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リンドウが残る錦秋の早月尾根 我慢の剣岳

2005/10/8〜9


 10月8日 (1日目) 


おとぎの国の早月小屋

 六甲全山縦走56km大会に出た後の疲れにも似た8月の北海道・日高山脈縦走5日間の疲れに打ちのめされ,身体も精神もしばらくは山には向かわなかった。長引く疲労感は食欲のみを満たし,山用にできあがった足腰の筋肉も長い休憩に入って鈍っている。

 北海道の山関係のさまざまなサイトは北の大地の秋模様を伝えている。思い出すと昨年の秋の大雪山・旭岳の紅葉は素晴らしかった。羊蹄山では登山道でシマリスと遊び頂上では雪に迎えられた。楽古岳では麓が紅葉で頂上は吹雪の厳冬だった。

豊穣の大地・北海道の山に気軽に登れなくなった今,本物の秋模様を見るのにはどこがいいのだろうかと思いをめぐらした先は,たぶん今の自分のレベルでは多少の辛さを味わうだろう,というより,ある程度の危険が待ち受けているだろう北アルプス・剱岳であった。

剱岳へのメジャーなコースは別山尾根をたどるコースであり,標高2400mから600mの標高差を登る。一方,富山県側からの早月尾根は標高差2200mもあって,北アルプス3大急登と呼ばれている長大なコースであるが,途中に山小屋がありテントを設営して,翌朝登頂するのに都合がよい。


ツルリンドウ

 岡山から550kmの道のりを一般道のみを使って順調に車を飛ばし,富山県上市町を経て早月尾根の登山口である馬場島の駐車場に着いたときは,真夜中となっていた。駐車場は満杯で最後の1台分のスペースに車を停めて寝支度を整える。5時ごろだろうか。まだ暗いのに登山道に取り着いていく人たちがいる。昨夜は本当にぐっすりと眠ったのに体が起きてくれない。外は濃い霧に包まれている。今日は早月小屋までの行程であり,急ぐこともない。もうひと寝入りしてなどともたもたしているうちに,出発は9時となってしまった。

 霧は登るほどに濃さを増す。ちょうど雲海に入っているようだ。早月小屋までの標高差は1500mある。幕営の道具を入れたザックはいつものとおりずっしりと重い。足の筋肉はなんとか踏ん張ってくれるが,心臓の筋肉は不意の強い運動に耐えられないような鼓動を発している。だましだまし一歩一歩急坂を攀じ登る。


オヤマリンドウ

 登山道に花などを期待する時期ではないが,それでも季節はずれのピンクのコイワカガミが2輪咲いている。フデリンドウも結実した赤い実がなっている。同じ株で薄紫色の花が咲いている。エゾオヤマノリンドウは隣の株がすっかり枯れているのに,その一株が,まだだいじょうぶですよといいたげに濃い紫の花をつけている。

 早月小屋までの尾根の途中には,まるで屋久島の縄文杉ではないかと見間違えるような巨木が点在している。信仰登山が盛んだったために残されたのだろうか。前日,雨の中を登って小屋泊まりしたという人が,頂上はピーカンの快晴だったという。天気図もまずまず,期待が持てそうだ。


早月小屋のテント場

もう10月も半ばにさしかかろうという北アルプスなのに,文字どおり汗を絞りながら6時間の苦闘の末早月小屋に到着する。早月小屋は濃霧に包まれている。小屋の営業は昨日で終わっているが,小屋の関係者が大勢泊まって小屋仕舞の宴会モードに入っている。テント場には4張りのテントがあって,それぞれ夕食前の一杯で盛りあがっている。

テントを設営したのち,今日の苦労に一人で乾杯して缶ビールを飲み干すとそのままうたた寝してしまった。極度の悪寒で目を覚ましたので,フリースのジャケットやウィンドウブレーカーを着込んだ上,ダウンの寝袋に潜り込んで体を温める。夜半,これまでにない経験の強さの風が何度も吹きつけテントが大きく揺らされる。


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