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快晴の谷川岳 上越の山々の大展望
2009/ 1/29

2008/10/ 9〜11のテントで谷川岳馬蹄形縦走の記録はこちら
2008/10/21〜22の万太郎山〜西黒尾根縦走の記録はこちら



谷川岳トマノ耳からオキノ耳〜一ノ倉岳〜茂倉岳

 甲武信ヶ岳での延々と続くラッセルがクセ?になり、次なる雪山を2008年の夏山として2回登ったことのある谷川岳とした。2008年冬号のヤマケイJOYは、「谷川岳は積雪が多く、ラッセルの有無により肩ノ小屋にたどり着けない場合もある」と書いている。谷川岳ロープウェイ天神平駅からだと、夏道の場合2時間30分ほどの距離である。2日連続の休みが取れたので、肩ノ小屋に泊まり、ウィスキーを飲みながらゆっくり本を読もうと、訓練としての雪洞泊まりをも想定した道具を入れたザックを準備する。

 車が上越線岩本駅を過ぎるころ、武尊山がその擁する南面のカール状地に真っ白な雪を蓄えているのが見える。沼田市あたりからは谷川岳の二つの耳がまるでナキウサギなどの小動物のミミのように見え、山は真っ白な雪に覆われていて、来て良かったと、山に登ることができるうれしさ感じられると同時に、風にでも吹かれたら厳しい山だろうなと自戒する。今日の午前中の天候はいいが、夕方から崩れてくると、明日の予報は悪い。


90リットルのOSPREYに
カンとシャベルも

 冬季間、平日は無料のロープウェイの駐車場に車を停め、朝一番のロープウェイに乗る。スノーシューにショートスキーを持ったプロガイド風の2人の男性とゴンドラに同乗し天神平駅(標高1321m)に着く。気温1.5度、積雪量185cmのゲレンデに出る。2人はリフトで天神山に行く。ゲレンデの脇を田尻尾根に向かって登る。ラッセルの跡はしっかりしておらず足が取られるが、25分ほどで雪庇を乗り越えて尾根に出る。

 田尻尾根をはずれ天神尾根に乗るまでは夏道を外れるが、GPSの軌跡を見ると、その後はほぼ夏道をなぞっていくこととなる。いったん下って上りにかかるところにスキーヤーがいる。トマノ耳まで登って滑り降りるという。ピッケルは遠慮なくスーっと潜っていくものの、田尻尾根からはトレースをはずさなければ快適な歩きができる。1ヵ所コブを巻いて大きく下るところがあって慎重を期さなければならない箇所がある。順調に熊穴沢ノ頭に着く。ここには避難小屋があるはずとみれば、積雪は3mを超えていて、小屋の存在は積雪量を示す標柱で分かる。谷川岳が屈指の豪雪地帯であり、気象状況が変化すれば、冬山登山の極めて困難な場所であるとの評価がうかがい知れる。


肩ノ小屋と万太郎山への尾根

 天神ザンゲ岩付近を2人が、その手前を新潟の男性が登って行く。風がなく、太陽に照らされた尾根の雪はべっとりしてきている。やがて肩ノ小屋と西黒尾根の取り付きの間ほどにある石積の土台に建てられて大きな標識に出ると万太郎谷からの強い風が吹き付けてきて、急激に体を冷やす。トマノ耳(標高1963m)に着くゴンドラで一緒だった男性2人が滑降の用意をし、あっという間に姿を消した。新潟の男性も着いて、あれが「至仏」「燧」「武尊」、向こうが「赤城」「妙義」、あれは「白根」「苗場」、「万太郎に隠れて平標は見えませんね」などと山座同定を楽しんで、この男性もあれよという間に天神尾根を下っていく。

 風は容赦なく吹き付ける。肌をさらすところがないようにしてさらにトマノ耳に一人留まる。白ヶ門や朝日岳をはじめとする谷川岳馬蹄形縦走の尾根を飽かず眺める。一ノ倉岳や茂倉岳はこの時期、今の自分には荷が重過ぎる。夏山同様の時間でトマノ耳に着いてしまい時間はたっぷりあるので、肩ノ小屋で朝食を摂ったら下りてしまおう。あれほどの青空も西の方から曇ってきた。天気の大きな変化が感じられる。


スキーヤーは颯爽と・・・・

 肩ノ小屋には雪がまとわり着いているが、入口の雪は綺麗に掘られている。訓練で登ってきた群馬県警の警察官が引き揚げるところだった。OSPREYの90リットルのザックを見て「今日は泊まりですか。」と聞くのも当然であろう。「早く登れたので下山するつもりです。」と答える。小屋は、休憩舎の1階だけが開放されている。階段は撤去され2階への入口やトイレへ通じる入口には板が張り付けられている。トイレが使えない小屋は、まさしく緊急時の避難のためのものでしかなさそうだ。ヤマケイJOYは肩ノ小屋での宿泊を前提とした紙面づくりをしているが、トイレ情報はない。あらかじめここを宿泊の予定にする場合は、携帯トイレが欠かせない。さもなければ事に及んで万太郎沢からの強風にお尻を晒すことに・・・。

 この肩ノ小屋の休憩小屋の入口にはシャベルが2つ備え付けられている。2006年初頭の遭難事故の記事を見ると、小屋近くで3日間ビバークしたとのことであり、救助に向かった捜索隊はその間、大雪のため小屋まで行けなかったとのことである。肩ノ小屋の休憩小屋には、梯子が壁に取り付けられている。1階のドアが開けられない場合は、潜り戸から内部に入ることができるようにもなっている。しかし、梯子に氷雪が吹き付けられていてその付着を排除する必要もあるだろうし、備え付けのスコップが埋まっていたら、何の手出しもできないだろう。この遭難は、そのような状況下で起こったものではないだろうか。雪山初心者としていつもシャベル(ブラックダイヤモンド/ディプロイ・7)を持ち歩いているが、シャベルが雪洞を掘ったりするだけのものではないことが、この事故と肩ノ小屋に吹き付けた雪で実感できた。


肩ノ小屋/トマの耳方向/西黒尾根を示す標識

 温かい飲み物をたっぷりと作って遅い昼食を楽しむ。前日、神田の山の店の近くで買った猫ちゃん用のハウスとベットの取り合いを演ずる猫ちゃんたちの画像が添付されたメールが入るので、肩ノ小屋泊を中止して下山することを知らせる。安全/安心が一番である。トマノ耳から見た西黒尾根にはっきりとしたトーレスがあるが、ズブの素人は天神平へと向かう。

 下山は、サクサクと決まるアイゼンを頼りに、あっという間に天神平駅に着く。谷川岳温泉「湯テルメ・谷川」で温泉に浸かったのち高速に向かうが、その途中、とてつもない睡魔に襲われ暗くなるまで寝てしまう。甲武信ヶ岳での9時間ラッセルからまだ一週間しか経っていない。しょうがないか。


天神尾根に出るまでは夏道とは違う

場所 .
. 天神尾根 0935 1540 .
1000 田尻尾根 1000 1520 1525
1230 標識 . . .
1240 オキノ耳 1300 . .
1310 肩ノ小屋 . . 1410

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