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カールはヒグマの宝庫!
エサオマントッタベツ岳〜カムイエクウチカウシ山縦走
(2日目のPART2)

2007/7/17〜21


 7月18日PATR2 (北東カールからナメワッカ分岐まで) 


札内岳JPからのエサオマントッタベツ岳と左後方の幌尻岳 (1)

 ルンゼの直登で疲れた体を引きずって札内岳JPからエサオマントッタベツ岳に登る道すがらは、幌尻岳、七ッ沼カール、ピパイロ岳の稜線などがほしいままに展望できる願ってもない情景(1)である。エサオマンの山域には誰も入山してはいないが、日本百名山の幌尻岳には、今のこの時間にも多くの人が登っていて、さぞかし賑やかだろうなと人恋しくなるも感じるものである。


エサオマンの登山道から 二股山とルイベツ岳であろうか (2)

 山頂への登山道はところどころ明瞭になっていて、ハイマツが切れたそのようなところにはエゾツツジが群落(2)をなしている。エゾノハクサンイチゲも申し訳程度にエゾツツジの周縁を彩っている。

 ようやく山頂に達した。思わず「万歳!」と声が出た。緊張からやっと解き放された瞬間だった。これで、今回の縦走は心から十分に楽しめそうだ。頂上で心ゆくまで展望を楽しんだ。目を南に転ずればこれから歩くべき峰々が待っている。こんなに気分のいい山頂も滅多にないが、そろそろ腰を上げ、本来行くべき道を進もうか。


1563峰と後方に幌尻岳 (3)

  


札内岳JPと右手後方にカムイエクウチカウシ山を遠望する (4)

 今日は、これから札内岳JPを出てナメワッカ分岐を過ぎ、カムイビランジを十分に堪能して春別岳まで行きテントを張る予定であり、結構な行程だ。JPからの下りはすぐに道が消え、日高側のハイマツ帯を越えなければならない。ハイマツはちょうど花粉を大量に排出する時期に重なっていて、ザックも体も、淡緑色の花粉にまみれ、鼻腔には、ミツバチが花粉を抱くように花粉の団子ができ上がる。

 ハイマツ帯を越えるといっても、足元には昔歩かれた登山道の跡がある。しかし、突然探る足元から道が消える。このような場合、登山道跡は急に曲がってハイマツを潜って十勝側の斜面に出ると思うと良い。ハイマツを漕いでいて道が消えた場合は、稜線の反対側をのぞいてみると道がある場合が多い。


キンバイソウ (5)

 案の定、何度もこの稜線でそのような場面に出くわす。また、十勝側の笹薮で道が薄くなったり見えなくなった場合は、もともと笹で道が明瞭となっていなかったところに笹の伸長で道が消えかかっているのだから、そのまま突き進むとまた明瞭な道が花畑の中に見えてくる。

 十勝側に出ると例外なくお花畑が出てくる。チシマノキンバイソウだろうか、それともヒダカキンバイソウだろうか、キンバイソウが登山道を被っている。1か所にだけミヤマアズマギクが朝の日を浴びている。エゾミヤマクワガタが可憐な花を咲かせている。エゾキスミレも結構な広がりをもって咲いていて、エゾノハクサンイチゲやエゾツツジはとどまるところを知らない。日高山脈の花園を独占する。

 藪漕ぎには結構な時間がかかった。体力も消耗した。使うのは脚だけではなく両手も総動員である。日高の山の藪漕ぎに軍手は必携だというが、安物の軍手は2つ必携だと言わなければならない。ズボンも松脂だらけ、お気に入りのOSPREYのブルーのザックも何もかにも松脂だらけである。ここまでで脚の脛には傷が相当付いている。あちこちが痛い。結局、この後の藪漕ぎもあってズボンは使い物にならなくなった。

1日も経たないのにハイマツの脂はこの有様である (6)


雪渓でいつまでも遊んでいる大きなヒグマ (7)

 十ノ沢カールが見えてきた。もうナメワッカ分岐も近い。北東カールのルンゼ突破も然り、ここまでのハイマツ漕ぎにも結構辛いものがあった。時間はもう3時を超えて4時に近い。次のひと山を超えればこの縦走の大きな目的であるカムイビランジを見ることができるが、余裕をもって見て見たい・・・など考えて歩いているとカール側壁の雪渓の上で大きなヒグマが雪遊びをしている。寝転がったり体を丸めたり無心に遊んでいる。


ナメワッカ分岐から延びる稜線 1766mがすぐそこに (8)

 ヒグマが遊んでいるところは、テントを張ることとしたいナメワッカ分岐及び十ノ沢の一つ手前の沢であるから、ザックにくくりつけた2つの熊鈴はチャリンチャリンと音を立ててはいるものの、この音に気付かないようなので、そのまま放っておいてもいいだろうと、ホイッスルを鳴らさないで通過する。

 ナメワッカ分岐到着は午後3時50分であった。ここから当初の予定の春別岳のテン場まで行くと余裕がなくなってしまうと思い、日高側にあるテン場にテントを設営する。十勝側の雲海がところどころ切れている。これまで通じなかった携帯電話(MOVA)がようやく通じる。ナメワッカ分岐の少し先は鞍部となっていて、その十勝側に一見テン場と見間違えるような場所が見える(9)が、その場所はそのまま十ノ沢カールに落ち込んでいるので、危険があるものと判断する。


稜線のハイマツの十勝側にヒグマの棚が見える (9)


札内岳JPからの稜線を越えるガス 

 午後4時と言ってもまだ日は高く、風もほとんどないことからテントに入ると暑い。シュラフとカバーを干して一段高い稜線に上がって十勝側に体を置くと、カールから吹き上げられた風が涼しく、しばらくここでまどろむことにした。横になることはできないが、うつらうつらとして夢の世界に入っていく。

 太陽が傾いて、日高側の稜線が夕日に照らされるころ、札内岳JP方面の稜線の鞍部をガスが乗っ越していく。十勝側に雲海はないが、ガスが十勝側から日高側に流れ、そして消えていく。なんとも不思議な光景である。今日の夕食の準備では、水を自由に使うことはできない。歯磨きに使用した後の水も飲料水となって胃に流れていく。


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