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北アルプス・フラワーロード　テント泊縦走記　２０１１

白馬岳から天狗ノ頭へ
２０１１/　７/１８

白馬岳　村営頂上宿舎テント場

■　７月１８日（月）　その１　　■

テント場を俯瞰する

　上空には台風の影響と思われる雲域が広がっているが、それでも上々の朝だ。行程管理人には昨日のうちに予定変更を伝えておいた。予定では今日はのんびりゆっくりと鑓ヶ岳西斜面の石灰岩周辺や天狗平、大出原のお花畑を楽しみながら、白馬鑓温泉にテントを張って温泉に浸かることを考えていた。しかし、今日はなんとか天候も持ちそうなので、今回の計画を練り上げる途中で候補に挙げていた不帰キレットを通ってみたいということになった。

杓子岳と鑓ヶ岳

　そういうことになると不帰キレットを通過する時刻を早める必要があるので、午前６時にテント場を離れたが、すぐにテント場斜面にも稜線にもウルップソウやハクサンイチゲが咲き乱れていてなかなか足が前に進まない。丸山を過ぎいったん下って杓子岳をトラバースして先に進むことにした。杓子沢コルから今日の本命の鑓ヶ岳の登りにかかる。この縦走中、ミヤマオダマキは白馬岳への登りでようやく少し目に入るようになったが、鑓ヶ岳の登りのミヤマオダマキは中途半端ではない。

　ラジオは「なでしこジャパン」がPK戦の結果勝利したと伝えている。いまだザックは重く、斜面を登るのはきついが、なでしこジャパンが世界制覇するに至るこれまでの道筋を考えると鳥肌が立ち、翻って山歩きのたかがこれしきのことと自分を笑ってしまった。

ミヤマクワガタ

　稜線上にはミヤマクワガタが、稜線の東斜面の草地にはノビネチドリが群生している。これまで何度もノビネチドリを見たことがあるが、これほど固まって咲いている場所は知らない。鑓ヶ岳の頂上から下って鑓温泉への分岐が見えるようになると、西側斜面はまさに百花繚乱。このような夢の花園が世界のどこにあるだろうかという感じだ。そのようないい気分で花を見ながら歩いていると先行する単独の人がズカズカと何歩も、まるで自分の野菜畑にでも入っていくように花園を蹂躙し腰をかがめてカメラで何やら写している。

剣岳を背景に

　これまで北海道の山で何度かヒグマに遭遇したことがありますが、距離があるときは笛を吹かず声を立てずに、あまり急に刺激を与えないようにただストックを交差させて音を立てるのだが、なぜか今回もそのようにしてみた。しかし、何の反応も示さないので「おじさん、そんなに花を踏んじゃって可哀想でしょうよ。」と声を上げると登山道に戻ってきた。そこには、特に花の盛りのウルップソウが群生していたのだが、戻ってきた人はおじさんではなく、おばさんで、「つい興奮しちゃって・・・。」と言い訳をしていたが、その人は鑓温泉への道を下りながらも同じようにしていたので、確信犯であったに違いない。厚顔無恥、破廉恥な婆と言っておこう。

お花の隊列

　三国境で会った五竜山荘からの来たと言う男性は花を楽しみながらこの稜線を歩いてきたと言って、その素晴らしさを語っていた。よく目を凝らせばクロユリが咲いているのが見られるとのことだった。その場所は天狗平ではないのかなと勝手に解釈し、鑓温泉分岐からの石の多い乾燥した登山道でクモマスミレやコマクサ、ウルップソウを楽しみ、その後の雪渓を横切るとそこは天狗平で、雪渓の水によって天狗池に水が湛えられている。天狗山荘からの鑓ヶ岳の眺めがよく、また、小屋の方の笑顔の対応もとてのよいものだった。まだ昼には早いがキレット核心部でのエネルギー欠乏に備え、昼食を作ってもらった。

清水岳方向

　クロユリが咲く場所は、実際は違ったところのようだった。小屋の人に尋ねると小屋周辺にクロユリはないとのことだったので、この先にでもあるのではないかと期待していたが、天狗平から天狗ノ頭までにクロユリが咲くような植生にはなく、それまで豊富にあったウルップソウやハクサンイチゲ、ヨツバシオガマなどの花々もすっかり見かけることはなくなってしまった。

花たち

クモマスミレ

地質によって咲く花、花の咲かない場所がはっきりしています

天狗の大下りから

　天狗ノ頭を越えるとガレ場の稜線で、咲く花と言えばミヤマダイコンソウやクモマスミレぐらいだ。天狗ノ大下りに差しかかったが、その急峻さよりもその先に見える累々たる岩峰群に目が釘づけになる。前後を男性が固めた１０人程度の女性グループが下りきって休憩したところを通り過ぎ、不帰キレットに至る。ここからが本番なので気を引き締めて取り掛かる。

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