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新緑薫るタワ尾根から酉谷山避難小屋へ
2013/ 5/10〜11


金袋山 ミズナラの巨樹


 5月10日・土曜日 (1日目) 

 ゴールデンウィークの喧騒も去っただろうと、いつもの静かな長沢背稜歩きを楽しむことにし、早起きをして東日原の駐車スペースに車を停める。この駐車スペースにはこれまでフリーで車を停められたのだが、「駐車料金500円なり」の掲示があって、詰所の扉に開けられた投入口に金員を入れるようになっている。なお、この駐車スペースには監視カメラが取り付けられていて、カメラは作動しているので、念のため。


若葉

 日原の集落を日原鍾乳洞に向け歩く。清浄な空気、澄み切った青空、山肌を彩る緑のどれもが清々しい。そんな爽やかな気持ちで一石神社の岩肌からしみ出る湧水を飲み、神社の階段に片足をかけてGPSの電源を入れトラックを録ろうと準備をする。神社の前は日原鍾乳洞を利用する人のための駐車場となっていて、車が1台停められている。下を向いたままGPSを弄んでいると車が近づき「この車、あんたの?」と助手席の窓を開け、気持ちの良い朝に運転手が何の枕詞も用いず、不躾な言葉を投げ付けてくる。車を見ると「日原保勝会」となっている。


 今日はいいことがなさそうだなと感じながら神社裏の急斜面を登るが、のっけから大汗をかく。何回も登ったこの斜面がこれほどきついと感じたのはしばらくぶりだった。気分もよくないが、体調はもっとよくないらしい。そんなわけでベンチに着くと10分も休んでしまう。ただここは風の吹き抜けるところで、汗はあっという間に乾いてしまう。この先、金袋山のミズナラの巨樹を眺め人形山の場所を確認し、篶坂ノ丸を経てウトウノ頭まで一気に詰めるが、今年は開花したミツバツツジの木は一本も見ることがなかった。


ここは馬酔木で覆われた踏み跡であったが、鉈のようなものですっかり切り払われていた


愛情の欠けらも見られない


同じ切り払うのでももっと愛情を持ったやり方があろうというのに


誰が何の目的で切ったのか?
この尾根で翌日10日にこの尾根を通るイベントがあることを考えれば、答えは自明?

  タワ尾根は余分なマーカーもなく好ましいところだが、今年もまた荷造りのビニール紐がまるで美観と言う字を知らないかのようにあちこちに巻き付けられている。そうだった。「NPO野外活動(自然体験]推進事業団」と名乗る主催者による第3回奥多摩(青梅-日原)トレイルラン大会がこのタワ尾根を使うことの掲示が大京谷のクビレに括り付けられていた。そしてこの尾根の雰囲気におおよそ似合わない荷造り紐を使ったマーカー・・・。これではトレラン参加者も可哀想だ。この程度のことしか準備できない大会に参加するのでは、参加者に対する敬意もなにもあったものではない。商業主義以下というよりそのような言葉も思いつかない所業。そういえば昨年は、荷造り紐をあちこちに取り付けながら野人のように進んでいく老人を見たのだったが、今年のこのビニール紐は、それに比べまばらだったので、それなりに学習したのだろう。


@ 奥にトレランの大会があることを知らせるビラ 
A 手前がトレランのコースを案内する立派な荷造り用紐

 正確な場所は忘れてしまったが、大京のクビレの先に馬酔木によって踏み跡が隠されている場所があるが、そこが鉈様のもので乱雑に切り開かれ、その切り口が鋭利に剥き出しであったり、中途半端に切って折り曲げたものが踏み跡の両脇に続いている。ここを切り開く必要性はまったくないところで、ただ馬酔木を分けて進めばいいだけのところだが、すっかり醜い風景になって雰囲気を損なっている。ビニール紐をマーカーとして使うこと、その紐を(汚くだらしなく)結ぶことに対する美醜の区別もつかない感性などという気の利いた言葉は、この老人は昨年一緒に歩いていた大会の責任者からは教えてもらっていなかったようだ。


平和の使者

 本題を山歩きのことに戻すと、タワ尾根の新緑は長沢背稜にまでは届いておらず、わずかにカラマツが芽吹いたばかりと言った様子で、ようやくスミレが花開いていただけだった。だから、麓では真夏日に近い気温になっているというのに、長沢背稜での気温は15℃ほどで、風も吹き抜けるからウールの半袖シャツを着込んで歩く。朝から調子の悪かった体は、左脚の付け根の筋肉痛となって現れたが、ストレッチを何回か繰り返してどうにか酉谷山避難小屋まで持たす。


荒らされた水場 (表土が剥がされ砂利が掘り返され、樋への導水用のゴムシートが無くなっていた)

 あれだけ辛かったのに、6時間40分と調子のいい時より1時間ほどオーバーしただけだった。そんな安堵感は小屋の水場を見て落胆に変わる。山の大事な水場がどうしてこうやって荒らされてしまうのか。その心理はどこにあるのか。なぜその心は歪められているのか。そんなことを思いながら痛々しい水場の風景に呆然とする。水道を損壊したり閉塞する罪は「泥棒」と同じ刑(1年以上10年以下の懲役)が定められているが、厳密には「浄水」に対するものであり刑罰が科せられることはなかろうが、そうであってもなくても、登山者の安全という観点からはその罪は大きい。泥棒になぜそんなことをするかと聞いてもまともな答えは返ってこないだろうから、十分に休憩した後に水場の修復に取り掛かる。なにせ何も道具はなく素手なものだから手に靴下をはめていったん土砂を取り除く。流水を掬うように樋をあてがい、土砂を乗せ、はぎ取られていた表土を被せる。水の流れはある程度以前の姿に戻った。ビールとお気に入りの日本酒を冷やして完工祝いをするが、そのうまさは堪えられない。


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 着  地点  発
 着  地点  発
   東日原 0730    酉谷山避難小屋 0500
0800  一石神社 0805 0550  七跳分岐 0550
0830  ベンチ 0840 0620 ハナド岩 0625
1015  金袋山 1015 0655  天目山 0700
1045  篶坂ノ丸 1045 0715 一杯水避難小屋 0745
1140  ウトウノ頭 1155 1045  倉沢集落跡 1055
1250  長沢背稜合流 1250 1045   倉沢バス停 1045 
1410  酉谷山避難小屋    1115 東日原  
所要時間 0640   所要時間 0615