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白峰三山 北岳〜間ノ岳〜農鳥岳テント泊縦走
(2009/ 7/15〜16)


 7月15日(1日目)


広河原からの北岳

 恒例となった日高の山歩きに先立ち、装備品の過不足を点検する目的も兼ねて白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)を縦走することとした。しかし、前日までの天気予報では、2日目の午後からの降水確率が50%であるから、2日目は未明から歩く計画を立てる。今回で12回目の北岳登山となる。

 当日、奈良田にある山梨交通バスの営業所(トイレと屋根のかかった休憩ベンチがある)に着いたのは午前3時であった。中央高速甲府南ICから増穂、丸山林道を経て奈良田に出るものとばかりの先入観で林道に入ってしまい、途中通行止があって櫛形山登山口を経由する荒れた迂回林道を走るなど、往生したのだった。

 平日なので広河原へ行くバスは午前7時55分発である。大阪から来た「Dさん・69歳」(マツダ・デミオに乗っていたので)とともに第二駐車場に車を移動し、バスを待つ。Dさんは、心筋梗塞の病歴があり、少し運動するとぜいぜいと荒い息づかいをする小柄で話し好きなおじさんだ。バスの席の半分は年季の入ったスタイルの釣師で占められている。

 午前8時45分、バスは広河原に着く。登山安全指導センター、売店が併設された南アルプス市の施設である「アルペンプラザ広河原」で登山計画書を提出し、昨晩買い損ねた本日の朝食・昼食の代わりにパンを買う。Dさんは百名山、二百名山を数多く登っているベテランさんだ。Dさんは御池小屋経由で行くとのことなので、分岐までご一緒し、北岳山荘での再会を約す。


二俣コースからの北岳

 今年の大樺沢は雪が多かったせいか、登山道沿いに咲く花はごくわずかだ。ミヤマハナシノブ、タカネグンナイフウロなどが咲くだけで、それも咲き始めといったところであった。小休止しているとアルペンプラザであいさつを交わした、テント泊をするという女性「T」さん(テントの「T」から)が登っていく。二俣の木陰で休んでいると夫婦が八本歯ノコル方向から下りてくる。稜線には立っていられないような強風が吹き付けているので登山をやめて下りてきたとのことであった。

 二俣から小太郎尾根分岐を目指し雪渓から離れ樹林下に入る。気温20度、テントを入れたザックが重く、途中大休止を取っていると、単独の「N」さんが登ってくる。Nさんは秩父のフクジュソウの咲く山で出合った「山の花」が好きなベテランさんだ。草スベリとの合流点前後になるとハクサンチドリ、イワカガミ、シナノキンバイソウ、キバナノコマノツメ、そしてクロユリなどが咲いているのが見られる。そしてシナノキンバイソウの群落を前にしてTさんが自失茫然としたような状態で佇んでいる。「急ぎたくないんです。このようなすばらしい風景の中に身を置いて、ゆっくりと過ごすのが大好きなんです。」と話す。


大樺沢の雪渓と八本歯ノコル

 小太郎尾根分岐に近づくと空の様相が一変する。気温は12度まで下がっている。稜線に出ると風で煽られ、体がよろけるほどだ。岩陰で衣服を足し整える。やはりゴアテックスの防寒手袋を持参すべきだった。耳は帽子の上から手ぬぐいで覆えば飛ばされることなく、保温にもなる。山はすっぽり濃いガスに覆われているし、空は真っ黒だ。これでは北岳の頂上を越えて北岳山荘まで行くのは無理だし、それは避けたほうがいいだろう。明日の縦走も中止し、肩ノ小屋から引き返すことを考える。

 午後2時45分、肩ノ小屋に着くとDさんが待っている。え〜っ、心筋梗塞で息遣いも厳しかったんじゃないんですか。草スベリを経由してこんなに早く着いているなんて想像外だった。Dさん、Nさんは小屋泊まり、テント泊のTさんはどうするのかなと聞くと、迷わず「小屋泊まり」とのこと。一人残雪のあるテント場でテントを設営し終えると、強烈な睡魔が襲ってきて登山靴を脱ぐ間もなく眠りに入ってしまった。


タカネグンナイフウロ

 寒さで目が覚めた。ビールを雪渓に差し込んで来てから、汗で湿った下着を替え再び寝入る。睡眠時間3時間では仕方がないか。また熟睡である。本格的に寝る前に小屋をのぞくと、DさんもNさんもTさんもその姿が見えない。小屋番さんに今夜半と明日の天気を衛星携帯電話を使って調べてもらう。「今夜の北岳は雨、明日はいったん回復してから午後再び崩れる。」とのことであった。この予報のとおりならば大門沢までは歩くことができない。北岳南東斜面にキタダケソウが残っているかもしれないから、そこまで行き、さらに余裕があれば間ノ岳まで行って戻れば広河原午後4時ちょうど発奈良田行きのバスに間に合うだろう。テントに戻って明日に備える。


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