TOPに戻る<南アルプスに戻る<2日目に進む


今秋の花を探しに リンドウ咲く北岳
2007/ 9/19〜20
 南東斜面をトラバースして北岳山荘のテンバに今宵のマイハウスを建てる。雲海から富士が頭を出し、最高の眺めである。早めに食事を済ませて稜線に上がって暮れゆく山々を眺める。木曽駒ヶ岳、空木岳などの山並みに太陽が沈んでいく。北岳は徐々にオレンジ色に染まり、雲海も、富士も暗闇に包まれていく。

 9月19日 (1日目)

  翌日の山梨日日新聞は「山岳ガイドを通じて北岳山荘から南アルプス署に通報があった。県防災ヘリ「あかふじ」が救助したが、男性は右足の骨を折る重傷。、男性は北海道江差町の地方公務員男性(48)。現場は急斜面の岩場「北岳バットレス」で、男性は知人女性と18日朝からロッククライミングを開始。2人とも落石で負傷し、女性は同日中に救助された。男性は自力下山できると判断し、救助要請しなかったが、結局、下山できずに助けを求めたという。」と事故の概要を伝えている。
 9月も下旬に入ろうとするのに、二俣までの大樺沢には秋の気配がまったくなく、唯一、ノコンギクが花盛りであったことぐらいだろうか。二俣まではガスがかかっていて遠望は利かないが、間もなくガスは取れるだろうと思われる明るさである。二俣から大樺沢をさらに八本歯ノコルへと登って行く。
 突然、八本歯ノコル方面にヘリコプターの爆音が轟いている。機体はガスで見えないが、ホバリングが長い時間続いている。バットレスでの事故による救出作業と思われ、次第に爆音は遠ざかっていく。

 八本歯ノコルに向かう大樺沢の急斜面に掛かる何本もの梯子を登って稜線に出ると、夏の岩場を彩ったタカネビランジが結実していて、やっと秋の風情をわずかに感じる。南東斜面へのトラバース道分岐では、単独者2人と談笑して休憩する。H市から来たという男性、途中でその男性と一緒に登ってきた男性。話題が携行するヘッドランプの種類に及んだ。今、LEDのランプが主流になっているが、「自分も持っているよ。」と出されたのが100均で買ったという鍵に付けて車の鍵穴を探すために使うような可愛いもの。これでは登山のために持っているとはとても言えないものであった。一回痛い目に遭わないとなかなか必要が分からないかも。
 太陽が姿を見せるようになって汗も噴出す。二俣で大きな岩の陰に座って日差しを避け、大休止する。平日ながら登山道では途切れることなく人が上り下りしている。快晴となった平日の北岳に集う善男善女、静かな風景、なんとも平和な情景である。
 野呂川に架かる吊り橋を渡り,広河原山荘を過ぎて登山道に取り付く。いつものようにザックはテント泊装備で重いが、つものような重さは感じないので今日の体調はまずまずか。今日は、大樺沢を直登して八本歯ノコルに出て、南東斜面のトラバース道を辿って北岳山荘まで行くこととする。
 深夜、駐車場に着くころには芦安は深いガスに包まれてしまった。麓は晴れのち曇りの予報だが、仮眠から目を覚ました午前4時でも同じ状態であった。「今日は止めようかな。」と弱気になったが、5時10分芦安発の広河原行き始発バスに間に合うようにバス停に向かう。駐車場には50台ほどの車があるが、バス停に人はいない。おかしいなと思って時刻表を見ると、平日の今日の始発バスは「7時10分」となっている。

 いったん車に戻って仮眠し直し、乗り合いタクシーで広河原に向かう。運転手さんは「夜叉神トンネルを抜けてガスがなければ北岳の天候はいい。」というが、トンネルの先は相変わらずのガスで、その先の観音経トンネルを抜けても同じような状態であった。やっとやり繰りして来た「初秋の北岳」であり、合羽を着込んでも登ろうと決心し大樺沢に入る。

TOPに戻る<南アルプスに戻る<2日目に進む