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南アルプス/茶臼岳〜光岳 (2013)

(2013/ 8/22〜24)

沼平ゲート〜茶臼小屋(1日目)


茶臼小屋のテント場


 8月22日(木) 


畑薙大吊橋

 ヘルメットも用意した。すべての装備のチェックも終わった。いざ出発しようとパソコンで最終確認すると、前線が北アルプスを通過するとの予報になっている。これでは前穂高岳〜穂高岳の縦走はままならないと、急きょ天気が持ちそうな南アルプスに場所を変更することとした。行き先は、なかなか遠くて行くチャンスが少なく、かつピストンになる光岳とした。天候の悪化がある程度考えられることから、メッシュアンカーを持っていこうかと逡巡したが、ザックに入れなかった。実際は茶臼小屋のテント場は、岩場を整地したところで土壌分が少なく、ペグは十分に打ち込むことが出来なかったので、アンカーは持っていくべきではあった。(※ テント:アライ エアライズ2、グランドシート、チタンペグ ザック:OSPREY CRESCENT 50)


横窪沢小屋

 畑雉第一ダムを経て沼平ゲートに着くと、駐車場には10台ほどの車が停まっている。2時間ほど仮眠し、トイレのためにいったん畑雉ダムに戻ってから、ゲートをくぐり入山口の畑雉大吊橋へと林道を歩く。車が何台か追い越して行くので、後ろから音がした時にそれまで同様道の端で避けて車をやり過ごそうとすると、マイクロバスが泊まり「乗って行きなさいよ。ゲートで待っていれば乗せてあげたのに。」と言ってくれる。まだ先は長いのでお言葉に甘えて車中の人となる。大吊橋で下してもらう。(通常は小屋泊まり者のためのもので、テント泊者は乗車できない。)


水平道のオヤマリンドウ

 前回(2013/7/12〜17)は、睡眠時間もなく歩き始めたから苦しかったが、今回は2時間も寝ることができたから、体調はいい。ウソッコ沢小屋まで歩き通し、休憩する。大きなザックを背負った単独男性が休んでいる。北岳から入って8泊し、これから下山するという。こんな縦走が憧れだ。ウソッコ沢小屋から先、下山してくる人はいても、前後に登る人はまったくいない。あきれ返るほど静かな南アルプスの山道を気ままに登る。畑雉大吊橋から茶臼小屋までの標高差は約1,460mある。テント泊装備である。登山道のごみは(少ないが)ほとんど拾いながら歩く、といったことを言い訳にすると、ウソッコ沢小屋到着は山地図記載の所要時間より10分遅れ、横窪沢小屋までは地図どおりであった。我ながらこの歳でテントを担いで、えらいと褒めてあげたい。


横窪沢源頭のトリカブト

 横窪沢小屋で15分間休む。携帯が使えるので行程管理人に、2日目の行程変更をメールで伝える。当初予定は茶臼小屋〜光小屋の予定であったが、天候悪化の際の下山を容易にするため、茶臼小屋〜光岳を2日目に往復してこなし、3日目は下山のみとすることにした。(2日目午後の天候急変と3日目の強風を考えると、正しい選択であった。)
 さて、横窪沢小屋から茶臼小屋までの標高差はあと800mが残る。そして急登が待っている。所要時間は3時間となっている。急斜面を延々と登って大無間岳と上河内岳が見える風が心地よく吹き抜ける馬の背(仮称)に置かれた丸太組みのベンチを目にすると、ザックを下ろし横になって睡眠を貪ることに決める。気付くと40分間寝ていた。太陽の位置が変わって顔に光が当たって目が覚めたのだった。まだまだ休んで行きたい欲求は強いが、下山者3人にベンチを譲り先へと進む。その後も淡々と標高を上げ進む。トリカブトが群れて咲くようになるのを見ると茶臼小屋が見える。横窪沢小屋を出て、昼寝を含めての所要時間が3時間10分となかなかのハイペースであった。いつもは鈍足の上にだらだらすることが多い。)


茶臼小屋とテント場

 茶臼小屋に着くと、源頭の水の流は涸れる寸前の瀕死の状態であった。小屋が上部から引いている水は流れていない。まずいなぁ。今日は1リットルちょっとしか水を担ぎあげていないし、(ポカリの500ccと水の)半分は飲んじゃっている。テントを張ってから水を採れるようにと考える。ツアー登山のが「水は(小屋の人から)沢で汲めってよ。」と言っている。細い流れの水を採りやすくして、下流にビールと日本酒を冷やしておく。(細かい砂や泥の沈殿の)頃合いを見て水を汲みに行くと、ツアーの一団の男性が水場で歯を磨いている。おい、そこは水場だろう、その下流で飲み物を冷やしているだろうというような野蛮な言葉遣いはすることなく、「水を汲みたいので交代していただけますか。」とお願いする。プラティパスに水を満たしていると、その客は、「テント場から大腸菌が流れてきているだろう。よくもそんな水を汲むもんだな。」と言いながらなおも歯を磨いている。お客さん、あんたもその大腸菌がうようよしている水で歯を磨いているのじゃないのかということは口に出さず、「大腸菌で水の味もよくなっているからいいんじゃないの。」と優しく教えてあげる。

 同類の客がつい最近、光小屋で小屋の主人と口論し、ジュースの品ぞろえが悪い(この日は売り切れた)とか、明日飲む水をもっとよこせというようなことを言っていたそうな。(ヤマレコ) 今、この界隈の水場で健在なのは横窪沢小屋だけである。ツアー登山で金を払って山に登っているという消費者感覚で山に来ているこの種の無邪気な人たち・・・。(登山道脇の水場は光岳までの間全滅。)何をかいわんや。

 小屋のベンチで冷え冷えのビールと酒を飲んでいると、小さい子2人を連れた男性もベンチに休みに来た。5歳の幼稚園児、10歳の小5だった。お兄ちゃんは小2のときに百名山を完登し今はおじいちゃんとともに5歳の弟の100名山に付き合っている。弟は明日の光岳をやると、残るは北岳と間ノ岳とのこと。小さい子に登山をさせていることに非難の声も少なからずあるとのこと。しかし、このおじいちゃんと2人の孫の凄さは、2日目の光岳往復と3日目の下山時にまざまざと見せつけられた。観念でものを語ってはいけないという典型を見た気がする。

 明朝は目が覚めたら(何時であろうとも)光岳に向かって出発しよう。それには何をさておき、寝るに限る。


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