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中央道で削られた里山に咲くカタクリ
地元の熱心な保護 小倉山のザゼンソウ

(2007・3.24)



中央道のとある施設の敷地斜面に咲くカタクリ

 山梨日日新聞刊の「中央線花ハイキング」を何気なく見ていると,倉岳山のページに「鳥沢駅の北,中央道に接している山にカタクリが群生し,4月中旬に花期となる。」と書かれている。情報はそれだけなのでかえって興味が沸いてくる。

 同じ山梨の塩山市玉宮地区にはザゼンソウの群生地とともにカタクリの植生もあるとう。ザゼンソウは趣味ではないが,カタクリが咲く場所を探し当てるために,まず「玉宮ザゼンソウ公園」へと向かう。

 公園とは言ってもそこは桧の植林地の中であり,イノシシの防護柵をめぐらした中に遊歩道を作ってザゼンソウを保護している里山であった。今年はザゼンソウの花期が遅れていて,今が見ごろとのことであるが,植林地の中の仰々しい遊歩道から見るザゼンソウはなぜか痛々しく感じる。

 公園を離れ小倉山の方に向かうと,道の両脇にカタクリの芽があちこちに出ている。稜線にはイワウチワとおぼしき葉もいくつかあって,時期にはあらためて確かめてみたい気がする。小倉山から高芝山まではなだらかな稜線歩きとなり,そこから平沢集落に向かって下りると沢筋に沿ってカタクリが葉を広げている。しばらくすると桧の植林地となって,桧の下にカタクリの群落がある。


玉宮地区のザゼンソウ

 確かにカタクリの群落には違いないが,旭川の突哨山で見てしまったカタクリの群落からするとまったく比較するのが可哀想なほどである。だが,地元の方々が大事に保護しているザゼンソウとカタクリをありがたく見せてもらう。 

 塩山から国道20号を戻り鳥沢地区に入る。「中央道に接している山」とはどの山を指すのか見当がつかないが,2万5000分の地図で2か所に目星を付けた。中央道下のトンネルをくぐって近くの山を目指す。

トンネルをくぐったすぐ右手下の小川に沿った崖に着く葉が気になるがそこはとある施設の敷地脇の斜面で,中央道に接しているが「山」とは言えない。住宅地を山に向かって進むがカタクリが咲くような環境には見えない。しばらく周辺を探すがどうしても匂わないので,気になる「葉」の正体を確かめるため脇の小川に下りると,濁った小川脇の斜面にある葉はカタクリで,大きな木の周辺は太陽の熱を集めていて暖かいのだろう,何株も花を付けている。

敷地内にはカタクリが多く見られるが,「立ち入り禁止・警察通報」の看板が出されていて,厳重な保護がされているように感じられる。ならばと,中央道に沿って車を動かし,カタクリの群生地へ別なアプローチを探す。


森の小径で タチツボスミレ

きれいに手入れされている山がある。この斜面の反対側はカタクリの生育に好適地だろうと目星を付けて稜線に上がると,そこには施設方向へと向かう道が付けられている。少し下ってみると特に大木の周辺にしっかりしたカタクリの株が群生している。

カタクリがあることは確認できたが,一般の立ち入りは禁止されていることもあって,早々に森を通って離れる。もうすっかり陽が落ちかかっている森の小径にタチツボスミレが咲いている。大月の岩殿山北東山麓と北斜面上部にもカタクリが咲くというが,もう敢えて見るまでもないだろうと今日の花巡りを締めくくった。

 治水治山,開発という名の工事で表皮が削られたところでは,もう古来の自然の植生は失われてしまっている。植林地は地表に光が届かず植物が育たない。ザゼンソウ公園や鳥沢のカタクリを見るときにはカタクリを痛めてしまいそうだ。たぶんもう見にはこないだろう。


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