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地にひれ伏して拝観 アツモリソウ


[このほかのアツモリソウ(ホテイアツモリソウ)の自生地での様子を「アツモリソウに出逢う山登り」にまとめています。]


 2009/ 6/13 (土) 


悪いこともいいこともあるのが人生

 この目で自生するアツモリソウを見ることが、これから先に一度でもあるのだろうか。北海道では、確実に2か所の山で見られるというが、それはなかなかかなわぬ遠いところである。本州の片隅に住む者にとって、その周辺地域でアツモリソウを自然の姿で見ることは、まず不可能と言ってよいことだろう。そのような環境にあるアツモリソウは自分にとって、ただのあこがれだけの、対面がかなわぬ果てしなく遠い存在の花である。しかしながら、ほんのわずかな情報に接した。人生なにごともチャレンジあるのみ。まず、トライしてみなくては結果を出すことはできない。それが吉とで出ようが、そうではくてもいいのではないか。


生きていてよかった、人生最良の日!

 山以外の蓄積疲労もあったが、前回のテント泊ですっかり体力を使い果たした。その山登りから3日後の今日、FURENを誘って山登りをすることにしていた。もう体は鉛を背負い込んだような状態だが、誘った以上は行かねばならない。そして、文字通り万が一その山にアツモリソウが咲いてたらどうするのだ。それこそ一生の不覚というものではないのか。目覚ましを二つ掛けて午前3時、高速道路を突っ走って目的地の山域に向かう。

 
ついひれ伏しました アツモリソウ

 目的の山のふもとに車を停めて、勇躍目指す山に入る。FURENには、今日の山にはアツモリソウがあるかもしれないので、注意して見てほしいことと、その花の色はよく目立つ小豆色だけどめったにはお目にかかることができない花なので、とにかくすべての植物の葉を観察するようにと頼む。そして「もしアツモリソウを見つけたら1,000万円やるから。」と軽い気持ちで宣言したのであった。

 山を一つ越え、次の大きな山を一つ越えるがお目当ての、小豆色をした花には当然お目にかからない。そうそう簡単に、それも始めて来た山域で見つかるわけはない。大きな山を下って南斜面にさしかかる。アツモリソウの自生地は「高地で,春先から夏にかけては日が十分に当たり、夏には大型の草の陰になるような場所」らしい。そのような場所はここまでに何か所もあった。


最初の2株
(左の株は花弁が折られている)

 自分は、右手を見ていた。突然FURENが、「あった!」「見て!みて。」と言う。なんと、アツモリソウが「私はここにいる!」とばかりに、左手の周囲の植物より高い位置に花茎を伸ばして華麗な花弁を見せている。自分は思わずアツモリソウの前でひれ伏した。「拝まさせて下さい。」と・・・・。

 そのアツモリソウはもう1本の花のないアツモリソウを従えていた。そして、そのすぐ近くにもう1本のアツモリソウがあった。自分の人生でこのようなことがあっていいのだろうか。いや、神は見放してはいなかったのだ。なんという幸せなんだろう。


3株目

 まだ朝早い。この先にもあるに違いない。もう少し先に行ってみようと、次の山に向かった。その山の頂上からさらに進んでみたが、もうアツモリソウが見られるような植生ではなく、その下りからの先の楽しみは来年にとっておこうと、元の踏み跡を戻ることにした。


シャイな4株目

 再びアツモリソウの場所に戻った。天気予報に反して、そこには明るい日差しが注いでいる。その場所でアツモリソウはあまりにも天真爛漫に花を見せている。3株のアツモリソウに別れを告げる。FURENはまだアツモリソウを熱心に探している。
 草むらの枯葉を見て、「あれは?」とか、スイバの茶色の葉を見ては「あれは?」と観察に忙しい。その場を立ち去ろうと少し歩いたところで、FURENが「あれは何?」と草むらを指差す。

 「あれ」というのは、草むらの中で少しかくれんぼをしている4本目のアツモリソウだった。まだアツモリソウがありそうなので、その後もしばらくアツモリソウを探しながら歩くが、さすがもうこれで十分満足であった。だからすでに真剣さは失せていた。結局、今日の花見の大功労者はFURENであり、自分はただFURENに見つけてもらったアツモリソウを見るだけの一日であった。FURENには「本当に生きていてよかった。」とは言ったが、懸賞金の話は持ち出さなかった。


 後日談


無残

 事件の犯人は、現場にまた戻るらしい。目撃者もまたそのようだ。アツモリソウのその後が知りたくて、またその山に入った。山の雰囲気はそのままであったが、初めてアツモリソウに出会った場所にすんなりとたどり着くことはできなかった。山を間違えていたのだった。それほどあの日は、アツモリソウに出会うことができて我を忘れていたと言うことだ。


けなげ!

 ラン科の植物は、種子を株の周囲に落とさなければ繁殖できないという。いつまでも咲いていてほしいし、少しでも増えてほしいものだ。

                              参考HP 「アツモリソウの分布と特性
                                    「カナダのアツモリソウ
                                    「ラン ネットワーク


アツモリソウは絶滅を危惧される稀少種で、その自生地そのものも極めて限られたところだけとなっているようです。
そこでこの場所の地名等は記載せず、その他についてもあいまいな表記にしておりますが、
自生地の保護のためですのでご了承下さい。

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