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畑薙ダム〜茶臼小屋
2014/ 5/ 9〜10


聖岳 右奥に悪沢岳


 5月 9日(金) 1日目  

 残雪の春山をスイスイと登る予定であった。行き先は南アルプス、コースは畑薙ダム〜茶臼岳〜上河内岳〜聖岳、日程は冬季小屋を利用しての2泊3日、それも夜通し運転しての短時間仮眠の予定。そこまではいつものやり方である。ところが、2014年のゴールデンウィーク中の山での事故は死者18人というほどの難しい条件。それも織り込み済みではあったが、ヤマテンが1日目の天気について「大荒れ情報」を流したことで、装備の流れが変わった。そしてその重さが苦しさに変わった。


横窪沢小屋 

 ヤマテンの警報を受け、冬季小屋利用は原則としつつも稜線での万一のビバークにツェルトでは役に立たないとテント一式及び真冬の服装をプラスし、これに当初から持参予定のピッケル、アイゼン、ワカンなどでザックは最近にない重さとなった。畑薙第一ダムに車を停め仮眠する。


本来の夏道は2,330m付近から分かれる

 大吊橋からヤレヤレ峠までは昨年3回歩いたときのとおりの登山道であったが、その先の最初の吊橋が土砂の流出で下流はるかに押し流されている。急斜面のルンゼ状の地形を慎重にトラバースする。その先、茶臼小屋までは昨年と変化のない登山道であった。ウソッコ沢小屋で小休止、中の段で小休止と体をだましながらどうにか横窪沢小屋に着く。水場はまだ流れていない。最近のヤマレコの情報では先の水呑場で細い流れながら水を得られるという。


茶臼小屋

 とにかくきつい登りである。茶臼小屋の水場は深い雪に覆われているようだ。しかし、水呑場では当座の水を得て先に進む。水が無くなったら雪を解かすことにしている。水呑場から雪が出てくる。急速に雪が緩んでくる。基本的に踏み抜きは少ないのでワカンをアイゼンに替える。それでもいったん踏み抜くと体が半分以上持っていかれることもある。

 樺段に着いた。道標の杭が頭だけを出している。ここから茶臼小屋までは夏道で40分のところだ。国土地理院の地図に記された登山道どおりに進んでいくが、樹林下の同じような景色で、ルートが判然としない。トレースはあちこちに向かっていて、それが溶けだしているから、先人のトレースを追うのも難しい。そんなことからGPSのスイッチを入れ、夏道を追う。小屋が見えだすと無雪期は標高2,350m?あたりから沢に向かってトラバース気味に行くのだったがその道は深い雪に覆われていてどこがどこだかわからない。尾根の腹を進むようにして稜線が近くなるずいぶんと手前で進路を大きく変えると目前に茶臼小屋がふたたび見えた。要した時間は1時間30分。疲労困憊とはこのことだ。


茶臼小屋へ下る

 誰もいない小屋に入ると、すぐにシュラフを広げて午睡に入る。疲労はあるが頭が覚醒されていて1時間と少しほどしか眠ることができなかった。起きてトイレに行く。ありがたいことに連休中に小屋を使った人がトイレを掘り起こしてくれていた。小屋から夏の水場を過ぎトイレに行く傾斜に雪がたんまり残っていて、きちんとステップを切らないと滑り落ちる。窓が完全に閉められている真っ暗な小屋に戻り、ガスランタンを灯す。運び上げたビール、日本酒で寛ぐ。幸せなひとときである。辛い一日だったなぁ。


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