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宗屋敷尾根から酉谷山避難小屋へ
2013/ 4/19〜20


早朝の酉谷山避難小屋


 4月19日・土曜日 (1日目) 

 最近、テントを買い替えた。アライのエアライズ2(2人用)は以前使っていたものと同じである。テント泊も単独なのに前と同じように敢えて2人用としたのは、居住性にある。稜線の大雨などの悪天候が理由で停滞するときに、狭いテントで窮屈に過ごすのと、ある程度の余裕をもって過ごすのとでは、心理的にも大きく違う。夏山でそんなテント泊を(この年になっても)続けるには、オフシーズンにも夏山に準じた同じような登山を心掛ける必要がある。そういう山登りを常態化することによって、加齢による腰の痛みや膝にかかる荷重を常にかけ、あるいはパワー不足を補うための鍛錬を周年継続しないと、もう持たない年齢となった。 


ニリンソウ

 だから、夏山が終わってもそのためだけに酉谷山に通っているのかというと、最大の理由はどのルートを選んでも長い時間がかかり標高差も十分過ぎるほどあって、会う人はごくごく少なく、がんばって辿りついた小屋のロケーションもいいということにある。そして酉谷山に登るのに秩父側から登ると付随的にスタミナが要求されるので、鍛錬にはもってこいという結果に自然になっているだけである。


サクラソウ

 今回は、往路にそのような目的を十二分にかなえてくれそうな宗屋敷尾根のコースを採ることとした。スタートの秩父市の標高は232mであり、最高点は酉谷山の1715mということは標高差1,480mであって、日常登る里山にこのような標高差のところを登ることはなかなかない。その上、この宗屋敷尾根はまったくのマイナールートであって、人と会うことも稀なところなので、人に煩わされることもなく静かに歩くことができる。


ヤマブキ

  といった御託はさておいて、復路に大ドッケを巡ってみたいので、始発の秩父鉄道で武州日野駅に着く。いつのもように秩父鉄道の駅で平日に登山者に会うことは稀であり、この日もお花畑駅からザックを背負って乗った客はいなかった。駅から尾根の取付き口までの安谷川の上部に取り付けられた林道歩きは1時間を要する。しかしながらこの間に咲く花は、途中のお宅の庭の花を含めいろいろあって飽きることはない。


エンレイソウ

 集落の途中にニリンソウ群生地の看板が立っていたり、実際ニリンソウが斜面を覆っていたりするし、庭にあると言うことはあってもサクラソウが咲き、ヤマブキが林縁に咲き、いつもの場所にエンレイソウが咲き・・・、と無聊な林道歩きも楽しい。


 昔は雑草のごとく咲いていたであろうシュンランも、今では見るのもその目的も持って歩かないとお目にかかれないが、駅から酉谷山までの間でどこに植生があるのだろうかと注意を払ったが、今回見かけたシュンランはたった1か所、それも数株だけであった。しかし、数は少ないものの、シュンランは待ってくれていたようにちょうど咲いたばかりのご様子、楚々とした姿が美しい。


シュンラン

 今は、ブームになるとそこに人が集中してほかのところに目をくれないような様相を呈するので、そのおかげでこのようなマイナーなルートに平和が保たれているが、その平和の中身と言うとイワウチワやカタクリが細々ながら尾根を彩っているのである。今年の踏み跡のない尾根で、今年も咲きかけのカタクリや開花したばかりのイワウチワに出合うと、幸せ感たっぷりなのである。


イワウチワ

 この尾根はどこまで行っても植林地で鬱蒼としている。だから展望もまるでなく常人には面白みのないところではあるが、春の風がわずかに吹き抜け、たまに、残された2次林3次林の新緑の中にミツバツツジが少し咲いてることなどに満足しないとやり切れないところではある。もう2回歩いたところだからといって高を括って尾根を外して歩いていると別な尾根に誘われてしまったが、ほどなく軌道を修正して行くべき尾根に戻る。


アカヤシオツツジ

 イワウチワとミツバツツジが咲く祠から上で注意すべきか所は熊倉山からの尾根に出る手前の大岩の巻き道であるが、その巻き道と間違って林業作業用の踏み跡を一つ手前のコブで巻いてしまい、一度大きく軌道修正を迫られた。軌道修正が済むとこの巻き道にはテープが適切に付けられていて、大岩の主稜線側の鞍部に出る。そこからの急斜面を登り詰めると、アカヤシオツツジが咲く岩場の稜線を歩き、その先でシャクナゲの群生を見た後、誤進入を戒める虎ロープが張られたところに出る。


カタクリ

 熊倉山と酉谷山への稜線分岐を酉谷山方向へ進む。ここからは煩わしいほどのテープが張られているが、緩やかにカーブを描いているところでテープに誘われて明るい尾根に誘われ、20mほど下ってから方向的におかしいことに気付く。斜面をトラバースしていいものかどうか分からなかったので元の位置に戻ると、見かけた風景を見付け斜面を下る。いつしか枯れたスズタケ畑を歩き、大血川分岐に出る。大血川分岐からは小黒までの間のテープ類は煩くなく、見慣れた光景を追って大血川峠を経てバイカオウレン(またはミツバオウレン)が咲く斜面から酉谷山の頂に出る。


熊倉岳と宗屋敷尾根の合流から檜岳

 ここ、酉谷山の頂上までの所要時間は7時間20分であった。わざわざこんなコースを苦労して歩くこともなかろうに。それでも楽しみは酉谷山避難小屋でのビール・・・。すぐ頂上を後にして小屋に着くと単独の男性が一人、夕食の準備中であった。持参した水を水場の水に取り換える。水場は心ない者によって弄られている。訳の分からない者が必要もないのに水場の樋やゴムシートを動かすという神経・・・。それでも水は順調に出ている。(夏場だからこれでもいい。)


バイカオウレン

 先客の男性は、年齢的にも山の経験でもずいぶん先輩であったが、山のスタイル、考え方がぴったりで、いつもなら早く寝るのに夜遅く話し込むこととなった。酉谷山避難小屋は初めてとのことではあったが、宗屋敷尾根を下りに使ったことがあるとのことで、その際の(小さな)道迷いの話を聞くと、誰も同じようなところで悩むのだなと同感。今回は新調したファイントラックのツエルトUロング、それに買い増ししたGPS(Garmin eTrex30)を携行したので安心感はたっぷりであった。


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 着  地点  発
 着  地点  発
   武州日野駅 0840    酉谷山避難小屋 0625
0925  尾根取付き 0925 0715  七跳山 0735
1255  岩場基部 1300 0830 大平山 0840
1315 熊倉山稜線 1320 0920 大ドッケ 0930
1450  大血川分岐 1455 1100 浦山大日堂
1610  酉谷山避難小屋     
所要時間 0730   所要時間 0435