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仙丈ヶ岳を地蔵尾根から登る
2014/ 6/ 13〜14


南アルプス林道から 仙丈ヶ岳


 6月13日(金)

 ウィキメディアによると、仙丈ヶ岳を登るのに地蔵尾根を使う登山者は極めて少ないそうである。昭文社の山と高原地図「甲斐駒・北岳」を見ると、伊那里から地蔵尾根を使って仙丈ヶ岳まで至るコースタイムは、伊那里〜松峰小屋の間が4時間30分、松峰小屋〜仙丈ヶ岳の間が4時間30分の合計9時間となっている。仙丈ヶ岳からの下山は、北沢峠までが2時間40分となっていて、テントを張ることができる長衛小屋までは、北沢峠から15分程度であり、このコースを1日で歩こうとすると、休憩なしで約12時間を必要とする。長大な地蔵尾根を歩くことの時間的な問題とともに、このコースを選んだときのアクセスの不便さも大きな問題となる。(ただし、タクシーを使えばなんら問題とはならない。)北極冒険家の荻田泰永さんは「冒険の最中は多少頭の中が狂っています。」と言っているが、1日で下りてしまうコースを計画すること自体、そのような状況に陥っていたのだと、今、思う。


イチヨウラン

 遠方から来てこのルートを採るとすると、そのようなアクセスの不便さをどのように解消するかということになる。当初は戸台の仙流荘に車を停めてタクシー(大川タクシー)を呼び登山口の柏木集落まで行くことも考えたが、高遠の営業所からタクシーが回ってきて約7.4kmの距離の乗車に6,850円(時間制:1時間の拘束)も支払うのもちょっとなぁという思いである。伊那市が運営している「長谷循環バス」は、仙流荘の一番バスが07:50発、登山口の柏木集落に最も近い伊那里のバス停着が07:58となっていて、1日目に松峰避難小屋泊とした場合には都合のいいものである。


アクセス概念

 ただ、1日目に松峰小屋まで歩くことでよしとするか、行けるなら仙丈ヶ岳まで行ってしまい、その余勢をかって北沢峠まで行ってしまうかは、このルートを計画するときの高揚感の有無しだい。ヤマテンは稜線でのガスを、GPV天気予報は午前中から仙丈ヶ岳に1〜2mm/hの降水を予報している。2日目の天候は快方に向かうことが見込まれている。しかし、やるならこのルートを1日で回ってしまいたい・・・、気分に傾いている。その上で、状況次第で仙丈ヶ岳頂上から少し下りた藪沢カールにある仙丈小屋の冬季小屋の利用を考えた。ということで、登山口の柏木集落に設けられている駐車場まで直行し、車は下山後長谷循環のバスで伊那里まで行き、そこから先を徒歩で駐車場まで行って回収することとした。

松峰小屋への分岐標識

 仙丈小屋のホームページを見ると、2014年の営業期間は、6月14日からとなっている。万が一冬季小屋の利用が必要な場合に備え、実際この小屋が使えるかどうか微妙なところだなと感じたので仙丈小屋を所有・管理・運営する伊那市観光株式会社に電話をしてみる。電話を受けた女性職員は、「小屋は6月14日からの営業開始で、小屋明けのために人が入っていますが、13日は冬季小屋を使うことができます。」と答えた。さらに小屋に電話をしてみたが、呼び出しには応じなかった。これで諸準備は一応整った。一日で北沢峠まで行くことを前提にテント装備を担ぎ上げる。水場はあるにはあるが、2日分として3リットルを持つ。


右側の雲の中に茫洋と大仙丈ヶ岳が浮かぶ

 柏木集落の駐車場からすぐ赤松の中の登山道を歩く。登山道は最後までしっかり付けられている。標識も随所にあり、大きく道間違いをするようなところはない。標識がなくなると赤テープが森林限界までごまんと付けられていて賑やかだ。なにせ頂上まで9時間のコースタイム、標高差は1,880mである。この長大な尾根をただただ、ひたすら、もくもくと歩くだけである。


大仙丈ヶ岳

 樹林帯の中の登山道は、孝行の猿の碑があるところをさらに進んで自然林の中に付けられている。腐葉土がたっぷり堆積した土壌のところでは、ラン科の植物のお出ましが期待された。その期待にそぐわず開花したイチヨウラン1株とまだ蕾のキソチドリを複数見ることができた。イチヨウランの葉と違って縮緬のような感じで色の濃いラン科の植物は、目を皿にして見ても見ることはなかった。苔むした深い森を歩いていると登山道にカメラの一脚が落ちていた。ラベルテープに「KAZUYA」という名前が書かれていた。すぐさま、この一脚の落とし主は新井和也さんに違いないと思った。新井さんは2013年、剣岳で落石事故に遭い命を落としている。(新井さんのホームページとブログ「KAZの活動日誌」へ)


仙丈ヶ岳頂上

 標高を上げるにつれ雪が徐々に出てくる。森林帯からハイマツ帯へと森林限界に入ると雪渓がしっかりと残っている。風が吹き付けてきてガスが濃くなる。仙丈小屋(丹渓新道への)分岐はまだかなと思って露岩を登って行くと登山道に階段が付けられ整備されている。おかしいなぁ、地蔵尾根がこんなに整備されているはずはないと思う間もなく仙丈ヶ岳の頂上標識の裏にポッと出た。登山口を出発して7時間30分ほど経過したときであった。


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行程 
 着  地    点 発 
   柏木登山口 0845
1045 松峰避難小屋 1200
1245  仙丈ヶ岳  
   長衛小屋  
 所要時間 0400