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 4度目のトライ〜槍ヶ岳でテント泊
(1日目)

2016/ 8/31〜9/ 1


日本のマチュピチュ 槍ヶ岳のテント場

出発時刻/高度: 05:12 / 1058m 到着時刻/高度: 14:06 / 3072m 合計時間: 33時間12分 合計距離: 27.7km 
最高点の標高: 3072m 最低点の標高: 1050m 累積標高(上り): 2666m 累積標高(下り): 2665m 


 8月31日 (1日目)  
この日の行程:新穂高温泉〜槍平小屋〜槍ヶ岳山荘〜槍ヶ岳往復


槍平小屋

 8月7日〜8日の奥穂高岳〜ジャンダルムを終え、もう一度同じルートを歩こうと思ったが、それではあまりにも芸がないということで、槍ヶ岳に登ることにした。その目的・コンセプトは、槍ヶ岳での「テント泊」である。槍ヶ岳は標高3,180mでテント場は3,060mにある。日本で2番目に標高の高い位置にあるテント場は南アルプス・北岳の肩ノ小屋のテント場で3,012mであるが、その存在感は槍ヶ岳が圧倒的である。それゆえ、これまで3回テントを担いで槍ヶ岳に向かったが、3回ともテント場は満杯で、そのたびに殺生ヒュッテまで下りての幕営を余儀なくされたのであった。


遠く稜線に槍ヶ岳山荘が見えてくる

 今回の槍ヶ岳は、平日で台風通過の翌日だから登山者も少なかろうと、台風をやり過ごし3連休とした休みの後ろ2日を使って新穂高温泉に向かった。3連休の1日目は台風が過ぎ去るのを追いかけるようにして移動日とし、いったん首都高速〜中央自動車道に乗るが、途中で菜園用の野菜の苗を仕入れるため高速を相模湖で下り、急ぐ旅でもないのでそのまま塩尻を経由して新穂高温泉まで下道を行く。この歳で約200kmの一般道の走行は身にこたえる。


名前は「笠」、 しかしきつそうな笠ヶ岳

 下道を走るのだから時間がかかり、新穂高温泉・深山荘前の登山者無料駐車場に着いたのは深夜であった。台風の影響もあってか150台ほどの規模の駐車場は、半分が空きだったが、それでも半分も埋まっていると行った方がいいのだろう。この駐車場は無料だから空きスペースを確保するのがなかなか難しいらしい。5時間ほどの仮眠時間が確保できるので、午前3時30分にアラームをセットし横になる。空は満天の星が輝いている。


西鎌尾根 

 アラームで目が覚める。真っ暗な空、星は見えない。どんよりしている。しかし、予報は?マークだったからこれを信じて身支度をするが、結局出発は午前5時になってしまった。ダラダラしていたのと、飛騨沢を使って槍に行く人は今回は少ないだろうという観測と、面倒だからヘッドランプがいらなくなってからの出発で事足りるだろうという安易な考えからだった。案の定、槍ヶ岳に向かう人の後姿はほんの少しで、どこまで行ってもこの状態が続く。小屋泊まりと思われるおじさんに追い付き、追い越されながら進むが、この人は早くからバテバテ状態であったものの、千丈分岐で追い越されあっという間に引き離された。というのも、槍ヶ岳山荘では最小限の消費支出に抑えようという魂胆で、槍平小屋で水を2リットル補給し、最終水場で1リットル汲んだことにより、既存に水0.5リットルに3リットル分の重量が追加されたことにより体が悲鳴を上げたからだった。


飛騨乗越でようやく槍ヶ岳が見える

 千丈乗越を過ぎると帽子が飛ばされるほどの強い風が吹き付け、体が急速に冷えてきたからウィンド ブレーカー(ファイントラック:ニューモラップフーディ [¥25,704.-])をザックから取り出す。このぺらぺらと薄い製品は、然しながら特に優れものであり、真冬の山でも穏やかな天候の時は手放すことができない。これを着用するたびに、きちんとした定期勤労収入があるうちに、この種山用品をごっそり買い込んでいてよかったなぁとしみじみと思うのであった。山でどのような衣装を身に纏おうと自由ではあるが、若者が、女性がセンスアップした身なりで山を登るようになって久しいときに、オールドファッションではちと寂しいではないか。


