[HOME] [2日目]

夜叉神峠から南御室小屋往復
(2010/12/29〜30)

2010/ 3/20の記録はこちら


 12月29日(水) 晴れ 



あこがれの北岳は雪雲の中

 2010年の山の締めは山の上でのテント泊と決めていた。極寒体験のためISUKAの寝袋Air630(−15℃対応)を買う。しかし、南御室小屋のブログによると12月25日の最低温度は−14.8℃とのことだったのでいくらなんでも3シーズン用のテントに泊まるのはあきらめ、小屋に寝具なしの素泊まりを予約しておいた。それでもザックにテントをしのばせ、あわよくばテント泊としISUKA Air180をプラスして車を走らせる。

 山の神に出る林道は通行止めなので、南アルプス市営金山沢温泉側から南アルプス林道に入らなければならない。麓の道路がすでにアイスバーン化していることから、南アルプス芦安山岳館までの急坂のスリップが特に心配だった。なにせ今装着しているスタッドレスタイヤは8年前のものなので、果たして氷を噛んでくれるだろうか。凍った路面の登りの急カーブでパトカーとすれ違うときに減速したことからタイヤが空転したが、どうにかこうにか山の神に出ることができた。



夜叉人峠への道

 南アルプス林道に入ると道は圧雪状態であった。途中で登山客を乗せた地元のタクシーが滑って動けなくなっている。8年物のスッタドレスタイヤはそれでも圧雪を噛み続け、無事夜叉神峠登山口駐車場にたどり着いた。正月休みの初日とあってすでに車は20台程度停められている。

 アイゼンを装着し身支度を整えて登山道に入る。歩き始めはいつもきつい。どうにかこうにか夜叉神峠まで我慢して歩き一休止する。あいにく間ノ岳や北岳は雲に覆われていて見ることができない。かろうじて池山や滝ノ沢頭山が見えるだけだ。



夜叉神峠への道 その2

 シラビソの樹林帯を黙々と歩く。降り積もった雪は多くの先行者によって踏み固められていている。アイゼンがしっかり効いて歩きやすい。杖立峠を越えていったん下って焼け跡へと登ると一人の男性が行ったりきたりしている。聞くと「もうだめなのでここらでテントを張ろうと思っている。ピッケルもアイゼンも持ってきていないし。」と言う。焼け跡は西側に位置する北岳を越えて吹く風が野呂川から駆け上がってくる風通しがよいところだ。


焼け跡手前

 「ここは強い風が通るところ。標高は2200mぐらいで苺平まで300mの登りを我慢すれば、あとは下り一辺倒で南御室小屋だし、アイゼンもピッケルも必要ないですよ。」と案内し、GPSのナビ機能を使って説明する。計測するとここから苺平までの距離は約850mであった。それに雪上でテントを張るとなるとシャベルも必要になろうが、それも持っていないということであり、小屋のテント場まで行くことを勧める。

 苺平から男性が下りてきた。大きなザックだったので「テントでしたか。」と聞くと、「もう1泊するつもりだったが、シュラフが濡れてしまったのでもう1泊は取り止め下りることにしました。」と言う。さてどういうことだったのだろうか。


焼け跡の先

 苺平の積雪は結構あって、標識は半分埋まっていた。苺平のすぐ手前の登山道脇では大きなテントが設営されつつあった。当初計画の辻山へのトレースはなかったし、日暮れも迫っていたので南御室小屋に向かう。小屋手前の電波が届く風倒木地帯で行程管理人にメール発信後、ほどなく小屋に着く。

 昨夜、28日に大雪があった模様で、テント場は深い雪に覆われていた。すでに数張のテントが設営されている。それらのテントへ通じるところから先は自力で道を付け、その上でテント場とする広さの雪を踏み固めなければならない。折からの風と雪の中、スコップで雪を壊しながら辛抱強く粉雪を踏みしめる。最後にテントを立ててザックを中に入れるのに1時間30分を要した。


苺平へ向かう

 外気温マイナス10℃、テント内の温度もマイナス10℃である。何度もテントを出入りしなくていいようにトイレを済ませ、水場で水をプラティパス、クッカー、湯たんぽに組む。プラティパスに入れた水はすぐに氷化し始め、クッカーの水も氷の結晶が見え始めた。ブタンを詰めたガスカートリッジにプリムスのマイクロランタン541をつなぎ照明を得ながらテント内の温度を上げる。バルブを精一杯開けても火力は上がらない。SOTOのガスストーブを使うと思いっきり火力が得られる。気化熱でカートリッジの表面が凍り付くが火力は落ちることがない。


極寒のテント場

 今回の登山のモチーフは「厳寒の中でのテント泊」と「酒と刺身三昧」であった。テントは無事設営したが、アルコールのほうは凍死を恐れてというより、急に酔いが回ってしまって熱燗まで手が回らず、中途半端になってしまった。こうなったら寝るだけとヘッドランプを点けてトイレに向かうが、あまりの寒さに全身がぶるぶる震える。凍りかけたプラティパスの水は、お湯を少し入れて新聞で包みポットと抱き合わせにする。湯たんぽをシュラフに入れ体を滑り込ます。周りのテントではまだ話に花が咲いているようだが、だんだん体が温かくなってきて意識は夢の中に入っていく。 


[HOME] [2日目]