでいる。北海道百名山をやっているとのことであった。花には興味がないようだった。今回、大平山で出会った人はこの人一人であった。


大平山頂上近くのカタクリ

 お花畑を過ぎると、もうただ標高を下げるだけなのでスピードを出す。とたんに汗まみれになって、温泉が待ち遠しい。宮内(ぐうない)温泉は鄙びた温泉である。建物も温泉の浴室自体も年代を感じるが温泉そのものはいい感じがする。湯冷めしにくい。車の窓を開けて海岸線に向けて走るとなんとも清々しくて気持ちがいい。国道に出るとすぐにあるセイコーマートで一休みする。 


1109mからで810mへ下る 遠くに狩場山を見る

 このあとは、高速道路に乗るため一途にハンドルを握り、日高町に向かう。平日の昼間の一般道も然り、高速道路も然り車の往来が少なく快適なドライブを楽しむ。今夜の宿営地の道の駅樹海ロードに着くと明日から3日間の食料を買い揃える。日高の天候はあまり芳しくないようだが、中止することまでのことはなさそうだ。車中でビールと日本酒を飲むと奈落に沈む。


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