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雲取山から酉谷山へ

2011/12/22〜24


2011 富士


 12月23日(2日目) 

  今年の雲取山には日陰を除き雪がほとんどありませんが、雪がない分気温は確実に下がっています。指先を出したままいったん外に出るとたちまちのうちに手がしびれてきます。太陽が上がってからもうしばらく時間が経っていますが、それでもマイナス13度です。出発の準備をしていると、まだ午前7時過ぎだと言うのに(たぶん雲取山荘から来たのでしょう)登山者が到着して小屋の外のベンチに座って景色を眺め、出発して行きます。


雲取山避難小屋

 小屋に別れを告げ 小屋のすぐ後ろにある頂上標識に向かいます。小屋のトイレの斜面には鹿が何頭もいて、人を見ても逃げて行きません。鹿は極端に人を警戒し、恐れ逃げて行くように思いますが、昨晩の小屋の近くにいた鹿といい様子が違いますが、その理由は長沢背稜でのシーンで分かります。頂上からは西〜南〜東までの大展望が広がります。飛龍山越に南アルプスの山脈が見えますが、やはり北岳の姿は秀逸です。


飛龍山と南アルプスの山脈

 雲取山頂から雲取山荘へと向かいますが、いったん圧雪された急斜面の登山道を下り、深い樹林帯を抜け小屋の広場に出ます。小屋脇のテント場は稜線の登山道脇にありますが、この寒さでもよく使われているようで、テントが張られた場所だけ雪がなくなっています。
大ダワまでは女坂を行きます。男坂と違って、大ダワに出るときに急斜面を下りる必要がない分だけ安心です。


雲取山荘

 大ダワからは陽だまりを歩きます。登山道脇に鹿が群れていますが、近づくと少し離れる程度です。こちらをちらちらと見ながら地面をつついている姿を見ると、登山者は敵ではないことを知っているように感じます。登山道に斜度が付き山の北側を巻きながら高度を上げていきます。芋ノ木ドッケと白岩小屋の分岐点から、急に踏み跡の少なくなった芋ノ木ドッケ方向へと向かいます。


大ダワの先で

 ガチガチに踏み固められた鴨沢から雲取山の登山道、北側斜面だから歩く人は少ないだろうと思った雲取山から三峰口へ下りる芋ノ木ドッケ分岐までのツルツルではあるが歩道のような登山道から離れ、落ち葉でフカフカの斜面を登り芋ノ木ドッケに着きます。そこから少し進むと長沢背稜と白岩小屋へと別れる倒木帯のポイントに出ます。進路を右に取ると稜線は若木の疎林となって太陽の光を一杯、ぜいたくに浴びることができます。

 桂谷ノ頭から長沢背稜の核心部の稜線岩稜部を過ぎて一安心し、柔らかな広葉樹林斜面で昼食を摂ろうと考えながら歩いていると、前方斜面を黒い動物が駆け上がっていきます。ツキノワグマにしては細身であり、首輪が見えたので、コンマ0秒でそれが猟犬だと分かったのです。今は狩猟の時期で、谷底からは動物を追い上げる猟師の声が聞こえてきます。本来なら鹿は雪のある凍った稜線で餌を摂るより標高の低いところにいた方がよさそうです。それが人の多い雲取山頂上周辺や雲取山荘周辺に屯しているということは、そこでは銃口は向けられないと知ってのことなのでしょう。


芋ノ木ドッケから長沢背稜を進む

 爽快な長沢背稜は日陰になるとマイナス10度ほどですが陽だまりでは0度ほどにもなり暑くてたまりません。しかし、日陰〜陽だまりの繰り返しがこの先も続きますので、緩急をつけたペースで調節します。今日もまあまあの体調でザックの重量も気になりませんので、雲取山を出発してから、昼食の15分程度の他はほとんど休憩を取らなかったので、午後1時30分には酉谷山避難小屋に着いてしまいました。途中まで、今日23日が天皇誕生日の祝日出るという認識がなく、小屋はいつものとおり1〜2人がいるだけだろうと思ったとおり、私が着いたすぐ後に、矢岳から登ってきたという同世代の男性一人が来ただけで、「いやぁ、よかったですね。」と喜んだのは糠喜びだったのでした。


酉谷山避難小屋

 なんと、3連休の初日に目白山岳会の8人が小川谷林道から登ってきて、酉谷山避難小屋のど真ん前に大型のテントを2つ張ってしまったのです。このエスパースのテントが張られるまでは、矢岳からの人とドリップしたコーヒーを飲みながら、山の道具の話に弾んでいました。途中で水を汲んでおこうかなと外に出ると、小川谷の方から人の声がします。猟師かなといい方に考えたのですが、中に女性の声も交じっています。遠くからですが森閑とした初冬の谷底からときおり聞こえてくる話声に不安を感じます。これまで何度も通った通った奥多摩、ましてや酉谷山界隈でこれほどの集団の大声を聞いたことはなかったからです。ただ、この時点では何とも言えませんのでそのことは黙っていました。そして、かつて経験したことのない行動様式を持った外見は大人に見える人たちに出遭うことになって、悲惨な酉谷山の夜を迎えたのでした。  


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