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酉谷山避難小屋から大ドッケの秘密の花園へ
2015/ 3/21〜22

酉谷山避難小屋


 3月22日(土) 


酉谷山避難小屋の水場

 自宅で飲むときの2.5倍ほどの酒量だったので、シュラフに入るとすぐさま昏睡状態だったようだ。ダウンのインナーを脱ぐ暇がなかったので、汗をかくほど暑かったが、目覚めたのは午前4時ごろだった。同室の御同輩が夜明けの酉谷山に登るという。昨日とは打って変わっていい天気になりそうだ。昨夕、メスティンで炊いたお米の残りで朝食を済ませ、小屋の掃除に取り掛かる。と言っても小屋は綺麗に使われているのですることは多くない。


 酉谷山避難小屋内部

 昨年の初冬、この小屋の水場が損壊された。湧水が涸れかかったことに業を煮やした者が自分の無知蒙昧を棚に上げて無闇に水源を掘り返してしまったのだった。これまで「教養」とはなにかということを考えたことや意識したことはなかった。教養の「教」には「自分の持っている知識や技能を相手に伝える」という意味があり、「相手から知識や技術を伝えられる。それらを身につける」という意味があるようだ。そういった観点からは、その人はなんらそれらの知識や技術(「教養」)がないにもかかわらず水場に手を付けてしまったということになるのだろう。教護が必要だろうが児童でもなかろうに。



このボトルは水が詰められ以前からあった

 そんな渇水の時期に、のちに酉谷山避難小屋を使用した際、用心に持ち上げた未開栓のミネラルウォーターを残置してきた。飲食物の残置には賛否両論があるのは承知しているが、次に来た時にのトイレ掃除にでも使ってもいいということもあった。しかし、今回このペットボトルがなくなっていて、もともと置かれてあった開栓済のペットボトルに未開栓のものに張っておいた(非常用)「未開栓」と書いたメモが張り替えられていた。つまり未開栓の物は持ち去られたということだ。同宿の人が戻ってきて先に出立していった。


大平山

 10分ほど遅れて小屋を出て、七跳山へ向かう途中で追い越す。大平山に向かってクビレに下りると新しい道ができている。大ネド尾根に下りているようだ。環境省のホームページにこの界隈のことについて次のように書いている。
 「昨今、一部の利用者によりキャンプ場以外にテントの設営(幕営)がなされ、植物の生育に悪影響を与えている等の情報・苦情が寄せられています。国立公園内におけるテントの設営は、一部地域やキャンプ場等を除き、原則として自然公園法の規制対象となっています。テントの設営はキャンプ場等で行ってください。」
 酉谷山避難小屋から酉谷山へ向かう秩父側斜面は、小屋が満杯のときのビバーク地となっていて、奥多摩ビジターセンター名の禁止のビラが貼られていた。実際にはその斜面は秩父多摩甲斐国立公園の範囲から外れているのだろうし、植物の生育に悪影響を与えると言うのなら、大平山のブルトーザによる開削はテントによる植生への悪影響の比ではなかろう。もともとこの禁止の御触れは一人のおばさんの強硬な申し入れによってなされることになったのが由縁であり真実らしいので、ぜひこのご婦人には大平山の様子も見てもらいたいものだ。


秘密の花園

 午前12時ごろ、金袋山手前辺りで止り装備の単独女子と交差する。先方様の表情筋がまったく動かなかったように見えたので声は掛けず、軽く目を合わせただけだった。テントでのビバークも予定しているのだろう。この時間でこの場所ということでは、もし酉谷山に泊まるということだったら到着は陽が落ちてからのことになろうが、パッキングがすっきりしていてベテランさんとお見受けしたので、心配は余計な御世話だ。奥多摩小屋では、夏のシーズンには夥しい数のテントが設営されているようで、もはや自然景観との調和の上でも社会問題になりそうだが、酉谷山避難小屋周辺は奥多摩自然保護官事務所からお達しが出ているので、そのようなことを危惧する必要はない。そもそもこのお達し発出の端緒はどこかのおばさんの訴えによるものだったらしい。


フクジュソウ

 その大平山のブルトーザ道を利用して山を巻いて時間短縮を図り、大ドッケの下降点へと向かう。枯れてもなお屹立していたスズタケがすっかりなくなってしまって、丸裸の斜面のどこを下りるのか少し戸惑ったが斜面の膨らみを下りていくと、秘密の花園の真上に下りた。

 秘密の花園を離れ、沢を下りていくと次々と人が登ってくる。うち、スニーカー類の履物の人が4人ほどいる。浦山大日堂の集落に下りてくると、地域の人が「フクジュソウはどうでしたか?」と聞いてきて、しばらくお話をする。福寿草群地の荒廃ばかりではなく3年前の事故死や山岳会による大人数の遭難騒ぎなどもあって、最近はここを訪れる人への忌避感や嫌悪感が徐々に芽生えてきているように感じる。


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