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幻の黄花之敦盛草を求めて
鳳凰三山縦走(白鳳峠から地蔵岳〜観音岳〜薬師岳)

2010/ 7/ 6〜7

(1日目)



黄花之敦盛草


 7月 6日(火) 

 2009年9月13日〜14日、たまたま鳳凰三山を歩いたとき、広河原から白鳳峠の間の樹林帯や鳳凰小屋から観音岳に詰める手前の草地などが気になった。特に白鳳峠への途中については、そのときの記録に『八ヶ岳を彷彿とさせる苔むした地表となっていて、イチヨウランはもちろんのこと、(北岳山荘で絵葉書が売られている)ホテイランも見られるのかもしれないほど、雰囲気がいい。「ここは南アルプス国立公園の特別地域です。植物をとると罰せられます。」との看板もあって、春に再訪するにいいところかなと思う。』と記している。


北岳

 今年は、北岳南東斜面のキタダケソウ観賞はあっさり見送り、前回気になった場所を徹底的に眺めながら、イチヨウランやホテイランはないか、そして、あの場所に「黄花之敦盛草」はないかと歩くこととした。折りしも梅雨の末期で天気予報は降雨の確率が高く限りなく悪いが、いかなる天候でも登る、いかなる天候でも鳳凰小屋でテントを張る、との信念の下、夜叉神峠登山口までマイカーを進める。

 夜叉神峠から乗った北岳の登山口、広河原へ行く山梨交通バスは天気予報の悪い平日とあって、登山者2人だけを乗せて、新装なった「野呂川広河原インフォメーションセンター」先の終点へと向かう。野呂川に架かる吊橋からは、稜線に濃いガスがかかった北岳を見通すことができる。そのまま先に進んで白鳳峠への取り付き地点に着くと、青年がさっそうと下りてくる。鳳凰小屋に泊まったとのことであった。


キバナノコマノツメとイワカガミ

 出発点の広河原から地蔵岳までの標高差は1、250m。テント泊装備を入れたザックは重いが、これでもかこれでもかという急斜面を順調に進む。雰囲気のいい樹林帯になる。ギンリョウソウが少し、まだ蕾のベニバナイチヤクソウが2株、イチヨウランと思しき葉が1つ確認しただけでゴーロ帯に出てしまう。白鳳峠にもう少しというところで、ガイドに引率された中年の男女が下りてくる。たいへんだなガイドさんも。あれほど体格のいいお客さんを安全に下山させなければならないなんて・・・・・。

 このグループとすれ違った先の、樹林帯入り口が異常に臭う。まるで獣が潜んでいるような感じだ。白鳳峠で昼食タイムを予定していたが、万一、クマだったら事なので、休憩を取らずにそのまま高嶺を目指す。白鳳峠から高嶺への稜線の登山道は丁寧に刈り払いされている。おかげで、スキンズに短パン姿でも支障はない。登山道脇ではイワカガミが延々と咲き、ハクサンイチゲやキバナノコマノツメも多い。


ミヤマハタザオ

 樹林帯ですれ違ったグループに、下山道の様子を高嶺との比較で聞かれた。そのときはすっかり高嶺の岩場のことを忘れていて、白鳳峠入口のほうが急な斜面できついが、登山道が丁寧に整備されていて心配ないですよ、と答えてしまった。実際は、高嶺を白鳳峠に下りるところのほうがよほどきつくて大変な場所であった。ここは岩場であるが、ミヤマダイコンソウが岩場に取り付いている。まだ蕾であった。6月の北海道の山では既に咲いていたと言うのに、やはり今年は雪が多かったのか、標高2、800mの山は春が始まったばかりで、シャクナゲもまだ咲いていない。

 
イワカガミ 

 高嶺を折り鞍部の白砂に出るとタカネビランジが見えてくる。まだ蕾も小さい。アカヌケ沢ノ頭までの稜線を快適に歩き、賽ノ河原に降りる。日陰となった登山道には雪が残っている。地蔵岳を仰ぎ見ながら、ダケカンバの林に入る。周辺の草はすっかり鹿に食べられていて、その様子はバリカンで丸刈りされた坊主頭のようだ。これでは周辺の高山植物が壊滅となるのも時間の問題だろう。というより、もうバイケイソウしか残っていない。ザレた斜面を下り、ときに寄り道をしながら展望も何もないシラビソの樹林帯に入り、鳳凰小屋に着く。

 鳳凰小屋では、若い小屋番さんが立ち働いていた。テント泊の申し込みをして花の話しに及んだとき、話しが弾んで30分ほど話し込んでしまった。もう夕暮れも近い。それより、空模様がおかしくなってきた。小屋の敷地に引き込んだ手が切れるような冷たさの水でビールやワインで冷やし、それからテントを張る。今日は小屋に宿泊する者はないようだ。青木鉱泉から登ってきた単独の男性がテントを張った。


鳳凰小屋のテント場

 テントの中で酒を飲んでいるうちに雨が降り出した。酔いが回ってくるころには本降りとなってくる。どんどん降ってもいいよ、覚悟してきたから。午後11時過ぎに目が覚めた。降りは強くなっている。また寝るが、鹿が近くで甲高い声で鳴いている。小屋番さんによれば、小屋周辺の草花を狙っているとのことで、花火や音を立てて追い返しているとのことだった。


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