[HOME] [本州/中国/四国の山]


アケボノツツジ咲く花の百名山
心癒される山小屋の人々 東赤石山

2005/ 5/14〜15

 赤星山でヤマシャクヤクの花を堪能したため,東赤石山の登山口である筏津山荘の駐車場を出発したのは午後3時を回っていた。標高1,700mの東赤石山は花の百名山として四国を代表する山の一つである。頂上直下の1,600mに赤石山荘があり,今夜はそこに泊まる予定であるが,事前に主人との電話連絡がつかず,予約は取れていない。テント場があるとの情報はないので,テントは用意していない。

 山小屋までの標高差1,000m弱の登頂には3時間は必要であり,万一山荘に泊まれない場合は夜間の下山を覚悟である。ヘッドランプは,輝度の高いものを2つ用意して来た。宿泊がかなわない時は,ゆっくり下って車の中で寝ることにしようと考えた。

 北海道の冬ごもりから目覚めた体に,1,000mの登りは非常にきつい。シャツもズボンも汗びっしょりである。登山道は自然林を擁する瀬場谷に沿ってつけられており,ところどころで何回か渡渉することから,そのたびに清流の水をすくって涼をとる。

 標高1,000mにもなるところの急な流れの瀬に,ヤマメが何匹も群れている。このようなところにどのようにしてこのヤマメたちは登って来たのか,まったく不思議な光景である。

 まだ明るいうちに小屋に着いて主人に部屋を請うと,あいにく今日は満杯であると言う。布団部屋でよければ泊まってかまわないというので,好意に甘えてザックを下しさっそくビールとワインを小屋の水で冷やし,その間コーヒーを飲みながら夕食の準備をする。

 今日の小屋は,小屋始まって以来の登山客が泊まっているとのことで,あちらこちらで話に花が咲いてかまびすしい。ビールとワインですっかり酔ってしまい布団にもぐったところに小屋の主人が一升瓶を抱えてきて飲もうと言う。「疲れた顔をしてるね。体の疲れた顔ではない。仕事はそこそこにしないとだめだな。」などと心配してくれて言う。

 日常の仕事では以前は感じられなかったストレスが蓄積するようだ。だから休みの日は体を使い,花を眺めて癒しを求めて山に来るのかもしれない。一人になって山を楽しみし,静かに一人の時間を楽しみたい。主人が去ってさあのんびりしようかと思っていると,隣の部屋の美女軍団数名が日本酒とつまみを抱えて闖入し,北海道の山の様子を聞きたいというから,昔の美女たちには愛想よく想い出の北の山々の話をして聞かせる。

 翌朝は,早いグループはもう5時ころから小屋を出発し,美女軍団も西赤石山を目指して縦走すると言って出発していく。最後まで愛嬌のいいグループで,登山道に消えるのを見送る。主人は,朝飯を食べろと言って用意してくれたので,いつもの癖でのんびりしているともう9時にもなってしまった。

石室越を経て八巻山に至ると,登山道はごつごつとしたカンラン岩の岩肌を剥き出しにした道になっていて,なかなか手ごわい尾根をたどることになる。鞍部や山肌はアケボノツツジやミツバツツジの花に彩られ,まだ花の開かないシャクナゲも所々にある。シコクギボシは芽を出したばかりで,初夏には薄紫色の美しい花を咲かせてくれるのであろう。

 東赤石山の頂上には,先着の男性が3人が弁当を広げている。主人に勧められた床鍋谷のコースをたどるため権現越を目指し草原状の分岐を下りて行くが,登山口までのほとんどが桧の植林地となっていて変化がなく,ヤマシャクヤクの生えるようなザレ場も少なかったが,それでもシャクナゲがちょうどよく咲いていて見ごろであり,1か所,ヤマシャクヤクの大群落も見つけることができた。


登山道下の沢に広がるヤマシャクヤク


望遠で撮ると花後のヤマシャクヤクであった

 床鍋の集落から筏津の登山口まで,約1時間のアスファルト道路の歩行は身にこたえたが,途中の民家の庭ではたくさんのクマガイソウの花が見られた。登山口の筏津山荘に戻って昼食を摂り,周辺の山肌を眺めていたら山の斜面にピンク色の花が見えた。望遠で花を収めるとシコクカッコウソウらしい。最後になって大好きなサクラソウ科の花も見ることができ,幸せ感,充実感に浸ることができた初めての四国の山登りの旅であった。


黄色い芽が特徴のシコクカッコウソウ

 七夕のころには,赤石山荘周辺はタカネバラが満開になって,そのころはその枝が登山道を塞ぐので枝払いをするという。主人に北海道でタカネバラを見ることは稀であり,枝払いは勘弁してほしいというと,タカネバラは旺盛な植物だから平気だと言う。今度はテントを担いで七夕の前に行き,枝払い前の登山道を覆い尽くすタカネバラをカメラに収めることにしようと思う。

 山小屋であった男性からメールで,ヤマシャクヤクとクマガイソウの画像が送られてきた。それぞれ想像もつかない自然の中の大群落の風景であった。具体的な場所は特定されてはいなかったが,ヤマシャクヤクについては目星がついたので,いつか機会を見て訪れてみたい


[HOME] [本州/中国/四国の山]