[HOME]

ツアー登山が「秘密の花園」大ドッケのフクジュソウ(福寿草)群落地に入ってくる
(2013)


 大ドッケのフクジュソウ群落地は登山雑誌「山と渓谷」が記事にし、これがネット上で伝播することとなったことから、近年多くの人がこの地を訪れることとなった。情報過疎の時代にはこのような情報に接することは難しかったが、その恩恵に存分に与ることは山登りの範囲を大きく広げてくれるものであり、ありがたいと言える。

 ただ、何事も行き過ぎると弊害が大きいばかりではなく、取り返しのつかないことになりかねない。それがこの秘密の花園で起きようとしている。それは、ガイドが経営するツアー登山会社がバスを仕立てて大勢の客を送り込もうとしていることだ。

 この秘密の花園は、斜度のきつい崩壊地を越え沢を遡行してようやくたどり着くことができる場所にあり、道標はなくテープ類もほとんどない。ここでは遭難事故も多発し山岳救助隊の警察官が登山口で指導していたことがある。そのようなところを苦労して登ると、そこに素晴らしいフクジュソウの群落地が広がっているというわけだが、ここを登る人と言えば単独かせいぜい数人のパーティであった。


昔、こんな風景が大ドッケにも広がっていたっけ、と言うようなことがないように

 初めのころは人々のマナーもよかったが、この地が世に知られるにしたがって入山者が増え、入山者が増えるにつれ無思慮(不届き者)の者も多くなり、フクジュソウが足下にあってもお構いなく腰を下ろし、甚だしきは群落の中に入ってカメラを構える者も珍しくなくなっている。

 ・・・と、そんなことはどこでもあるような光景だが、驚いたことに2013年、ついにここに登山ツアーが入ることとなった。バスを仕立てて最大18名様が秘密の花園に行くという。それがフクジュソウ群落地にどのような影響をもたらすかは、2回にわたるツアーが終わってみなければ分からない。

 このフクジュソウ群落地は個人所有のものであり、フクジュソウもその方の所有物であるから、所有者が立ち入りを認めれば、そこがどうなろうと第3者には関係のないことである。なお、このツアー会社は、当初「埼玉県農林公社」の許諾を得たと言ったが、「フクジュソウが咲く山林は個人の持ち物であるはずだ。」と問うと、数時間経ってから「埼玉県農林公社」に入山の許諾を求めるために連絡したが、最終的には山林所有者から直接入山を認めてもらった。」と言質が変遷している。

 この地の所有者は以前、道を整備するなどして秘密の花園への訪問者を増やすことを考えた時期もあったようだ。しかし、遠くからこのフクジュソウを見に来た方から、そんなことをしたらフクジュソウがダメになってしまうと言われた、と言ってやめた経緯がある。

 このツアー登山会社は、客に、「登山に使用する靴は登山口までは履かせない、登山口でようやく泥の付いてない登山靴を履かせるし、トレッキングポールも使用をひかえてもらう」ほど、自然保護に意を用いているとのことである。

 しかし、そのようなことを真に受けるような参加者ばかりではないだろう。自然の猛威に晒されても先に進んで痛ましい結果になったのがトムラウシ山の大量遭難事故である。このまま突き進んでしまったらとんでもないことになると分かっていても、そうするしかないのがガイドの立場だったのではないだろうか。たかだか花如きでガイドにエラそうには言われたくない、と「金」を払った「神様」は言うだろう。

 客の安全を慮り「お前、死ぬぞ」と怒鳴りつけてでも無事に下山させられるのなら、高山植物、珍しい植物も商売の糧にするツアー登山会社だから「お前、花踏んでるぞ」と言って次の商売の種の保存する気があるなら、花に対する蹂躙も防げるのかもしれない。しかし、そんなことは絵空事である。秘密の花園にツアーが、それも最大20人もの集団が一挙に入ってしまうとは世も末である。

 最近は、金のためならどのようなことも許される風潮がある。この山域に収容人数が数名ほどの小さな避難小屋があるが、そんな小さな小屋を泊まることを目的に20名を募集したツアー登山を組んだNHKテレビの講師を務めたこともある名の知れた御大が経営者の登山ツアー会社のがあった。大ドッケも避難小屋宿泊ツアーも共通するのは、主宰者(経営者)がガイドであるということだ。それはどのようなことを意味するのだろうか?なんら四囲に起こり得る事象に呵責はないばかりか、大量の客を引き連れて歩くことを、これは正当な業務(商行為)だと言い張るのだろうか。


しかし現実はこんな風になってしまう(同じシーズン)
左の黄線の外側はすっかり踏み付けられてしまって右の画像のように根絶してしまっていた


 自分の力ではとうてい大ドッケに行けないという人も、この会社のツアーなら安心(?)2013年にこの地のツアーを催行する会社は→こちら。このようなところに「秘密のアツモリソウ群落地」や「秘密のヤマシャクヤクの大群落地」の場所が知られたら、1年で植生は消滅してしまうだろう。棺桶に入るまでこれらの場所は秘匿しなければならない。金には変えられない存在というものの価値を知ってもらいたいものだ。

(続編)
大ドッケのフクジュソウ(福寿草)群落地への大規模な人数での登山の是非について (2013)


 [HOME]


 計  昨日  今日