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伏美岳〜ピパイロ岳縦走
2005/ 6/17〜18


ピパイロ岳〜1911m間の頂稜に咲くツクモグサ

 1日目 6月17日 

 いくら北海道の夏山が始まったとはいえ,登山口にある平日・木曜日の伏美岳避難小屋に泊まっている人はいない。芽室山の会の人によって今年真っ赤に塗られた小屋はよく手入れされていて,畳敷きの室内もこざっぱりとしている。

 昨年の幌尻岳縦走の帰路,ピパイロの稜線で見つけたツクモグサの花柄,その盛期に是非登ってみたいと温めていた登山計画,行けなければ行けないで構わないと4月に予約した航空券を使う機会に恵まれた。今年の北海道は,遅い春の巡りに花々の開花も遅れているし,麓の気温も例年に比べ相当低い。ならばこの時期,ツクモグサはきっと咲いてくれているに違いない。

 とは言っても,ツクモグサの花期は非常に短いらしい。ピパイロへ登る日程は,十勝の山や花をはじめとした記録の「onsen」さんのホームページである「山の花紀行」で,歴年の貴重な記録を読んで検討をつけて決めた。また,onsenさんから提供していただいた積雪・気温と開花状況の情報を総合すると,ツクモグサは,今盛期を迎えることになるだろうとの確信を抱くこととなる。

 当初の天気予報は曇りのち60%の確率の降雨であったが,外は大快晴,雲一つないとはこのことを言うか,素晴らしい天気となった。出発は遅れて午前7時,伏美岳避難小屋に引かれている日高の清冽な水を汲んで重くなった縦走装備のザックを担ぎ登山道に入る。最後の水場となる沢沿いには黄色のエゾノリュウキンカが咲き,その北斜面には薄いピンクのシラネアオイが群落をなして咲いている


シラネアオイ

 
伏美岳の中腹で,今,伏美岳頂上まで行ってきたという,老人と呼ぶより荘年といったスタイルのベテランと話をする。75歳。「熊の足跡見なかったかい。あったしょ,今朝通った跡さ。隣のトムラウシ山には人が登らないから熊が住んでいるんだ。今朝通ったからもう半年はここに戻らないよ。熊だって今の時期は木の葉っぱや草食べるより山菜の方がいいのさ。餌探しに登山道を横切ったけど,人間が通っていることに気付いて,もうここは通らないのよ。登山道もちょっと横切っただけで,藪に入ってみたいだ。私かい?昨日も登ったけど,ほんとにいい天気だったし,今日もすごいね。滅多にこんないい天気ないからよかったね。やあ,話できてよかった。花,一杯咲いてるから。あらら,ここにもシラネアオイが咲いてるわ。来週お客さん連れて来るから見に来たのさ。明日ね,ウペペサンケ,ミツバツツジがたくさんあるから咲いていないかと思ってね。もう年だから沢や縦走はやめて,花を見ながら山登るのさ。なにさ,ペテガリ岳の東尾根を登ったってかい,すごいね。七つ沼もここから行ったのかい。ハイマツすごかったしょ。いや〜,花綺麗だね。伏美からピパイロの山のひだを数えるといやだね。がんばってさ。」
いやはや,背筋がシャキ〜ンとして,顔は健康そのものの素晴らしい老人であった。


サンカヨウ


伏美岳頂上(ピパイロ寄りのコルから)

 標高差1000mの登山は,通常ならばどうってことのないのに,今日はちと違う。午後2時になってやっと伏美岳頂上である。あの老人は3時間で登ってきたというのに,休憩を入れて7時間もかかってしまった。25キロは重い。頂上から見たピパイロ岳への稜線は雪に覆われていて,1911のテン場はもはや望むべくもなく,さらに水場のコルに行くのも危うい。コルのテン場の雪が融けていない可能性もある。安全第一,頂上は避けてピパイロ寄りのテン場に今宵のマイホームを設営する。


伏美岳頂上西寄りのテント場


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