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ヒグマもエゾシカも ピンネシリ 

(2003・10・4)



 アポイからピンネシリへの林道 ヒグマの出没地

 今回の目的地を,南日高の端正な山頂を持つ楽古岳(1472m)とし,3日夜10時30分に札幌を出発し,千歳・浦河を経て天満街道を北上した。国道236号線から陽春橋を右に折れメナシュンベツ川沿いの林道を楽古荘に向け走る。

 途中,跳び出てきた鹿に急ブレーキをかけるハプニングに遭遇する。時刻は午前2時30分,もう少しで楽古荘というところで,通常は開放されているというゲートに「余震の発生による崩落のおそれがあり通行禁止」との無常な看板が掛けられており,やむを得ず撤退することとなってしまった。日高の山に入る林道の多くは,台風10号と十勝沖地震の影響により,通行止めなどの影響をいまだに受けているとのことであり,ならばと,南下してピンネシリ(958m)に登り,来年の花の時期の下調べをすることとし,午前4時,誰もいないアポイ岳山麓キャンプ場駐車場で車中泊をすることとした。


楽古岳

 
望遠での楽古岳山頂切り取り 

快晴の朝,時刻は7時を回っているが,駐車場に来た車はアポイへ登る1台のみであり,当然キャンプをしている人はなく初夏の喧騒が嘘のようである。アポイからピンネシリの登山口へ向け幌満林道へ抜ける山道のゆるやかな下り坂を走っていると,左手の林からヒグマが飛び出し,右手の熊笹の斜面にあわててワッセワッセと逃げていったのである。あーよかった,車の中で・・・。

 熊ちゃんの歓迎を受けてピンネシリの登山口に至り,午前9時にスタートする。今日は登山道でも熊ちゃんに出会うのかなと思っているところに2人連れが到着したことから,なんとなく安心して林の中を進む。標高を上げるにつれて紅葉も見られるようになり,幌満岳方面の山肌が一面色付いている。


ピンネシリ山塊

 ピンネシリは,アポイ岳と同じカンラン岩でできている山なので特有の花が多くあるものの,アポイ岳に比べれば登る人は少ないといわれるだけあって,登山道は踏み込まれておらず,野趣豊かな様相を保っている。カンラン岩が露出している付近には,ヒダカコザクラ,サマニユキワリ,アポイアズマギクが群生しており,チングルマもところどころに見られ,髭を蓄えている。花の時期にも訪れる価値がある楽しみな場所だ。

 ピンネシリの頂上(写真左奥)に立つには二つのコルをトラバース気味に歩くが,ハイマツが所々で道をふさぎ,さらにこの時期にもマダニがいるのでやっかいである。登山道はエッジとなっていることろもあって,1000mに満たない山に登る一般的な感覚とは違うものがある。

 チチッ,チチッという鳴き声が何度か聞こえた。まさかこの標高でナキウサギはいないだろう,鳥の声かなと思っていたが,あとでガイドブックを見たところ「運が良ければ岩れき地ではナキウサギの声も聞かれることだろう。おまけに稜線の南側や東側では熊の掘り返しなども見られる。」と書いてあるから,あれはナキウサギの声だったのだ。ときおり鹿の鳴く声が聞こえ,一度だけ谷筋から獣(熊ちゃん?)の鳴き声も聞こえてきたが,確かに野性味のある山である。


幌満岳の山肌

 11時,ピンネシリ頂上に着く。360度の展望が楽しめ,北には楽古岳,南には吉田岳を越えてアポイ岳(画像右奥)へ至る縦走路が延びている。頂上は数人分のスペースしかないが,1人占めである。山を眺めコーヒーを沸かし,山を眺めおにぎりを食べ,山を眺めお茶を飲むなどとしているうちに,たちまち2時間が過ぎてしまった。2人連れは少し遅れてきて缶ビールを飲んだら,「吉田岳まで行ってくる」と言って縦走路に下りたので,いつまでもいつまでも静かな山頂での時間を堪能することができた。

 デジカメの望遠で楽古岳の頂上を切り取ってみると山腹から山頂まで紅葉が盛りの様子が分かる。端正な山頂を持つ楽古岳,ミズナラの木が尾根には多く熊ちゃんが好きそうな環境にあるとのことだが,是非登ってみたい山の一つとなった。


秋鮭は釣り放題

 帰路,歌別川河口に鮭の遡上を見る。河口での釣りは禁止となっているが,河口脇の漁港内では鮭釣りは禁止されておらず,超穴場!港内に回遊する鮭は釣り放題である。釣り人は漏れなく鮭を釣っており,皆ご機嫌な様子である。


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