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栂海新道を愚直に登る(2012)
 7月13日〜18日 



栂海新道


 2012年7月13日〜18日、親不知から栂海新道を朝日岳〜白馬岳〜白馬鑓温泉までテント泊縦走をしてきました。昨年、扇沢から白馬岳まで辿り、そのまま日本海に下りようという、できもしない計画を立てたものの、ことのつまりは逆回りのそれも蓮華温泉から唐松岳までの縦走に終わってしまいました。しかし、小野健さんの著著「栂海新道を拓く 夢の縦走路にかけた青春」を読むに従い、どうしても栂海新道を歩きたい、親不知から真っ向勝負をしたいと、前泊地の親不知観光ホテルに投宿したのでした。(登山口は、ホテルの真ん前になっています。ホテルを利用しない場合、親不知駅から登山口までの4kmを、歩道のない国道を歩く必要がありますが、糸魚川のタクシー「中央タクシー(2,950円)」を呼ぶのもいいでしょう。)


快適なフットパス

 日本海を見ながらのんびりとテーブルに並べられた数々の海の幸を堪能しているとホテルの方が見えて、今年の栂海新道の様子や注意点をあれこれレクチャーしてくれました。特に気を付けなければならない場所は、黒岩平とのことで、今年は雪渓が多く残っていることから、ガスに巻かれたときにルートミスを犯す可能性が大きいとのことでした。昨日、栂海新道を登って行った人が今年の第一番目の縦走者だろうとのことです。明日の予報が朝からの雨であることも相まって、心細くなったのでした。(この人は、朝日小屋には泊まっておらず、ヒスイ峡にでも下りたのでしょう。なお、登山計画書は、親不知観光ホテルのフロントに提出することになっています。)


白鳥小屋

 ホテルで作ってもらったおにぎりのお弁当をザックに入れて、午前5時50分、雨の中を登山道に取り付きます。鬱蒼とした植林地の急登を我慢しながら坂田峠まで歩き、一息入れます。すると青年が登ってきて同じコースを歩くことが分かりました。先に進む青年の足取りは余りにも早いのですが、こちらは年齢相応の鈍足で進みます。(青年は、私より2時間遅く出発し、2時間早く栂海山荘に到着しています。)



栂海山荘は一番奥の山の頂に・・・。

 坂田峠までは車で入ることができます。登山道はここからはきれいに刈り払われ、倒木も処理されています。ホテルの人によれば、今日はさわがに山岳会の方々が登山道の整備で入ることになっているとのことでしたが、ときに土砂降りの天候では中止でしょう。すぐ金時坂ですが、ここだけはきつ過ぎて、後方のトレラン姿の人も喘いでいます。金時坂をしのぐと残雪の道を進みます。注意して進めば迷うことはありませんが、シキ割周辺の雪渓では心します。今夜の宿泊場所は、憧れの栂海山荘です。水場はここシキ割と黄連ノ水場になりますが、シキ割は登山道脇で容易に水が取れるので、水場に蛙が潜んでいることにもかまってられません。ここで1.5リットル補給して行きます。(この人も朝日小屋には泊まらなかったので、途中でヒスイ峡に下りているのでしょう。黄連の水場は片道3分ほどのところにあったとのことで、栂海山荘に泊まるのであれば、わざわざシキ割から運ぶ必要はありません。)


黄連山の手前の気持ちのいいブナ林

 親不知から白鳥小屋までの山地図でのコースタイムは6時間40分です。その白鳥小屋を過ぎ、下駒ヶ岳、菊石山を越えてようやく黄連山に取り付くようになると、いったんブナ林の中のフットパスを歩くようになります。降り続く雨も上がって、陽が射しこみます。なかなか腰が上がりません。このペースで残る3時間半、栂海山荘まで頑張るしかありませんが、結局はトータルで12時間を要し山荘に到着です。


栂海山荘へあと少しのところで往路を振り返る〜白鳥山がウィングを広げている

 小屋にはすでに青年が到着しています。まず、ずぶ濡れになったすべてのものを干します。靴の中は池のようになっています。着替えが済んでやることは、ビールと日本酒を嗜むことです。青年とあれこれ話をしながら時間を過ごします。寝る前にモリアオガエルが住み着いているポリバケツの雨水を借りて歯を磨きます。遠くに朝日小屋の灯りが見えます。(小屋の扉にモリアオガエルが卵を産み付けていたので、除去したと小屋ノートに書かれていました。それはそれですが、モリアオガエルは天然記念物のようであり、小野健さんの著書には「モリアオガエルにドラム缶風呂が占領されたと書かれています、)


天然記念物のモリアオガエル

 「栂海新道を拓く」によると、初代の栂海山荘は1969年、資材を人力で荷揚げして建てられたとのことです。同時に親不知から朝日岳までの27kmを開削した苦労を思う時、たかだか20kgほどのザックを持て余して12時間もかかって登った身としてみれば、恥ずかしい限りです。その栂海山荘はこじんまりしたものながら、大きなテーブルが2つ置かれ、居室は2層になった立派な山小屋です。(小屋の利用には、小野健さんに連絡を入れ、利用時には登山道整備協力金(1,000円)を小屋の料金箱に納めます。クリーニングされた毛布もあって、1枚200円を納めることとされています。)


栂海山荘

 日本海沿いの街の灯りが見えます。青海町のようです。シュラフは使用せず、インナーシーツにシュラフカバーで寝ましたが、寒くもなく暑くもなく快適な一夜でした。ただ、天候は急変し雨が屋根を打ち、風が吹き付けています。明日も雨を覚悟して歩かなければ・・・。8時間50分がコースタイムですが、雨の中の雪渓歩きが中心となりそうです。トホホ。


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