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峠ノ尾根を大ドッケへ
2012/ 3/ 16


フクジュソウ


 3月16日(金) 

 出発前夜までは、いつもの春のように浦山大日堂から沢を登り詰めて大ドッケの稜線へ、そして大平山経由七跳山、さらに酉谷山へ向けて歩き酉谷山避難小屋に泊まってのんびりするつもりでいたのです。まったく一息もつけなかった一日の終わりに、山の食料を買い求めて家に戻り天気予報を見てみると、2日目は朝から雨の予報となっています。これまでの経験から、酉谷山周辺は、里より半日は早く天気が変わるので、まだ春早い3月に一日中雨に打たれながら歩くわけにはいきません。そういうことで今回は泊まりの山行を中止し、秩父の山を日帰りで歩くことにしました。遥か遠くから見る奥多摩の山々はまだ真っ白なので、念のため10本歯のアイゼンをザックに入れましたが、これは大正解でした。いやはや、すごい雪でした。

     
 地蔵峠   二十三夜塔 

 天気予報は「一日良い天気」と言っているし、お気に入りの花は太陽の光を浴びてパラボラを広げるお昼過ぎが見ごろだろうと、浦山大日堂を出発したのは午前10時30分を過ぎていました。しかし、いくらなんでもこの時刻の出発はまずいとは思います。まがりなりにも標高差1000m近い山を上り下りするのです。Nさん宅脇から山道に入り、しばらくして大岩を過ぎると右手に「新秩父線 61号に至る」と書かれた東電のポールが立っているので、そこから植林の間の(あくまでもあるかないかのような細い)踏み跡を登ります。踏み跡は細くとも、高みを目指してどんどん登って行き進路を西に取るようになると傾斜は緩み正面に「祠」が、右下に「毛附集落」が、そして振り返れば「二十三夜塔」が鎮座しています。ここが地蔵峠(586m)で、これで峠ノ尾根に乗りました。

     
 樹林帯の分岐 標識は大ドッケを指している   61号送電線 

 祠を正面に見て地蔵峠に別れを告げ標高を上げて行くと、今は廃村となった「細久保集落」の人の手によると思われるお茶畑の中を進んでいきます。あくまでも尾根の背に乗って進むことになるのですが、どちらかというと尾根の左手(南)斜面を歩きます。おかしいなと思ったら尾根に出ればよく、(登りに関しては)難しくはないでしょう。先に進むと植林帯に朽ちた道標が落ちています。ここはYの字に道が付いていますが、Yの字を右手に登って行きます。

 
 いい雰囲気   鹿除けネット

 樹林帯を抜けると明るい2次林です。ここではまだ雪は深くありません。傾斜も緩いのでツボ足でサクサク歩いて行きます。正面にゴツゴツした岩が見え、その斜面は低木がまばらに生えている裸地です。急斜面の伐採地に植えた苗木を鹿の食害から守るためにネットが張り巡らされています。このネットはカラ沢まで続いているものと思われます。よく「大ドッケ」と呼び名を使っていますが、これがどこを指すのかよく分かっていません。ヤマレコをチェックする大平山から北側に延びている尾根の主稜線を降り、独標(1315m地点)を降りたすぐ下にある小高いピーク所が大ドッケで北側に行くとバラモ尾根、東側に行くと峠の尾根に行く分岐点となっている。 大ドッケの標高は25000の地図で見て、1315mの独標から等高線を数えて下に4本目=40mなので1275m(1315-40m)とした。ピーク点は4m四方の狭いピークで、白樺?の木に巻かれた赤テープがに「峠の尾根→」とマジックで書かれているだけで他にここが大ドッケだと同定できる情報は何も無い。 」と書かれています。


ログが「秩」の字の中で折れたところが「大ドッケ」?

 
 大ドッケを目指す    大平山への道標

 その「大ドッケ」を目指して傾斜のきつい、雪の積もった道を登ります。本当は、前に歩いた人の足跡があって楽に歩ける目論見だったのですが、そのあとの大雪で楽はできません。新雪の下にあるであろう踏み跡を少しでも外すとズボッとなってしまいます。枯れたスズタケが逆目となっているから煩わしいことこの上もありません。地図に出ないような登ってきた尾根に続く小さなピークに達しました。ここにはいくつものテープが木に付けられています。ここから先は「¬」状に折れて南進することになるのですが、ここが大ドッケでしょう?

 
 下降点から大ドッケ方向を見る    右手に進んで大平山 ポールの先を下りると急斜面で沢に向かう

 そこからしばし登って独標(1315m)です。その名にふさわしいほどポコッと尖って孤高を保っています。さてさて例の下降点はどこかと尾根を歩きながら探します。実は、峠ノ尾根から数えて4つもの支尾根を越えてやっと本来の下降点になるとは、思ってもみませんでした。地蔵峠から一直線に登って峠ノ尾根の途中から折れればいいのだ、と歩いているときは勘違いしていたのです。なので大平山への道標が出てくるとその間違いに気付かされます。道標の先の「ミニ」二重稜線を右手に採り、ひざ下まで埋まりながらその先のミニピークを一つ越えてようやく見覚えのあるポイントに達しました。標高にすると1335mほどですが、よほど注意しないとこの場所を探し当てるのは困難です。画像ポールの右手の木に色あせたビニールテープが巻かれているのが唯一の目印です。ここから下降するとき、最初はスズタケの中に踏み跡があるということを認識するのは困難ですが、色あせたテープを確認できればめっけものです。


大木から少し離れて

 今回ほど用心してアイゼンを持ってきてよかったとつくづく思ったのでした。下降点からの下りは急斜面の上、締まった雪の上に新雪が積もっています。雪がないときでも大変な斜面ですが、アイゼンのお蔭で足を下ろすとザックリと制動が利きます。160mほど下りて目的地のはずですが、完全に雪に埋まっていてここがその場所なのかと判断できませんでした。大木が見えるので行って見ると群生地の一番上に出たようです。かろうじてこの大木の南側の木の根っこだけがわずかに露出しています。


いつもなら花園ですが・・・


大木の脇で

 この日の秩父市の気温は最低−4℃、最高が10℃でした。山ではもっともっと寒かったでしょう。この地のフクジュソウは、20℃近い気温が何日か続かないときれいな姿を見せてくれません。このままでは、2012年の見ごろを迎えるにはあと10日から2週間はかかるでしょう。雪が深くて花園に着いた頃には空が曇ってきて、わずかに咲いていたフクジュソウもいつもの輝きを見せていません。それでもこんな深い雪の中で待っていてくれたことに感謝したのでした。(2008年はこんなにきれいだった。)


大木の木の根っこが出ているところだけが春を告げています

 群落地に別れを告げて沢を下りますが、沢に積もった雪は両側から流れてきたものもあって半端ではありません。標高800mまではアイゼンの利きもままならず何度も体が流されます。伏流が出てきたところでアイゼンを外しますが、その先も雪、また雪です。鹿除けネットが設置されたところに出てようやく雪と別れます。崩壊斜面にスコップで切った跡があります。作業小屋を過ぎるとまた雪が積もっていて、雪の上に複数の登山靴の足跡が見られます。沢まで行ってその先の尾根を巻く急斜面を見てあきらめ踵を返したのでしょうか。それが正解だと思います。今までなら、翌日が雨でも酉谷山に向かっていたでしょう。今回ほど最初から諦めていてよかったと思ったことはありません。大平山も然り、さらに七跳山の北斜面の積雪にトレースがないことを考えると、最近の体調からすると途中で野垂れ死にしていたかもしれません。


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