岩場に求めた今宵の住処

 千丈分岐から飛騨乗越まであと半分というあたりで、2人の若い女性が全くおそろいのスタイルで下りてくる。それはそれは渋く機能的な感じの服装+装備であった。声を掛けてルートを聞くと早いうちに新穂高温泉を出発し、槍に登ってきて下りるところだという。明るくてはきはきしていて感じのいいお嬢さん2人であった。そのほか多くの人が日帰りしている。おおむね5時間内外で槍ヶ岳に登っている。そのうちの一人に聞くと「テント場はガラガラですよ。」と言う。ますますペースが落ちてきてしまう。それでも天空のテント場、別名「マチュピチュ」の確保が現実味を帯びてきた。というより、もう一安心ということで足取りも軽くなった。ただ、2016年8月31日午後2時ごろに受付を担当した槍ヶ岳山荘のアルバイト風のおじさんの対応は「×」。冷たい守衛さんのようで、この日唯一のつまらない一瞬だった。そういえばこの小屋のブログのタイトルからして上から目線そのもの。


殺生ヒュッテの左奥にヒュッテ大槍が見える

この日のマチュピチュは好きなところを自由に選択できるのだった。槍ヶ岳を真正面に見るところがあることを知らず、飛騨乗越方向斜面に目星をつけていた。槍ヶ岳を真正面に見るテント場が2つ空いていたので、一段高いところに場所を得た。もう一段上には明るく礼儀正しい青年が、明るく鮮やかで発色のいいグリーンのテントを張っている。このテントも一段下の赤のテントも槍ヶ岳の頂上からははっきりとくっきリと認識できる一方、アライのフォレストグリーンはまさしく自然に溶け込んだような目立たないものだということを認識させられたのだった。


槍ヶ岳頂上から 奥穂高岳方向

 いつもなら、テントを設営したらすぐビールと日本酒に走るのだが、今回は、水を少し持って槍の頂上に向かう。もし明朝の展望がよろしくなかったら悔やむだろうからと。小屋に泊まる人も少ないから槍に登る人も少なく、ストレスなく頂上に着く。今回は頂上滞在は時間の許す限りの好き放題である。寒さを忘れてあの山この山を眺めまわす。何度も360度のパノラマを楽しむが、やはり南岳の先の累々たる岩峰がいい。何といってもいい。気付くと手袋をはめている手がかじかんでいる。非常に冷たい。もう潮時だということで下りる。
 今回は、寒さ対策として手袋3種、耳あて、ニット帽、ドラウトクロージャケット、ウール混アンダーのほか、シュラフは−6℃対応とした。


足を踏み入れることはなさそう 北鎌尾根

 槍ヶ岳の頂上から下りて、さっそく喉を潤す。500缶の泡を飲み干し菊水のアルミ缶を飲み終えると、疲労感が大幅に増幅して襲ってくる。ようやくのことシュラフに潜り込むとその瞬間のことは覚えているが、横になったことさえ記憶にない。夕陽が当たる槍ヶ岳、沈みゆく夕陽を眺めようとしたことなどすっかり忘れて安逸な眠りに就く。もったいないことをしたものだ。


オレンジ色のテントの上がmy tent

 槍ヶ岳に登ったのは2002年が最初だった。このときは烏帽子岳〜水晶岳〜双六小屋を経て、風雨の中西鎌尾根を歩いて小屋に着いた。翌朝の槍ヶ岳頂上は朝焼けに覆われて神秘的だった。思わず涙が流れ出す。一升瓶を担ぎ上げた女子大生のグループから「立山」を振る舞われる。

 泥のように眠った。夜中に目覚めてテントの換気口から見る槍ヶ岳は星空に囲まれている。間もなく時計が0時を指すと66th birthday!


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