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北戸蔦別岳からピパイロ岳、伏美岳へ戻り下山 (2014)
(2日目の3)
2014/ 5/23~24


ツクモグサ


 5月24日(土) 2日目の3  

 一般的に、ピパイロ岳(1911m)のツクモグサの開花時期は6月初旬とされていて、このころにピパイロ岳に登ってツクモグサを見たという記録が(自分のものを含め)多い。というかその時期のものしかない。しかし、残雪期(5月)に芽室岳から来て途中でツクモグサを見たという記録(最近は検索できない)があったし、2014年5月10日の記録で「ツクモグサが間もなく開花」との情報があったので、今回は期待して登った。


幌尻岳はすっかり雲に覆われた

 ピパイロ岳から北戸蔦別岳に向かった今朝がたに、ツクモグサの蕾をたくさん見た。ただ、太陽が登り切らない朝早くのことだったので、下山予定の明日(3日目)に花見をしようと考えていた。計画を変更し戻ってきた2日目の午前、ツクモグサの植生地に着く前に、日高の山は真っ黒な雲に覆われてしまい、太陽を見ることもなくなった。ということで最悪のコンディションの中、稜線を歩く。北戸蔦別岳への往路、1967峰でまだ芽を出していないツクモグサを2株見た。その場所は、八ヶ岳のツクモグサの植生を知っていれば探し当てられるところだった。まったく環境が似ている。強風下なのでその場所以外を探すことはできなかったが、当然ながらあるところにはあるはずだ。


1911mのツクモグサ

 ということで、北海道のツクモグサの植生の場所は、ピパイロ岳、芦別岳、ニペソツ山、ニセイカウシュッペ山(このほか利尻山、ポロヌプリ山にもあるとのこと)に1967峰がツクモグサが咲く山として名を連ねることとなった。


1911mで

 ピパイロ岳のツクモグサは、あいにくの天候により開花株は一つしかなかったが、この時期にツクモグサに会えたことだけで満足し、1911mからピパイロ岳へと進む。登山道はところどころ雪に埋まっていてわかり辛くコースを外す。稜線に出ると北あるいは北西からの風が酷い。耳を保護し、ゴアの防寒手袋を着用し、レインウェアーで身をまとうと寒さは感じない。


1911mで

 明るいうちに一気に下りるため、あまり立ち止まらなくていいようにピパイロ岳頂上の岩陰で身支度をしっかりと整える。まったくすごい風だ。濃いガスで視界も利かない。しかし、モチベーションは高い。ピパイロ岳から伏美岳まではアップダウンが多い。その上に夏道に残雪が覆っているところもある。取り敢えず、伏美岳まで登り返さないといけないが、ここが正念場であった。我慢に我慢を重ねて2時間、ただひたすら進む。頂上はまだあと一つピークを登ればいいのかなぁと思っていると、ヒョコッと伏美岳の肩に出てしまった。


ピパイロ岳頂上で強風を避ける

 その肩にはハイマツで囲まれたテントスペースがある。なによりあれほどの強風がハイマツによって守られていて、平和そのものである。行程管理人に現在位置を報告する。ここにテントを張って一夜を過ごすのもいいなぁ。でも、ポールがないしなぁ、という状況であるし、今日下りてしまえば3日目の明日は日高の山の花三昧が待っている。 


伏美岳へ戻る 北西からの強風が半端ではない西

 ここまできたら伏美岳の下山は朝飯前と思うのは早計である。1,792mの頂上から770mの小屋までの標高差は1,000mもある。雪の付いた斜面、雪が融けたドロドロの急な下りの登山道、その泥道で滑る。間もなく登山口という手前の沢で汚れを落とし、めでたく到着した登山口で下山時間を記入する。車が1台あって明日の登山のための車中泊のようだった。お声を掛けて、伏美岳避難小屋でご一緒することとなった。


登山口までの沢で エゾノリュウキンカ

 このお方は道北にお住まいであった。自分もビールやお酒をレンタカーに積んで小屋で飲もうと準備していたが、クーラーボックスから冷え冷えのビールを出し勧めてくれた。うまいのなんのって・・・。奥様手製のおにぎりやつまみやお酒や、あれもこれもちょうだいし、結局5時間ほど話し込んだ。その方のお住まいの地域に動物の名前のいい森があることを帰ってきてから思い出した。昨年、その森の探索を計画して北海道に行ったが、時間切れで行くことができなかったのだった。あれほどの荒天だったのに、小屋を出てみると満天の星であった。薪ストーブで暖められた小屋での睡眠で、体力は完全に回復であった。


伏美小屋 (水場あり)

伏美小屋のノートを見ると、東京都福生市の〇坂さんの複数の書き込みがあった。毎年、日高の山を時間を掛けて縦走している方である。一度、カムイエクウチカウシ山に登る途中でイワナを釣っている〇坂さんにお会いしたことがある。エサオマントッタベツ岳から1週間以上かけて歩いてきたとのことだった。


伏見小屋で

何度登っても、日高の山は本当にいいところだ、素晴らしい山だと思いながら今回登った行程を振り返る。

☆興味ある記事:「日高山脈地図無し登山」(ベストエッセイ 2018)


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