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嶺朋ルートから北岳南東斜面のお花畑へ (2013)
1日目の後半(八本歯ノコル〜北岳南東斜面〜北岳山荘)
(2013/ 8/ 9〜10)


タカネビランジと間ノ岳


 8月 9日(金) 


チシマギキョウ

 楽ではなかった嶺朋ルートを登り詰め、炎天下の池山吊尾根を歩き、ようやく八本歯ノ頭から花の名所八本歯ノコルから南東斜面を辿る。八本歯ノコルは秋の花で覆われている。楽しみにしていたタカネビランジもまだまだ咲き残っていて、灼熱の岩肌のすき間を自分の居場所としている。タカネビランジが咲く岩肌は、チシマギキョウの棲家でもある。日高の春別岳やその先の稜線にも似たような光景があった。ビランジの名前だけが違って「カムイビランジ」だが、この花を見るために耐え忍ぶ必要がある灼熱地獄は同じような光景だった。


キンバイソウ

 タカネビランジと別れ、八本歯ノコルから南東斜面の分岐まではちょっとした最後の登りが続く。梯子の連続と堆積する大きな岩を飛びながらようやく標柱が見えると、これまでの難業にお別れで、快適なトラバースを南東斜面に咲く花々を北岳山荘まで存分に堪能して歩くだけだ。


キタダケトリカブトと中白根山


北岳南東斜面 初夏にはキタダケソウが咲く


トウヤクリンドウ (クモイリンドウ)


イワギキョウ

 南東斜面には、ハクサンイチゲにテガタチドリと初夏の花も咲き残っていたが、ここに掲げた以外にも多くの花々が斜面の上下を覆っている。南東斜面の最後の花がトウヤクリンドウとなると、北岳山荘までは20分前後となる。花の鑑賞が終わってしまうと、次の望みは冷たいビールで喉を潤すことしか考えられない。これは干からびた喉を慰める特効薬である。


北岳山荘のテラスから北岳

 北岳山荘のテント場は、まだまだスペースがあった。富士山の絶景ポイント、神々しい朝陽を拝むことができるこのテント場は、肩ノ小屋のテント場同様大好きな山のテント場である。また、テント派の人たちのマナーもすこぶるよく、ストレスを感じない。こんな贅沢な遊びができるのも山を遊びの場所としているテント派族の特権である。この日の山荘は布団1枚に2人が寝るという。そして週末の明日は布団1枚に3人が約束されているとか。それに比べテント泊派はなんと贅沢な一夜が約束されていることか。ただ、小屋の受付の人からは、このところ稜線からの強風が朝方吹き付けるので、ペグはしっかり打っておいてくださいとのアドバイスがあった。荷物を少しでも軽くしようとメッシュアンカーを持ってこなかったは痛かった。なぜなら石交じりのテント場に大事にしているチタン製のペグを石で打ちつけて曲がりを付けてしまったのだった。メッシュアンカーを持たない時は細引きで張り綱を延長していたのに、その細引きも持ってこなかった。そして風は吹き付けなかったので、安眠できたことで相殺するしかない。)


青年はずうっと夕暮れの北岳稜線に佇んでいた

 テントを張り終えると、待望のビールタイム。がんばって登った体へのご褒美のビールは、がんがん冷えている。小屋の外の日陰となっているテラスに座って、景色を眺めながら飲むビールは格別である。テントに戻ってベンチで、地酒の「太冠」をいただく。本当にこの時間は何物にも代えがたい。前回南アルプスを歩いたときに渇望したお汁粉をテントの中で作る。美味!


夕陽を浴びる登山者と北岳

 ザックの軽量化を極めるために、真夏の北岳なのでダウンのインナーは必要ないだろうと持ってこなかった。寒けりゃ雨具の上を羽織ればいいやと。着替えた下着に半ズボン、サンダル履きで稜線に出る。沈みゆく夕陽を佇んだままいつまでも見つめ続けている青年がいる。その背中越しに多くの登山者が遠くの山脈に沈むゆく夕陽を惜しんでいる。歯がガチガチと鳴り出し体が震えてくる。テントではシュラフのファスナーを開いてハーフのエアーマットに掛けその間で寝た。今の時期の北岳の最低気温は日中晴れていても6〜7℃に下がることも普通である。それでもテントの中は熱くもなく寒くもなく快適至極であった。 


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