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茂倉岳避難小屋〜谷川岳 (2012)


谷川岳 オキノ耳
2日目、茂倉岳避難小屋の朝は、小屋内で±0℃、外は−4℃ほどで雨水を貯めたドラム缶に氷が1cmほど張った。
食べるものと言えば行動食に用意した蒸しパン、バナナ、柿各1個。
それに冷え切った水をちょっと飲んで小屋を出る。
外は昨日と打って変わった晴天、かつ無風!


 10月20日(土) 

 
茂倉岳頂上手前のナナカマド

 強い風が吹き付けていたのだろうにもかかわらず、そのことはちょっとも記憶にない。その代り真夜中に小屋に到着する人たちの夢を見た。結局夕方5時にシュラフに潜り、シュラフから抜け出すのに13時間かかった。窓ガラスは霜がびっしりで外の景色は見えないが、風の音も聞こえないし、天気はよさそうだ。

 
一ノ倉から茂倉岳 花の名所らしいが、踏み込みも広がって植生が後退している

 小屋を出ると空気がピリリとしているが、風がないからそれほどの寒さを感じない。ただ、小屋の中の寒さで冷え切った指は、ゴアテックスの防寒・防水仕様の手袋をはめていても、しばらくは感覚が元に戻らなかった。茂倉岳に隠れてしばらくは登山道に陽は当たらなかった、しばらく歩いて標高を上げると太陽も高くなって体も温まる。茂倉岳の頂上に至ると、まだ午前8時前なのに一ノ倉岳の頂上に人が見える。谷川岳肩の小屋に泊まったのだろうか、それとも堅炭尾根を登ってきたのだろうか。すれ違うと、早い時間に登ってきたという年配の人であった。


一ノ倉沢避難小屋

 茂倉岳避難小屋のノートに、2010年6月5日付け「一ノ倉とのコルのハクサンコザクラを見に来た。雪田が大きく2週間ほど早かった。」との記述があった。どおりで鞍部の踏み跡がこれほど広がってしまっていることに合点がいった。ここにはニッコウキスゲも多いらし。足を進めて一ノ倉岳に登るとかまぼこ型の避難小屋がある。ドアはアルミ製に、中の板敷はきれいなものに取り換えられている。換気口も何もないが、堅牢な作りである。緊急避難時でもなければ泊まる者もいないだろうが、収容人数2人だが見知らぬ同士だと文字通り息が詰まるはずだ。


カムイエクウチカウシ山? ニペソツ山? いいえ、オジカ沢ノ頭

 一ノ倉岳を谷川岳に向かって下ると、喘ぎながらも明るい若い声が聞こえてくる。この人たちも早朝に登ってきたというご夫婦だった。その後はすれ違う人もなく、静かな稜線をのんびり歩く。「ノゾキ」でまさに断崖絶壁の下をのぞいて、顔を上げると向かいの山は白毛門、笠ヶ岳、朝日岳。たった6年前だが、もう6年前、元気だったなぁ。あんな急登をやったんだ、谷川岳馬蹄形縦走。そんな君(私)は、今、ロープウェイを使っての下山を当たり前のように考えている。


トマノ耳

 オキノ耳が近づいて、頂上に人だかりが見えるが、奥ノ院までは来る人もなさそうだ。オキノ耳には善男善女が大勢いて、カラフルで若い声があふれた有名な山のいつもの光景だ。頂上標識にタッチしてトマノ耳に向かうと多くの人とすれ違うようになる。もうラッシュアワーの様相を呈してくる。今日ほど登山初日が平日のありがたみが分かる。肩の小屋に寄ってコーヒーを注文し万太郎山へと続く山脈を眺める。あのときは吾策新道から万太郎山に登って肩の小屋までの8時間の行程だった。


肩の小屋から万太郎山へと続く尾根

 谷川岳の標高は1963m、前回登った北海道日高の山、戸蔦別岳の標高は1959mと同じであり、オキノ耳以北の山の雰囲気も人の少ないことも相似し、好ましい。また、西黒尾根や中ゴー尾根、天神平の地質は蛇紋岩類ということらしく、戸蔦別岳やヌカビラ岳と同じである。ただ、歩いている稜線は丸っこい岩、泥っぽい色で夏の花は期待薄の感じがする。森林限界は日高の山の方が高いが、谷川岳では大量の雪が積もることによって樹木は育たず、日高の山のハイマツに代わり笹が山肌を覆っている。


延々と切れることのない登山者

 肩の小屋から天神平に向かって下りる。ここからは凄まじい光景を約50分間にわたり、延々と天神平ロープウェイまで見ることとなる。それはそれは考えられない登山者の行列である。そのような数の登山者とすれ違うことになるが、すれ違うたびに挨拶をくれるのは男女とも若い人に多い。


中ゴー尾根

 中にはスニーカーだったり、革靴だったりする人もいるが、意外と急な登りを汗を流し息を切らしながら黙々としたを向いて登ってくるので、ただただ列が切れるのを待ってその間に少しでも下りる。滑り易い木の階段が続いて、それが真ん中で絞られているため交差もできないところで待っていると、後ろから若者のグループが追い越して登ってくる人に覆いかぶさる様に下りて行く。熊穴沢ノ頭にある避難小屋の手前は、紅葉真っ盛りの谷川岳の展望スポット。


西黒尾根と谷川岳

 谷川岳ロープ「てんじんだいら」駅には、次々と人が送り込まれてくる。「どあいぐち」駅はロープウェイに乗ろうとする人の列が長く続いている。平和な光景、晩秋の一日。とにかく今日は素晴らしい山歩きだった。


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